249話 妹は膝枕をしたい・2
「膝枕……?」
突然の展開に、やや困惑してしまう。
どういう流れて膝枕をするなんていう話に?
でも……
想像してみる。
悪くない。
というか、してほしい。
ものすごくしてほしい。
「それは……金を取るのか?」
「取りませんよ!? どこのいかがわしいお店ですかっ」
「いや、すまん。いきなりだったから、ちょっと驚いて……」
「ま、まあ、確かにいきなりという感は否めません。でもでも、妹としては、兄さんのために何かしてあげたいと思うわけで……あっ、その……妹という立場だけではなくて、その……恋人としても、兄さんに色々としてあげたいわけで……」
「そ、そっか」
『恋人』というポイントを強調されると照れてしまう。
新しい関係に、まだ慣れたわけじゃないんだよな。
でも、この恥ずかしいようなこそばゆいような感じは、悪くない。
幸せ、っていう感じがする。
「えっと……じゃあ、お願いしようかな?」
「は、はいっ。どうぞ!」
結衣がぽんぽんと膝を叩いた。
それに誘われるように、俺は横になり、結衣の膝に頭を乗せる。
「ふぁ」
「だ、大丈夫か?」
「は、はい……ちょっと驚いただけですから。私、今、兄さんに膝枕をしているんですね……」
何やら、感慨深そうに結衣が言う。
改めて言われると、ちょっと恥ずかしい。
でも……
これはいいな!
彼女の膝枕。
普通の枕では決して味わうことができない、人肌の温もりが心地いい。
それに、太ももの弾力がどこか艶かしくて、ドキドキしてしまう。
「これ、ドキドキするな」
「ど、どうして兄さんがドキドキしているんですか。それ、私の台詞ですよ」
「いや、なんていうか……結衣の太ももに触れることなんてなかったから」
「なっ……ど、どうしてそんな言い方をするんですか! 兄さん、えっちですよっ」
「わ、悪いっ」
「……で?」
「え?」
「わ、私の膝枕はどうですか? き、気持ちいいですか?」
「あ、うん。すごくいいよ」
「なんか、あっさりとした反応ですね」
「本当に気持ちいいよ。最高級の枕なんて目じゃないくらいで、ずっとこうしていたいっていうか、もう、毎晩こうしてほしいっていうか……」
「……そこまで言われると、ちょっと照れてしまいます」
ちらっと見上げると、結衣の赤くなった顔が見えた。
照れるところもかわいらしい。
「……」
最近、結衣のことを『かわいい』って思う機会が増えてきたな。
やっぱり、付き合い始めたからなのかな?
ちょっとした仕草や表情が、かわいくてかわいくて仕方がない。
「毎晩してあげるのは、さすがに無理ですけど……また別に機会にしてあげましょうか?」
「マジで!?」
「すごい食いつきですね……ちょっと引きますよ」
「わ、悪い。結衣の膝枕が最高だから、つい」
「そ、そんなことを言って褒めているつもりなんですか? もうっ、私はそんな言葉で喜ぶほど、安い女の子じゃありませんよ」
……なんてことを口にする結衣だけど、とてもうれしそうな声をしてた。
結衣が犬だったら、ぶんぶんと尻尾を振っていただろう。
わんこ結衣……悪くないな。
って、何を考えているんだ俺は?
付き合い始めたばかりなせいか、結衣であれこれと考えてしまうことが多い。
ちょっと自重しないと。
バレたら嫌われるどころの話じゃない気がする。
「でも……兄さんなりに褒めてくれているんですよね? うれしいです♪」
「まあ……」
「兄さん♪」
そっと、結衣が俺の頭を撫でる。
優しい手付きだ。
結衣の子供になったような気分で、母性を感じる。
温かいものに包まれているような……
安心して、すごく心地良い。
「なんていうか……兄さんがかわいいです」
「男に対してかわいいは、褒め言葉になってないぞ」
「別に褒めてるつもりはありませんよ?」
「ぐはっ」
「ただ、純粋にかわいいと思っただけで……もっと、こうしていたいです」
「結衣が望むのなら、いつまでも」
「望んでいるのは私だけなんですか?」
「……俺も、もう少ししてほしいと思っているよ」
「ふふっ、そうですか♪」
なら仕方ありませんね、と言って……
結衣は膝枕を続けて、俺の頭をそっと優しく撫でる。
やばいな、これ。
すごく気持ちいい。
あまりに気持ちいいものだから、だんだんと眠くなってきた。
「ふぁ……」
「眠いんですか?」
「……ちょっとだけ」
「寝てもいいですよ」
「いや、それは……」
「本当に構いませんよ? その……兄さんには、日頃、お世話になっていますから。これは、そのお礼です。わ、私が膝枕をしたいなんて思っているわけじゃありませんからね?」
「あー……そうだな……」
本気で眠くなってきて、だんだんと受け答えが適当になる。
結衣の手、気持ちいいな……
「悪い……マジで、ちょっと寝てもいいか……?」
「ふふっ、仕方のない兄さんですね。一晩中というわけにはいかないので、ちょっとだけですよ?」
「ああ……悪いな」
「いえ。これも妹の……彼女の役目ですから♪」
結衣が俺の頭を撫でる度に、眠気が増していく。
それに抗うことはできなくて……
「……あふぅ」
「おやすみなさい、兄さん♪ 良い夢を」
結衣の温もりに包まれながら、俺はそっと意識を手放した。
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