247話 妹はどうしていいかわからない
<結衣視点>
「……というわけなんですけど、どうしたらいいでしょうかっ!?」
翌日。
凛ちゃんの家に遊びに行きました。
でもでも、私は兄さんのことで頭がいっぱいで……
鋭い凛ちゃんは、私の様子がおかしいことにすぐに気づきました。
親友といえど、こんなことを話すのはためらわれたんですが……
自分一人で解決できるとは思えなくて。
他に頼りになる人もいなくて。
私は、凛ちゃんに全てを話していました。
「あら? あらあらあら♪」
ニヤリ、と凛ちゃんが笑います。
邪悪な笑みです!
私、からかわれます!
絶対にからかわれますよ!?
「そんなことを考えるなんて……」
「……」
「結衣……成長したのね」
「え? え? なんで親のような目線でそんなことを言うんですか?」
「結衣と先輩のことだから、キスなんて数年後だと思っていたのだけど……思っていたよりも早くなりそうね。結衣の成長が喜ばしいわ」
「なんでしょう……褒められているんでしょうか? 複雑です」
「もちろん、からかっているわよ」
「凛ちゃん!」
「ふふっ、ごめんなさい」
くすくすと笑う凛ちゃん。
まったくもう。
意地悪なところは、ぜんぜん変わりません。
私は初めての恋で、初めてのお付き合いで……
色々と経験が足りないのだから、少しは手加減してほしいです。
「少しからかいすぎたわ。ごめんなさい、キスをしたい年頃の結衣」
「えっ」
「もうからかわないと誓うわ。キスをしたい年頃の結衣」
「いえ、あの……」
「でも、キスをしたい年頃の結衣がこんなことを考えるようになることは、私にとってもうれしいことなのよ? キスをしたい結衣の成長を、自分のように喜んでいるの」
「絶対にからかっていますよねっ!?」
「そんなことは……ぷぷっ……ないわよ」
「途中で笑いました!?」
凛ちゃん、意地悪すぎますよ!
本当に親友なんでしょうか?
色々と疑わしく思えてきました……
「ごめんなさい。結衣があたふたするところがかわいいから、つい」
「つい、じゃないですよ……もうっ」
「もうしないから許して、ね?」
「本当ですか……?」
「……たぶん、しないわ」
「安心できません!?」
凛ちゃんのことだから、少ししたら、また当たり前のようにからかってくるんでしょうね……はあ。
やれやれ、と思いますが……
でもまあ、これがいつもの凛ちゃんであるわけで……
仕方ない、と納得してしまいます。
厄介な親友を持ってしまいました。
「先輩とキスしたい、か……押し倒せばいけるんじゃない?」
「それは、ちょっと……」
「ムードがない?」
「ですね」
「ムードだの、そんなことを気にしていたら、一生キスできないわよ? 何しろ、相手は鈍感マスターの先輩なのだから」
「兄さん、ひどい言われようですね……まあ、援護する気にはなれませんが」
「まあ、女の子の方から迫るのは、確かに、ちょっと品がないかもしれないわね。キスできたとしても、今後の関係に支障をきたすかもしれないし……そうなったら、元も子もないか」
「ですです」
「となると、良いムードを作るしかないわね」
「それが難しいんですよ……」
私と兄さんは『兄妹』でもあるわけで……
今まで一緒に暮らしてきて、誰よりも近いところにいました。
『距離が近すぎるから』どうしていいかわらからないところがあるんですよね。
例えば、夜遅くなって、相手の家に泊まっていく? となった時。
普通ならドキドキして、一つ屋根の下にいることを意識するんでしょうけど……
私と兄さんの場合は、そうなりません。
いつも一つ屋根の下ですからね。
恋人になったからといって、今更、意識したりしません。
そんな感じで……
普通の人ならドキドキしているような場面でも、私達なら、さらっとスルーしてしまうことが多いんですよね。
これ、どうしたものでしょう……?
「二人の距離が近いっていうのなら、さらに近づくしかないんじゃない?」
「そ、そう言われても……」
「膝枕をする、一緒にお風呂に入る、同じ布団で寝る……とか」
「ふぇ!?」
膝枕はともかく……
一緒にお風呂!?
それに、お、同じ布団で寝るなんて……
「凛ちゃん、えっちですよ!」
「でも、それくらいしないと、良いムードを作ることなんてできないわよ?」
「ムードを作るなら、他にも色々な方法があるでしょう! 例えば、デートしたり……」
「結衣も先輩も、今まで何度もデートをしているでしょう? 良いムードになったことはあるの?」
「……ありません」
ドキドキしたことはありますが……
良いムードかどうかと言われると、ちょっと違うんですよね。
「それに……まずは、先輩をドキドキさせて、結衣とキスしたいなあ、って思わせることが重要なのよ。それからムードを作り……ゴールイン♪」
「ごくりっ」
なんていうか、無駄に説得力がありました。
さすが、凛ちゃんというべきか……
「良いムードを作る方法は、私も考えておくわ。結衣は、まず、先輩をドキドキさせなさい!」
「わ、わかりましたっ。がんばります!」
なんか、凛ちゃんに乗せられているような気がしないでもないですが……
私はしっかりと頷いて、意気込むのでした。
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