202話 妹とみんなで宴会・4
大岡裁きのような状況になって……
それでもなお、結衣と明日香は手を話さないという鬼畜っぷりを発揮した。
最終的には、二人の手が滑り、解放されたものの……
あのまま左右に引っ張られていたら、本当にちぎれていたのではないか、と恐怖に震える。
この二人、酔っているせいで、いつも以上に歯止めが効かなくなっているぞ。
「兄さんっ、なんで妹の手を振り払うんですか!? おかしいですよっ、おかしいですよねっ」
「宗一のくせに、なーに生意気なことしてくれちゃってるの? もうっ、そんなところも……あはははっ、おもしろーい!」
二人が勝手に大岡裁きを始めただけで、俺は何もしていない。
……と、抗議したいものの、酔っぱらい相手に理屈は通用しないんだよなあ。
将来、この二人に酒を飲ませないようにしよう。
あるいは、一緒に酒を飲まないようにしよう。
固く誓うのだった。
「あー……二人共、眠くなってこないか? 少し横になった方がいいんじゃないか?」
さっさと寝かせてしまおうと画策するも、なかなか思い通りにならない。
「眠くなんてないですよー」
「それよりもー、あたしたちの勝負はまだ終わってないしー」
「えっ、まだ続いてたのか!? もう終わりにした方が……」
「結衣ちゃん、次はどうするー?」
「そうですねー、やっぱり、腕力がモノを言うんじゃないでしょうか」
「まるで話を聞いてない!? それと、物騒な流れになっているような!?」
二人が笑みを浮かべる。
何かを企んでいるような、そんな危険な笑みだ。
「……俺、ちょっとトイレに」
「どこにっ」
「行くのかしらっ」
がしっがしっ、と左右から肩を掴まれて、捕らえられる。
「えへへ……兄さん♪」
「おわっ!?」
結衣が抱きついてきた。
俺の首に手を回して、全身をこすりつけるようにしてる。
「ゆ、結衣っ?」
「すんすんっ、すんすんっ……ふぁあああ、兄さんの匂いです♪ 兄さんの感触です♪」
「えっと、あの……女の子がこういうことをするのは、どうかと……」
「そーゆー、つまらないことは聞きませーん。兄さんはぁ、私が誘惑しちゃうんですからね。んっ、兄さん♪」
これでもか、というくらいに胸の膨らみを押し付けてくる。
今までに、触れることはあったけど……
でも、こうして意図的に……しかも、あからさまに押しつけてきたことなんてない。
今まで以上に、結衣の成長を感じて……
や、やばい……これはやばい!
「そーいちっ!」
「うわっ!?」
反対側に明日香が抱きついてきた。
やはり結衣と同じように、ぐいぐいと胸を押しつけてくる。
「ふふーんっ、お姉さんも負けてられないわ」
「むむっ、明日香さん、やりますね!」
「あたしだってぇ、大きさと形には自信があるのよ。ねっ、宗一。そう思わない?」
「……ノーコメントで」
「つまらない回答ねー。ほら、ほら」
つまらないと思うなら、その時点で飽きて、やめてくれませんかね……?
なんで、さらに押しつけてくるんですかね……?
「兄さん♪」
右に結衣。
「宗一♪」
左に明日香。
二人の女の子に挟まれて、幸せやら苦しいやら……
悶々としてしまう。
これだけしてるんだから、この感触をもっと味わってもいいのでは?
なんてことを思ってしまう。
だって、仕方ないだろう!?
こちとら、聖人でもなんでもなくて、思春期の男なんだから!
とんでもなくかわいい、二人の美少女に囲まれて、なんとも思わないわけがない。
「……ん?」
俺……
今、明日香だけじゃなくて、結衣のことを『かわいい』って思ったのか?
こんな状況だから、流されているんだろうか?
それとも……
「兄さんっ」
「宗一っ」
現実に引き戻すように、二人がさらに距離を詰めてくる。
って、それ以上はまずい!
ホントにまずいから!?
胸の感触だけじゃなくて、顔もすぐ目の前に来て……
ちょっと動いただけで、触れ合ってしまいそうな……
って、何を考えてるんだ俺は!?
「兄さんは、妹のおっぱいが好きですよね?」
「いえいえ。幼馴染のおっぱいの方が好きよね?」
何その究極の二択!?
「兄さん」
「宗一」
「どっちがいいのか……」
「判定してちょうだい!」
「えっと……二人共、少し落ち着いてだな? こう、冷静になろう。それで、話し合いを……」
「「さあっ、さあさあさあ!!!」」
訂正。
幸せなんてなくて、ある意味、地獄のような状況だった。
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