233話 妹はニヤニヤします
<結衣視点>
一人、自室で考え事をします。
頭に浮かぶのは、もちろん、兄さんのことです。
今日のデートのことを……
いえ。
本当に付き合うようになってから、今に至るまでのことを思い返します。
兄さんの彼女らしくあろうとした私。
そんな私に、兄さんは想いを大切にする方が大事と教えてくれました。
「兄さん♪」
なんだかたまらなくなって、枕を抱きしめました。
そのまま、ベッドの上をゴロゴロ。
「やっぱり、兄さんは優しいです。こんな風にこじらせている私に、ちゃんと向き合ってくれて……えへ、えへへ♪」
ゴロゴロ。
ゴロゴロ。
ゴロゴロ。
……どすんっ。
「ふぎゃ!?」
あいたたた……
ベッドから落ちてしまいました。
浮かれすぎですね、私。
でもでも、仕方ないじゃないですか。
兄さんと本当に付き合うことができたんですから。
そしてそして、付き合うことになって初めてのデートを経験したんですから。
浮かれるな、という方が無理ですよ。
兄さんの手前、なんとか我慢していましたが……
もうニヤニヤが止まりません。
頬はゆるんで、目尻は垂れ下がり、顔の表情を作る機能が壊れてしまったみたいです。
「ん~♪」
これから、兄さんといっぱい遊びたいです。
色々なことをして、一緒の時間を過ごして、思い出を作って……
それから……
いつか……いつか、兄さんと一つに……
「ひゃあああああっ♪」
何を考えているんですか!?
そ、そそそ、そんなことを考えてしまうなんて……ダメですよ、私!
そういうことは、まだ早いです。
私たちは、まだ学生で……
でもでも、もう経験している子は多い、って聞きますよね?
何割くらいでしたっけ? 六割?
となれば、私と兄さんがそういうことをしても不思議ではないわけで……
むしろ、当たり前?
しないと手遅れ?
「に、兄さんが望むのなら……私はやぶさかでも……というか……私も、兄さんと……もにょもにょ……あうはう♪」
って、いけません。
思考と妄想が暴走しています。
「すーはー」
深呼吸をして気持ちを落ち着けます。
今日、兄さんが言っていたじゃないですか。
別に焦る必要はないし、無理をすることもない、って。
私たちらしく、私たちらしい恋人になればいい、って。
えっちなことをしたくないかと言えば、ウソになりますね。
女の子にだって性欲はあるんですよ?
でも、焦ることはやめにしました。
背伸びもしません。
する時はするし、しない時はしません。
そんな風に思うようになりました。
してもしなくても……
私と兄さんが離れることはないんですから♪
「なんて……ちょっと言い過ぎかもしれませんね」
ひょっとしたら、この先、ケンカなどをして兄さんと別れるかもしれません。
ケンカをしなくても、やむを得ない事情で離れ離れになるかもしれません。
そんな未来は想像したくないですが……
ありとあらゆる可能性を考えて、備えておかないといけませんからね。
どんなことが起きても、兄さんと一緒にいられるように。
相思相愛でいられるように。
兄さんの妹でいられるように。
「私は、私なりの全力を尽くすまでです」
だって……
私は、兄さんの『彼女』なんですから♪
「えへ……兄さん、これまでもこれからも……ずっとずっと、大好きですよ♪」
兄さんへの想いを表現するように、ぎゅーっと枕を抱きしめました。
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