210話 妹と定番の海デート
<宗一視点>
「さあ、兄さん。一緒に海で遊びましょう!」
色々ありつつも、サンオイルを塗り終わり、結衣が元気に言う。
海なんて、いつ以来だろう?
かなり久しぶりだから、テンションが上がってるらしく、結衣は笑顔だ。
俺も、子供みたいにわくわくしてた。
きっと、結衣と同じように笑顔なんだろうな。
「みんなで競争でもしてみるか? それとも、ビーチバレー?」
「むぅ」
結衣が膨れる。
「兄さん、ぜんぜんわかってませんね」
「え、何がだ?」
「私は、兄さんと遊びたいんです。そりゃあ、みんなと一緒に遊ぶのも楽しいと思いますけど……ちょっとくらいは、二人きりになってもいいじゃないですか」
「二人きり……って」
「……好きな人との時間を楽しみたい、って思うのは贅沢ですか?」
不意打ちだ。
いきなりそういうことを言うのはやめてほしい。
ドキっとするから。
「兄さん」
結衣が期待するような目を向けてくる。
そんな目をされたら、断れないじゃないか。
確信犯なのか、偶然なのか。
どちらにしても、ウチの妹は小悪魔的な要素があるな。
「じゃあ……最初は、二人で遊ぶか」
「はいっ♪」
にっこりと笑う結衣は、普通にかわいい。
俺……そんな結衣から告白されたんだよな。
かわいくて、気がきいて、家事は……できないけど、でも、それ以上に一緒にいると落ち着く。
妹であることを除けば、文句のつけようがない。
そんな結衣のことを、俺は……
「えいっ」
「ぶは!?」
いきなり水をかけられて、変な声が出た。
「えいっ、えいっ」
「ちょ……ま、待てこら」
楽しそうに水をかけてくる結衣。
突然のことに驚き、俺はされるがままだ。
「い、いきなり何するんだ」
「海で遊ぶといったら、やっぱり、水のかけっこじゃないですか。その、ほら……兄さんが遊びたそうにしてたから、仕方なく付き合ってあげますよ」
「どちらかというと、結衣が遊びたそうに……ぶはっ」
「ふふふ、兄さん、隙アリですよ!」
「ず、ずるいぞっ。いきなり始めるなんて……」
「戦場は非情なものなんです。待った、なんて通用しないんですよ」
「いつから戦場になったんだ?」
「さあ、どんどんいきますよ! それっ、それっ!」
「うわっ、わぷっ」
「ふふっ、兄さん、おもしろい顔してます」
「うぐっ……ぐあ!? は、鼻に水が……これ、痛いな」
「えっ、や、やりすぎちゃいましたか……? 兄さん、大丈夫ですか……?」
「ああ、大丈夫……だよっ!」
反撃とばかりに、近づいてきた結衣に特大の波をぶつけてやる。
「ひゃあ!?」
「俺がやられっぱなしでいると思うなよ!?」
「兄さん、ひ、卑怯です! だまし討ちなんて反則です!」
「ここは戦場らしいからな。そんなルールはないっ」
「くっ、やりましたね……!」
そこからは、子供の争いだった。
水をかけて、水をかけられて、また水をかけて……
幼い頃に戻ったように、遊び倒す。
まだ泳いでいないのに、全身びしょ濡れだ。
結衣も似たような感じだ。
「兄さん、なかなかやりますねっ」
「結衣こそな!」
「それでこそ、私のライバルです」
「いつライバルになったんだ……?」
「そこで素に戻らないでくださいよっ、ノッてくださいよ! 私だけ、恥ずかしいじゃないですか」
「ほい、隙アリ」
「わぷっ」
おもいきり水をかけられて、結衣は >< ←こんな顔になった。
「兄さん、ひどいです、ずるいです……」
「隙を見せる方が悪い」
「隙ですか……」
結衣は考えるような仕草を取り……
にっこりと、やたらと明るく笑う。
「兄さん……好きですよ♪」
「なっ」
「今です!」
バシャアアアッ、とおもいきり水をかけられた。
「これがホントの隙アリ、ですね」
「ぐっ、微妙にうまいこと言いやがって……今のは反則だろ!?」
「知りません。戦場にルールはなかったんじゃないですか?」
「むぐっ」
「さあ、どんどんいきますよ!」
「よーし、わかった。もう容赦しないからな。泣かす!」
「兄さん、大人げないです……」
「知るか! 妹に負ける兄がいてたまるか!」
「最近は、妹の方が強いんですよ!」
テンションが上がっていた俺たちは、よくわからないことを口にしながら……
「おらっ!」
「負けませんよ!」
笑顔で、明るく、楽しい時間を過ごした。
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