02話 妹に嫌われているような気がします
ブクマいただいたり訪問していただいたり、ありがとうございます。
七々原結衣。
父さんの再婚で、俺の妹になった女の子だ。
小さい頃に家族がバラバラになったことで、新しい『家族』を求めていた俺にとって、結衣が妹になったことは、とても嬉しいことだ。
ただ、そのことを結衣も歓迎しているかというと、そこは微妙なところだ。
なぜか?
それは、普段の結衣の態度を見れば、よくわかると思う。
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キッチンに立ち、キュウリやトマト、ハムなどを一口サイズにカットする。
それから、市販のドレッシングにレモンを少し、ごま油も少し加えて、七々原家特製ドレッシングの完成だ。
これでサラダは完成。
あとはトーストを焼いて、ベーコンエッグを作り……うん、そんなところで、今朝の朝食は完成かな。
「兄さん、おはようございます」
朝食を作っていると、結衣が顔を出した。
学校の制服に身を包み、鞄を手にしている。すでに登校準備は済ませているみたいだ。
「ごはん、もう少しでできるからな」
「手伝いましょうか?」
「大丈夫。すぐに終わるから」
「……そうですか」
一応、そう言ってくれるものの、結衣は微妙な顔をしていた。笑っているような、考え事をしているような……俺と一緒、っていうのがイヤなのかもしれない。
気を取り直して、俺は、言葉通りすぐにトースターを焼いて、ベーコンエッグを作り、朝食の支度を終える。
テーブルの上に朝食を運んで、俺も席についた。鞄をソファーに置いて、結衣も席につく。
「「いただきます」」
「たくさん作ったから、たくさん食べてくれな」
「朝から、そんなに食べられませんよ。私、大食いじゃないんですからね。兄さんは、私のことをなんだと思っているんですか、もう。そういうことは女の子に言うことじゃありませんよ。まったく、デリカシーが足りませんね」
「お、おう。そうか……そうだよな。すまん」
ジト目を返されてしまった。
「ところで……兄さん。なんですか、その格好は?」
「え? なにかおかしいか?」
自分の格好を見る。
いつもの学校の制服姿で、特に変わったところはないと思うんだけど……
「ネクタイ、曲がっていますよ」
「そうかな? 普通に見えるんだけど……」
「もう、兄さんの目は節穴ですか。まったく、だらしないんですから……ちょっと、じっとしててください」
わざわざ席を立ち、結衣はネクタイを直してくれる。
「ありがと」
「別に、兄さんのためじゃないですから。兄さんがだらしないと、妹の私も変な目で見られてしまうから、仕方なくですよ」
「悪いな。あとは自分でやれるよ、サンキュー」
「むぅ……」
なぜか、結衣が頬を膨らませている。
どうしたんだろう? 余計な手間をかけさせられたと、不満に思っているんだろうか?
「ホント、兄さんはだらしないですね。私がついていないと、なにもできないんですから」
普段、キッチリとしている結衣からしたら、俺の適当なところが許せないんだろうなあ……うーん、俺、もっとしっかりした方がいいのかな?
とはいえ、しっかりしている自分を想像することができない。うん、諦めよう。
「その目、どうしようもないことを考えていませんか?」
鋭い。
「なあ、結衣」
「なんですか? 食事中だから、話は簡潔にしてくださいね。でも、兄さんがどうしても私とおしゃべりをしたいというのなら、やぶさかではありませんよ?」
「えっと……今日、一緒に登校しないか?」
「……どうして、そんなことを?」
「いや、特に意味はないんだけど……ほら、たまには、兄妹仲良く登校をしても……」
「別に、私たちは特別、仲が良いわけではありませんよ。普通の兄妹ですからね」
「そ、そっか」
「まあ、兄さんがどうしてもというのなら、仕方ないですが一緒に登校してあげても……」
「悪い、変なこと言ったな。今のは忘れてくれ」
「……」
「結衣? どうしたんだ」
「いーえっ、なんでもありません。なんでも」
結衣は早々に朝食を食べて、席を立ち、鞄を手に取る。
「それじゃあ、私は先に行きますね。今日は、日直なので」
「えっと、一緒に登校は……」
「……しません」
ふいっと、そっぽを向かれてしまう。
そのまま、結衣は先に家を出てしまった。
うーん……最近、結衣がそっけない。冷たいというか、嫌わられているというか……
思春期の女の子は、みんなこんな感じなのかな? それとも、俺が嫌われているんだろうか?
どうにも、後者のような気がしてならない。
こんな感じだから、結衣が俺と家族になったことを喜んでいるかどうか、よくわからない。
というか、イヤに思っているかもしれない、俺のことも嫌いに……
そういう可能性が高いような気がする。というか、そうなんだろうなあ。
「はあ……」
妹と仲良くしたいんだけど、どうしたらいいんだろう?
皆目、検討がつかないのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
プロローグが終わり、最初の回です。
時系列はプロローグの前なので、この時点で妹の彼氏にはなっていません。
とはいえ、二人がくっつくのはわりと早いです。
くっついた後の展開を楽しみにしてもらえたら、と思います。
これからもよろしくお願いします。