199話 妹とみんなで宴会・1
<宗一視点>
結衣たちが風呂から戻ってきて……
俺も風呂に入り……
その後、夕食になった。
部屋は別々だけど、さすがに俺一人で食べるなんて寂しい。
というか、それじゃあ、みんなで旅行に来た意味がない。
寝る時はともかく、食事は同じ部屋でとることにした。
「「おぉーーーっ!!!」」
テーブルの上に並べられた料理の数々に、みんなが声を揃える。
俺も、子供みたいに目を輝かせていた。
海辺の旅館らしく、海の幸が満載だ。
新鮮な刺身。
煮付け。
白身魚のしゃぶしゃぶ。
エトセトラ……
海の料理のフルコースに、見てるだけでよだれが出てしまいそうだ。
いや、マジでおいしそう。
「じゃあ、さっそく……」
「兄さんっ、待ってください!」
「食べる前に、やることがありますよ」
結衣と凛ちゃんの一年生コンビに止められる。
食べる前にやることって、なんだ?
いただきます?
不思議に思っていると、おもむろに、みんなスマホを手にした。
「こんなフルコース、滅多に出会えません! 写真を撮っておかないとっ」
「インスタ映えしますよっ」
結衣と凛ちゃんに続いて、みんなが写真を撮る。
女の子ってヤツは……
呆れるものの、すぐに、それも一理あるかと納得する。
これだけの豪華な料理、写真に撮っておきたいという気持ちもわかる。
SNSにアップするかどうかはともかく、旅行の記念にしたいな。
俺もスマホを取り出し、カシャカシャと写真を撮った。
「じゃあ、改めて……」
「兄さんっ、待ってください!」
写真を撮り終えたところで箸を伸ばそうとするが、再び結衣に止められる。
「な、なんだ? まだ撮りたりないのか? それとも、他に何か?」
「こういう時は、乾杯の音頭をとらないといけませんよ」
「それもそうか。でも、誰が?」
「宗一に」
「よろしく」
「お願い」
「するぞ」
みんなが揃って俺を見た。
なんで俺? とは思うものの、野暮は言うまい。
その場のノリと雰囲気が大事だし……
あれこれ言ってたら、食べる時間がなくなってしまう。
「じゃあ、みんなコップを持って」
俺の合図でみんながコップを手にする。
「えー、本日はお日柄も良く……」
「真面目かっ!」
「兄さん、挨拶はコンパクトにわかりやすく、ですよ」
明日香と結衣からツッコミが入る。
二人共、厳しい。
「って言われても、乾杯の音頭なんてとったことないからな……適当でしかやれないぞ?」
「それでいいんじゃないですか?」
「お兄ちゃん、がんばれー!」
「気軽にやるといいぞ。要するに、『これからもよろしくな』という簡単な挨拶なのだからな」
「なるほど」
気軽に挨拶をするように……
それなら簡単だ。
再びコップを掲げて、口を開く。
「二泊三日、楽しい旅行にしよう。乾杯!」
「「かんぱーいっ!!!」」
――――――――――
「……」
俺は唖然としていた。
愕然、と言い換えてもいいかもしれない。
いったい、何が起きているんだ?
さっきまで、和気あいあいとした雰囲気の中で、おいしい料理を味わい、楽しい時間を過ごしていたというのに……
今は……地獄だ。
「兄さんっ、聞いているんれすか!? 聞いていませんね!? もーーーっ、だから兄さんは兄さんなんれすよぉっ!!!」
「あはははははっ、宗一、もっかいやって! 今のもっかい! すっごいおもしろいっ、あはははははっ!!!」
「ふふふ……私も、先輩のハーレムに加えてもらいましょうか」
「ひっく、うわあああんっ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ! 私、お兄ちゃんに迷惑かけてるよねっ、ごめんなさあああいっ!!!」
「うむ……美味だ……ひっく」
みんな酔っ払っていた。
結衣は絡んできて。
明日香は笑い上戸に。
凛ちゃんは妖しく誘惑してきて。
真白ちゃんは泣き上戸に。
そして、小鳥遊さんは酔ってなさそうで、でも、目が座っていた。
俺たちは未成年だから、当然、酒は頼んでいない。
ただ、それらしい雰囲気を味わいたいということで、ノンアルコールのそれっぽいドリンクを頼んでいた。
その結果……
みんな、雰囲気酔いしてしまった。
「マジかよ……」
オレ一人だけ素面。
周りのみんな、全員酔っている。
どんないじめだよ、って思うくらいにひどい状況だ。
しかし……
本当の地獄はこれから始まるのだった。
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