248話 妹は膝枕をしたい・1
<宗一視点>
夕飯を食べた後……
俺はテレビを見て。
結衣はスマホをいじり。
兄妹一緒に、のんびりとした時間を過ごす。
「……」
ふと、結衣と目が合ったような気がした。
気のせいだろうか?
結衣が、何か言いたそうにこちらを見ていたような……?
「……兄さん」
「うん?」
「……いえ、なんでもありません」
「そう、か?」
「なんでもないったら、なんでもありませんから」
「お、おう?」
強い口調で、ピシャリと言われてしまった。
なんで怒られているんだ、俺?
鈍いと定評のある俺だけど……そんな定評はいらないが……今は、結衣を怒らせるようなことはしていないと断言できる。
……たぶん、断言できる。
どうしてか、結衣の様子がおかしいな?
今日は……確か、凛ちゃんと遊んだんだよな。
そこで、何かあったんだろうか?
「……」
まあ、気にしても仕方ないか。
違和感はあるものの、小さなもので、問い詰めるほどじゃない。
なにかあるなら、結衣の方から言ってくれるだろう。
そう判断して、テレビに視線を戻すけれど……
「ちらっ、ちらちらっ」
見られてる……
ものすごい見られてる……
「えっと……結衣?」
「にゃ、にゃんですか!?」
噛んでる……
なんで緊張する必要があるんだ?
「さっきから、俺の方を見てるけど、どうかしたのか?」
「えっ、いや、その……か、勘違いじゃないですか」
「そんなことは……」
「自分が注目されているなんて、兄さんはとんだ自惚れ屋さんですね。誰も兄さんなんかに注目していませんよ。気になるとか、したいことがあるとか、そんなことはこれっぽっちも思っていませんからね!?」
強い口調で言われてしまい、話が終わる。
えっと、結衣はなかなか素直になれないところがあるから……
今のを翻訳すると……
俺のことなんて気にしてないけど、何かしら話したいことがある。
っていうところだろうか?
妹言語の翻訳に間違っていないといいが。
「あー……結衣?」
「……なんですか?」
「えと……」
何か俺に話したいことがあるんだろう? 話してごらん。
……果てしなくうざいな。
ストレートに伝えるんじゃなくて、遠まわしに、結衣を誘導しないと。
「あー……結衣は、最近どうだ?」
「え? なんですか、いきなり」
「なんとなく、彼女のことが気になって」
「突然ですね……」
話下手か!
疑いの目を向けられてしまったよ。
『兄さん、何か企んでいるんですか? それとも、私に怒られるようなことをしたんですか?』
そんな目をしてる。
「あー、いや……なんていうか、結衣と話をしたいなあ、なんて思って」
「何か話したいことでもあるんですか?」
俺じゃない。
結衣にあるんじゃないのか、って聞きたいんだよ。
立場が逆になってしまった。
「特にないけど……」
「そうですか……」
「……」
「……」
なに、この気まずい沈黙。
こんなことになるなら、うざがられてもストレートに聞いた方がいいのかもしれない。
さて、どうしたものか?
「……あの、兄さん?」
迷っていると、結衣の方から口を開いてくれた。
助かる。
「うん?」
「えっと、ですね……その……疲れていませんか!?」
「え? いや、別に……」
「本当に疲れていませんか!? なんていうか、その……体がだるかったり、眠かったり、そんなことはありませんか!?」
「夏休みだから、そんなことないよ。どうして、そんなことを?」
「それは、ですね……」
女は度胸です。
……というようなことをつぶやいたような気がした。
「実は、その……兄さんに話があるというか、してあげたいことがありまして」
「どんなことだ?」
「えっと……」
結衣は顔を赤くして……
若干、視線を逸らしつつ、言う。
「その、あの……い、妹の膝枕はいりませんか!?」
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