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240話 妹のサプライズパーティー・1

<宗一視点>



「ぁー……」


 ベッドに寝転び、ゴロゴロする。


 夏休みって最高だよな。

 朝からのんびりしてても、誰にも怒られることはない。

 ゴロゴロし放題だ。


「そういや……」


 カレンダーを見る。

 今日は、8月18日。


「なんか、あったような……?」


 誰かと何か約束してたっけ?

 あるいは、何かの締切とか?


 考えてみるものの、心当たりは思い浮かばない。


「……気のせいか」


 納得したところで、扉がコンコンと叩かれた。


「どうぞー」

「おじゃまします」


 結衣が現れた。

 なぜか、おでかけようの服を着ている。


「兄さん、買い物に付き合ってくれませんか?」

「今から?」

「はい、今からです」


 窓の外を見る。

 熱気で景色が揺らいでいるような気がした。


「……今日はやめにしないか? 家でゴロゴロしてよう。その方が幸せだぞ?」

「それでもいいですけど、その場合は『駄兄さん』って呼びますよ?」

「うっ」

「あるいは、『ナマケモノニイサン』とか」

「わかった、わかったよ。俺の負けだ」


 ベッドから降りて、財布とスマホをポケットに突っ込む。


「まぁ、デートも兼ねて、出かけるのも悪くないか」

「で、デートですか……?」

「ん? イヤか?」

「大好物ですっ!!!」


 すごい食いつきようだった。


「というか、デートじゃなかったのか?」

「あ、いえ。ちょっと欲しいものがあって……かさばるものだから、男手が欲しいなぁ……なんて。でもでも、兄さんとデートがしたくないわけじゃありませんからね!? むしろ、デートしたいです!」

「じゃ、買い物の旅に行くか」

「はい♪」


 一緒に家を出ようとして……


「……作戦、第一段階成功。第二段階に移行サレタシ」


 結衣がスマホをいじっていた。


「何してるんだ?」

「い、いえ。なんでもありませんよ。ちょっと、その……そう、天気を確認していたんです!」

「確認する必要ないくらい晴れてるだろ」

「わかりませんよ。ゲリラ豪雨とかあるかもしれませんからね」

「それもそうか」

「……ほっ。こういう時は、兄さんが鈍くて助かりました」

「何か言ったか?」

「イイエ、ナニモ」


 うーん……?

 どうも、結衣が何か隠しているような気がする。

 悪いことを企んでいるという感じではないが……

 どうも落ち着かないな。


「兄さん、早く行きましょう」

「ああ、わかったよ」


 ……まあ、大したことじゃないだろ。

 いつものように気楽に考えて、結衣と一緒に外に出た。




――――――――――


<結衣視点>



 なんとか、兄さんを外に連れ出すことに成功しました。


 私の役目は、みんなが誕生日パーティーの準備をするまで、兄さんを家から遠ざけること。

 鈍い兄さんのことだから、よっぽどのことがない限りバレることはないと思いますが……

 油断は大敵です。


 たまに……本当にたまにですけど、鋭くなりますからね。


「ところで、欲しいものってなんだ? あまり大きかったり重かったりすると、俺でも持てないぞ」

「だ、大丈夫です。えっと……ほら……ぬいぐるみですから!」

「なるほど。コレクションを増やすのか?」

「そ、そうですね。ちょっと気になるものがあって」

「じゃあ、デパートを回ってみるか? それとも、おもちゃ屋の方がいいのか?」

「今見つけても荷物になるだけなので、先にデートをしましょう♪」

「それもそうだな」

「兄さん、兄さん。私、映画が観たいです」

「今、何かおもしろそうなのやってたっけ?」

「んー……特に調べてないんですよね。でもでも、何か一つくらい、興味を惹かれるのはあると思いますよ。なかったらなかったで、いかにも、っていうようなB級映画を観てみませんか? そういうのも、たまには楽しいと思いますよ」

「そうだな……ま、そういうのもアリか。結衣と一緒なら、なんでも楽しめそうだ」

「ふぇ」

「どうした?」

「ど、どうしたもこうしたも……兄さんが、い、いきなり恥ずかしいことを言うから……」

「結衣と一緒なら……ってとこ?」

「そ、そうですよっ。そんな、ジゴロみたいな台詞……兄さんには似合わないですよ」

「ひどいこと言うな。でも、本心だぞ? 好きな女の子と一緒なら、わりとなんでも楽しく過ごせるタイプだからな、俺は」

「ふやぁ」

「ほら、そういうのないか? 好きな女の子……っていうよりは、好きな人が一緒にいるだけで満たされるような、そんな感覚」

「そ、それはわかりますけど……うぅ、恥ずかしいです。でも、うれしいです。えへ、えへへ……ニヤニヤしちゃいますよ、もう♪」


 結衣がにへらと笑い、くねくねと揺れる。

 見ててちょっと楽しい。


 ほら、アレだ。

 太陽の光を受けて勝手に踊り出す向日葵の形をしたおもちゃ。

 わかる人、いないかなあ。


「私も、兄さんが一緒なら……それだけで、なにもかも幸せ色に染まるんですよ♪」

「そっか」

「わぷっ」


 結衣のことが愛しくなり、ぽんぽんと頭を撫でた。

 子供扱いしてるみたいだけど、一応、俺なりの愛情表現だ。

 そのことは結衣も理解してるらしく、さらに目尻が垂れ下がる。


「んっ、兄さん♪」

「なんだ?」

「もっと、なでなでしてください……というか、しないとダメですよ? これは、妹の命令ですからね」

「命令とあれば、従うしかないな。ほら」

「はふぅ♪」


 当初の目的を忘れて、まったりとした時間を過ごす俺たちだった。

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