221話 妹は兄のところへ駆ける
<結衣視点>
「……ってなわけで、今、神社で宗一が待ってるから」
「え? え? え? 待ってる、といきなり言われても……」
「それじゃ、そういうことでよろしくー!」
「あっ、ちょ、明日香さん!? 待って……切れてしまいました」
私の声なんて聞こえないとばかりに、明日香さんは通話を終えてしまいました。
いきなり電話をかけてきて、兄さんが一人で神社にいるから『今がチャンスよ』なんてことを言われて……
あーもうっ、突然のことすぎて頭が追いつきません!
「どうしたのだ? やけに難しい顔をしているが」
一緒の小鳥遊先輩が不思議そうな顔をしました。
「後は戻るだけなのだが……む、何が問題が発生したのか?」
「あ、いえ……問題というかトラブルというか……個人的なことというか」
「ふむ……よくわからないが、行ってくるといい」
「えっ、いいんですか?」
「大事なことなのだろう? 私のことは気にしないでいい」
「えっと……ありがとうございます!」
今は、小鳥遊先輩の好意に甘えることにしました。
――――――――――
神社に向かいながら、明日香さんのことを考えます。
私と兄さんを二人きりにさせるなんて、どうしたんでしょう?
一応、私たちはライバルなのに……
「ライバルだからこそ……なのかもしれませんね」
明日香さんは、とてもまっすぐな人だから……
普通ならありえないのに、でも、私のことを気にかけてくれます。
たぶん、明日香さんは兄さんに何かしらアプローチをしたんでしょうね。
だから、次は私の番……きっと、そんなことを考えているんだと思います。
「……よしっ」
私は気合を入れて、より一層早く駆けました。
――――――――――
「兄さんっ」
「お、結衣」
言われた通り、神社には兄さんがいました。
賽銭箱に背を預けるような形で座り、夜空を見上げています。
「ホントに結衣が来たよ……」
「どういう意味ですか?」
「いや……本命……っていうか、明日香が結衣を呼んでくる、って言ってたから」
「はい、明日香さんに言われて、ここに来ました。兄さんが一人で寂しくて泣いている、と聞いたので」
「泣いてねえよ!」
「すいません。本当は、怖がっているんでしたね」
「それも違うからな」
「じゃあ、興奮しているんですか……?」
「人を変質者みたいに言うな!」
「ふふっ」
「どうしたんだ、いきなり」
「いえ……どんな時でも、兄さんは兄さんだなあ、と思って」
夜の神社で兄さんと二人きり。
そのシチュエーションに、私はここに来る前からドキドキしていたのに……
兄さんは、ふだんと変わらなくて、いつも通りでした。
「褒められてるのか、それ?」
「さあ、どうでしょう」
「最近の結衣って、凛ちゃんに似てきたよな……」
どういう意味なんですかね?
「隣、いいですか?」
「どうぞ」
「よっ」
兄さんの隣に座ります。
おもいきって、肩と肩が触れ合うくらい近くに座りました。
……これ、顔が近いですね。
横を向くと、すぐ目の前に兄さんが。
うー……ドキドキしてしまいます。
兄さんの方を向くことができません。
今が夜で良かったです。
これが昼間だったりしたら、私の顔が赤くなっていることがすぐにバレてしまいます。
もう告白をした身なので、意識していることがバレても今更、と思われるかもしれませんが……
恥ずかしいものは恥ずかしいです。
「せっかくだ。星でも見ようぜ。けっこう綺麗だぞ」
「ですね」
兄さんと一緒に星空を眺めます。
綺麗な星空と、静かな夜の神社。
その二つがうまい具合に組み合わさり、私たちだけの世界ができあがります。
大げさかもしれませんが……
世界に私と兄さん、二人だけが取り残されたような、そんな気分でした。
兄さんと一緒なら、二人きりでも構いません♪
兄さんさえいれば、私はなんでもいいんですよ。
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