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200話 妹とみんなで宴会・2

「ねぇ……先輩?」


 妖しい笑みを浮かべて、凛ちゃんが寄りかかってきた。


 しっとりと濡れた瞳。

 桜色の頬。

 普段は幼い後輩としか見えないのに、今は、大人びて見えた。


「せっかくの旅行ですから、私と一緒に、イイコトをしませんか?」

「い、イイコト……?」

「そう、イイコトです……ふふっ」


 悪女だ!

 凛ちゃん、悪女になっているよ!?


 雰囲気に流されて、ついつい頷いてしまいそうになる。

 イイコト、ってなんですか!?

 細部に至るまで、詳細に教えてください!


「って、俺は何を考えてるんだ!?」


 場に呑まれそうになっているのだろうか?

 周りに引っ張られるように、テンションが上っていくのがわかる。


「どうしたんですか、先輩?」

「うぁっ」


 凛ちゃんが、指先で、つーっと俺の胸元をなぞる。

 くすぐったいような、気持ちいいような……


 ゾクゾクっと、背中が震えた。


「ふふっ……もしかしてぇ、こうされるのが好きなんですか?」

「いや、ちょっ……」

「先輩はぁ、変態さんですねぇ……ほら、ほらほら」


 妙に色気のある笑みを浮かべながら、凛ちゃんが手を動かす。

 細い指が胸元を這い回り、ピクピクと体が震えた。


 さらに、凛ちゃんはこちらに密着して、体を押し付けてきた。

 わざと、だろう。

 その証拠に、こちらを見てニヤニヤしてる。


 悪魔だ!

 酔ったせいで、小悪魔が悪魔にランクアップした!


「ふわぁ……お兄ちゃんと凛お姉ちゃんは何をしてるの?」


 こちらに気づいた真白ちゃんが、不思議そうな顔をしてやってきた。


「ふふっ……楽しいことよ」

「おー、楽しいこと」

「大人にしかできないこと。真白ちゃんも混ざる?」

「うんっ、やるー!」

「ま、待った待った! 真白ちゃんまでそんなことをしないの!」

「ふぇ」


 慌ててストップをかけると、みるみるうちに真白ちゃんの瞳に涙が溜まる。


 あ、やばい。

 ……と思った時にはもう手遅れて、涙が決壊する。


「うぇえええええっ、わ、私だけ仲間外れにされたぁーーー! 私はいらない子なんだぁっ!!!」

「真白ちゃんっ、お、落ち着いて!」

「お兄ちゃんは、私のこと好きじゃないんだ! 嫌いなんだ! だから、私、捨てられちゃうんだぁ!」

「とんでもなく人聞きの悪いことを泣きながら言わないでくれるかな!?」


 酔った上の発言だと理解しているものの、罪悪感が半端ない。

 自分がとんでもないクズ野郎になった気分だ。

 真白ちゃんの言葉が矢のように、心にグサグサと突き刺さる。


「先輩はいけない人ですね。こーんなにもかわいい真白ちゃんに飽きて、捨てて、振り返りもしないなんて」

「誤解をさらに加速させないでくれるかな!?」

「お兄ちゃん、私を捨てないでっ! なんでもするからぁっ、うえええええぇっ!」

「す、捨てない捨てないっ、捨てないから、そういう発言はやめようね!? ホントお願い!」

「私を捨てない……?」

「もちろん。そんなことしないって」

「ウソだぁあああああっ、そういう甘い言葉で私を騙すんだね!」

「えぇ!? じゃ、じゃあ……独り立ちしなさい?」

「冷たいことを言われたぁあああああっ、お兄ちゃんひどーーーいっ!!!」

「どうしろと!?」


 甘い言葉をかけてもダメ。

 冷たい言葉をかけてもダメ。

 どの選択肢を選んでもアウトという、クソゲーみたいな展開に迷い込んでいる。


 まあ、酔っぱらいを相手にまともな対応を期待しても無駄なんだけどね。


「あらあら、先輩はとんでもない鬼畜ですね……これは、おしおきしないといけませんね」

「お、おしおき……?」

「えぇ、おしおきです。ふふっ、興味ありますか?」

「いや、俺はMじゃないから……」

「そうですか、興味ありますか。なら、さっそく……」

「人の言うことを聞いて!? あと、その荒縄をどうするつもり!?」

「凛お姉ちゃん、ぐすっ、私も手伝うよ」

「そうね、そうしましょうか。二人で一緒に先輩をおしおきしましょう」

「うんっ、おしおきするよ……ひっく、えぐっ」

「泣きながらとんでもないことを言わないでくれるかな!?」


 ダメだこの二人。

 早くなんとかしないと。


 ……手遅れか。


「た、小鳥遊さんっ。凛ちゃんと真白ちゃんをなんとかしてくれ!」

「うん?」


 静かにドリンクを飲み続ける後輩にSOSを送ってみた。


「ヘルプ! ヘルプ、ミー!」

「……」

「小鳥遊さん?」

「私の邪魔をするな」

「あ、はい」


 ものすごい目で睨まれた!?


 比較的穏やかに酔っているから、なんとかなるかもしれないと思ったけど……とんでもない。

 小鳥遊さんが、一番やばいかもしれないぞ。

 自分一人の世界に浸り、それを邪魔するヤツは容赦しない感じだ。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

「おしおきの時間ですよ? ふふっ」

「いーーーやぁあああああっ!!!」

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