24話 妹は疑惑を抱きました
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
最近の結衣は、どこか元気がない。
具体的にどうこうって、細かい指摘はできないんだけど……
兄の直感というか、いつもと違うんだよな。
「どうかしましたか、兄さん?」
リビングでテレビを見てる結衣が、俺の視線に気がついて、こちらを振り返る。
「あっ、いや。なんでもないよ」
「そうですか? なにやら視線を感じたのですが……まあ、いいです」
いつもなら、『兄さんに視姦された』とかなんとか言われてもおかしくないんだけど……やっぱり、元気がないんだよな。
「それじゃあ、先にお風呂をいただきますね」
「ああ、どうぞ」
結衣が浴室に消えた。
その背中を見送り、改めて考える。
「……やっぱり、旅行の件かな」
あの日以来、結衣の元気がない。
旅行、楽しみにしてたのかもな。あれこれ考えているうちに、すっかりその気になってしまい……
でも、行けないと告げられて、とても落ち込んだのかもしれない。
それが、未だに尾を引いていて……
「うーん」
結衣は、あまりわがままを言わない子だ。
妹だし、まだ子供なんだから、どんどんわがままを言っていいんだけど……でも、どこかでブレーキをかけて、我慢してしまう。
些細なことは遠慮なく口にするけれど、本当にしたいことは我慢して、おとなしく引き下がり……なかったことにしてしまう。
そんな結衣が、旅行に行きたい……って。
叶えてあげたいけど、どうしたものか……?
「……まあ、正攻法でなんとかするしかないか」
――――――――――
<結衣視点>
……数日後。
最近の兄さんは、どこか様子がおかしいです。
一緒に帰ろうとしても、用事があるからと断られてしまいます。
天道さんや他の友だちと遊んでいるわけではなさそうです。
兄さんの様子から判断するに、本当に用事があるみたいです。
ずっと兄さんのことを見続けてきたので、それくらいは見ればわかります。はい。
それで、帰りがとても遅いです。
平日だというのに、毎日、22時くらいに帰ってきます。
遅いですと怒り、問い詰めても、兄さんはなにをしているのか教えてくれません。
「むぅ……なにをしているんですか、兄さんは」
兄さんに隠し事をされている。
そう思うと、なんだかモヤモヤしたものが湧き上がります。
ぽかぽかと、ついつい枕を叩いてしまいます。
「本当に、なにをしているんでしょうか?」
急に付き合いが悪くなる……コソコソと隠れてなにかをしている……帰りが遅い……
「……もしかして、浮気っ!?」
悪い彼女ができて、それで夜遅くまで遊び回っている……としたら?
「……ぐすっ」
だ、ダメです……想像しただけで、泣きそうになってしまいました。
兄さんの彼女は私なのに、それなのに、他の女の人を優先するなんて……
イヤな考えが止まりません。ダメと思いつつも止められなくて、兄さんが見知らぬ女の人と肩を組んでいたり、仲良くしていたり……そんなことばかり考えてしまい、私のテンションは一気にマイナスへ。
「うぅ……兄さん、本当に浮気を……?」
私は『フリ』の彼女ですが、でもでも、他に彼女を作るなんて……
「……でも、兄さんは、そんなに器用な人でしたっけ?」
『フリ』とはいえ私と付き合いながら、他に彼女を作る……なんていうか、兄さんらしくありません。
兄さんはとても格好いいから、彼女を作ろうと思えば作れるでしょうけど……兄さんの性格からして、一言、私に断りを入れるはずです。他に好きな人ができた、って。
そんな愚直なまでの素直なところが、兄さんの美点です。そのまっすぐで純粋な心に、私は惹かれて……って、今は私のことはどうでもいいですね。
とにかく、そんな兄さんがコソコソと浮気をしているというのは、どうにも納得がいきません。
「でも……浮気じゃなくても、兄さんが『隠し事』をしていることは、間違いないんですよね……」
兄さん……いったい、なにを隠しているんですか?
不意に、昔の光景が脳裏にフラッシュバックします。
あれは、私が中学一年生の頃……
お母さんは、いつものように仕事に出かけて……そして、二度と家に帰ってきませんでした。
いってらっしゃいと見送った時に見た背中が、最後に見たお母さんの姿です。
「……っ……」
胸が……痛いです。
ザクザクと刃物で刺されているみたいに、苦しいです。
「兄さんは……私を、置いていったりしませんよね……?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ちょっとだけ、妹の内面に触れてみました。
この想いがどういう方向に働くのか?
お付き合いいただき、確認してもらえるとうれしいです。




