20話 妹は惚れ直してしまいました
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
日々上下していますが、ランキングに入ったりしています。
たくさんの応援をいただき、本当にありがとうございます。
……俺たちは次の駅で降りて、痴漢を駅員に突き出した。
痴漢は見苦しく、知らないやっていないと繰り返していた。しかし、目撃者が証言してくれたことで、ようやく犯行を認めて、駆けつけた警察官によってそのまま逮捕された。
その後、事情聴取などを受けて……
ようやく解放されて、地元に戻った頃には、すっかり日が暮れていた。
「最後の最後で、とんだ災難だったわね」
「はい……ですが、兄さんが助けてくれたので」
結衣がうれしそうに笑う。
もう怯えの色は見えない。たぶん、心に傷は残っていないだろう。
よかった……今度は、ちゃんと守ることができた。
「ああいう時の対策、教えてあげましょうか? イヤなことを言うようだけど、通学に電車を使っている以上、同じことが起きるかもしれないし」
「そうですね……なら、今度お願いします」
「ええ、任せて。相手がトラウマになるような撃退術を教えてあげる」
いいぞ、もっとやれ!
結衣に痴漢するような輩を生かしておけない。徹底的にこらしめるべきだ。
「あっ、私の家はこの先なので、ここで」
T字路に差し掛かったところで、凛ちゃんが足を止めた。
「また遊びましょうね」
「それはいいけれど、先輩は抜きにしてくれる? ずっとイチャイチャを見せられるのは、正直、たまったものじゃないわ」
やれやれ、と凛ちゃんはため息をこぼした。
この反応……俺たちのことを疑っているようには見えない。
やっぱり、作戦はうまくいったみたいだ。
「では、また」
ぺこりと一礼して、凛ちゃんが立ち去る。
その背中を見送り、俺たちも反対側の道を歩く。
5分ほどで家に着いた。
鍵を開けて中に入り、リビングに移動する。そのままソファーに座り、一息ついた。
「ふううう……やっぱ、家は落ち着くなあ。色々あったから疲れたよ」
「もう、だらしない声を出さないでください。さっきは、あんなに格好よくて……いえっ、なんでもありませんよ?」
「風呂、どうする?」
「先に入ってもいいですか? 汗をかいてしまったので、スッキリしたくて」
「いいよ。先にどうぞー」
「はい。それじゃあ、先にいただきますね」
結衣が風呂場に消えた。
「ふう……今日はなんとかなったけど、やっぱり、ああいう危険は潜んでいるものなんだな」
結衣が痴漢に遭ったことを思い返した。
今日は助けることができたけど、いつも俺が傍にいるとは限らない。助けてやれない日もあるかもしれない。
いや、痴漢に限ったことじゃない。世の中には、色々な危険が周囲に潜んでいる。その全てから守るなんてことは無理だけど、可能な限り、危険は排除しないといけない。
「……あのこと、ちゃんと考えておいた方がいいな」
――――――――――
「ふぅ」
湯船に浸かると、自然と吐息がこぼれました。
温かいお湯に包まれて、体が芯からぽかぽかになります。心地よくて、気持ちよくて、頭がぼーっとしてしまいます。
私は、ぼんやりと浴室の天井を見つめて……にへら、と笑みをこぼしました。
「兄さん♪ 兄さん♪ あーもうっ、兄さんは、どうしてそんなに格好いいんですか? 私をキュンキュンさせて、萌え殺すつもりですか? もうもうもうっ、兄さんは格好良すぎますよ! はぅううう、もうたまらないです……えへ」
思い返すのは、痴漢から助けてもらった時のこと。
恐怖に震える私を助けてくれた兄さんは、さながら、白馬に乗った王子さまです♪
私を助けてくれた時の、あの勇姿! あの凛々しい瞳! あの力強い声!
その一つ一つが、私のハートを撃ち抜いて、全身を痺れさせます。
胸の奥が甘く痺れます。
ハートが震えて、とろけてしまいそうになります。
んっ……兄さん♪
「兄さん、素敵すぎます♪ あんなところを見せられたら、私、どうにかなってしまいそうです。兄さんへの想いがあふれてしまいますよ。もう、私の心はいっぱいいっぱいです♪ もう受け止めきれませんよ、兄さんに対する愛であふれて、溺れてしまいそうです。ふぁ……兄さん、とても罪深いですよ?」
格好いい兄さんに惚れてしまいました。
いえ、とっくに惚れているので、正確に言うと、惚れ直してしまいました。
以前の好意を数値で表すのならば、10といったところでしょうか?
でも、今は100……いいえ、10000ですね! いやいや、10000どころではなくて、無限大……いえ、数字では表しきれませんね!
「兄さん♪ 兄さん♪ 兄さん♪」
好きですよ、兄さん……大好きです♪
心の底から慕っています。
好き……大好き……大大大好き……!
「ずっと、傍にいてくださいね……?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回で、ちょうど20話になりました。20回の投稿ですね。
妹がデレデレする話でどこまでいけるのかと思ってましたが、
意外といけるものですね。
まだまだ続くので、お付き合いいただければと思います。




