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206話 妹と海

「海ですっ!」

「「「海だぁーーーーー!!!」」」


 準備を終えて、海にやってきた。


 みんなのテンションは、最初からMAXだ。

 まだ服を着てるのに、そのまま駆け込んでいきそうな勢い。


 まあ、下に水着を着てるのなら、それでも構わないだろう。

 その場合、濡れた服が肌に張り付いて、水着がうっすらと見えるわけで……

 うん、それはそれでアリだな。


「兄さん?」

「うん?」

「何か、変なことを考えてませんか?」

「……ナニモ」


 鋭い。


 でも、仕方ないだろう?

 俺だって、思春期の男なんだ。

 女の子たちと一緒に海に来たら、エロいことの一つや二つ、考えてしまうってもんだ。


「……っていうことを、考えているんじゃありませんか?」

「人の心を読むな!?」

「むぅ……ダメですよ!」

「ご、ごめん」

「そうじゃなくて……その……兄さんは、他の女の子のことを考えたらいけないんです。エッチなことだとしても、えっと……わ、私のことだけを考えてください!」

「え?」

「あっ、いえ、その……ウソです! 冗談です! わ、わわわ、私がそんなことを言うわけないじゃないですか! 今のは、全部全部、兄さんの妄想ですよ! 兄さんのえっち、きもいです!」

「ひどくないか!?」


 突然逆ギレされて、突然罵られた。


 俺、泣いてもいいかな……?


「す、すいません……今のは言い過ぎました。兄さん、ちょびっときもいです」

「変わらないよっ!」

「うぅ……仕方ないじゃないですか。ずっと、こうしてきたから、なかなか素直になれなくて……に、兄さんのせいです!」


 もうなんでもいいや……と、諦める俺だった。


 年頃の女の子って、色々な意味で難しい。




――――――――――




 手頃な場所を確保して、レジャーシートを敷いて、パラソルを立てる。

 服を脱いで、水着姿に。

 これで準備完了。


「男は気楽でいいわよねー」

「明日香たちも、水着を着込んできたんだろ?」

「そうだけど……ねぇ?」


 明日香が意味ありげな視線をみんなに向けた。

 俺以外の女性陣が、同意するようにコクコクと頷く。


「うん? どうしたんだ?」


 俺の疑問に、代表して結衣が答える。


「水着を着込んでいても、やっぱり、兄さんの前で服を脱ぐのは恥ずかしいので……あっちを向いてくれませんか?」

「着込んできた意味ないじゃん」

「とにかく、こっちを向いたらダメですよ! いいですね?」


 強引に明後日の方向を向かされた。

 着替えシーン、ちょっと楽しみにしてたのに……

 って、こういう考えだからいけないのか。


「わー、真白ちゃんの水着、かわいいですね」

「えへへー、とっておきを持ってきちゃった」

「ほうほう。天道先輩は、なかなか大胆ですね」

「そう? あたしよりも、小鳥遊さんの方が際どくない」

「む? そうなのか? これが標準的なものだと聞いたのだが」


 背中の方で、わいわいと楽しそうにする女性陣たち。


 うらやましい……

 どうせ水着を着てるんだから、ちょっとくらい見ても……って、ダメだダメだ!

 バレる可能性が高いし、バレたらとんでもないことになる。


 ぐっと自制心を働かせて、欲望をセーブした。


「もういいですよ、兄さん」


 待ってました、とばかりに振り返る。

 すると……


「どうだろうか?」


 まず最初に、小鳥遊さんの水着姿が目に入った。

 意外というべきか、大胆なカットが入ったビキニだ。

 布面積が果てしなく狭い。


 しかし、いやらしい感じはしない。

 大胆な姿をしているんだけど、どこか健康的で、明るい感じだ。


「うん。よく似合ってると思う」

「そ、そうか。うむ、ありがとう。そう言われると、うれしいものだ」

「ねえねえ、お兄ちゃん。私はどうかな?」


 真白ちゃんが俺の手を引いて、こっちを見てとアピールする。


「どうどう? 私、せくしー?」

「おぉ、良い感じだよ」


 セクシーとは程遠い、白のワンピースタイプだった。

 フリルがついていて、ちょっと子供っぽい。


 ただ、明るく元気な真白ちゃんのイメージとよく合っている。

 子供っぽい水着かもしれないけど、でも、逆にそれが真白ちゃんの魅力を何倍にも引き上げていた。

 水着じゃないけど、太陽のような笑顔も得点が高い。


「すごくいいよ。よく似合ってて、かわいい」

「やったー! お兄ちゃんに褒められちゃった、えへへ♪」


 その場でぴょんぴょんとジャンプをして、喜びを表現する。

 微笑ましい。

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