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198話 妹はみんなでお風呂へ・4

<結衣視点>



「明日香さん、明日香さん」


 他の人に聞こえないように、隣でこっそりと耳打ちします。


「うん? どしたの?」

「えっと、ですね……ちょっと変なことを聞きますが……」

「変なこと?」

「明日香さんは、どうして私と仲良くしてくれるんですか?」

「どういうこと?」


 さっきの疑問をそのままぶつけてみます。


 私たちは恋のライバル。

 普通なら、いがみ合うとまではいかなくても、仲良くすることは難しいはず。

 それなのに、どうして……?


 そんな私の疑問に、明日香さんはあっさりと、そして、笑顔で答えます。


「結衣ちゃんと仲良くしたいから」

「ふぇ?」

「特に深いことを考えてるわけじゃないわよ? 仲良くしたいから仲良くしてるだけ。それだけよ」

「そう言われても……」


 ざっくりとしすぎてて、逆に意味がわかりません。


 仲良くしたいから、と言われても……

 私はライバルなわけで……

 普通は……いえ、でも……うーん?


 考えてみると、なんだか混乱してきました。


「結衣ちゃんの言いたいこと、なんとなくわかるわ。あたしたちはライバルなのに、って感じでしょ?」

「そう、それです」

「んー、言いたいことはわかるんだけどね。でも、あたしの場合は、『普通』は適用されないっていうか……必ずしも、誰もが思い浮かぶような一般的な『流れ』になるとは限らないでしょう? 『普通』のレールから外れる人も、ちょくちょくいるわけだし」

「それは、まあ」

「あたしが『普通』じゃない、っていう自覚はあるわよ? でも、世間一般の『普通』ってヤツにあてはめると、あたしは結衣ちゃんとケンカしなきゃいけないわけでしょ? そんなのごめんよ。あたしは、結衣ちゃんと仲良くしたいの」

「どうして……ですか?」

「宗一と同じくらい、結衣ちゃんのことも好きだから」


 明日香さんの言葉に、私は衝撃を受けました。


 明日香さんがそういう考えを持っていたことに対する驚きではありません。

 こんなにも優しくしてくれることに、驚きを覚えていました。


「その……なんでそう思えるのか、理由を聞いてもいいですか? 正直に言うと、私はよくわからなくて……」

「そうなの?」

「そうですよぉ……だって、私は兄さんの妹であって、明日香さんとは幼馴染じゃないですし……ちゃんと話すようになったのは、高校に進学してからですし……それまでは、ちょいちょい顔を合わせる程度で……」

「好かれる理由がわからない?」

「……はい」


 くすっ、と明日香さんが小さく笑います。

 ついつい、という感じで、無邪気な笑みです。


「結衣ちゃん、真面目なのね。そんな風に考えるなんて」

「そう、でしょうか……? そんな自覚はありませんが」

「確かに、言葉にするとわからないかもね。事実を並べていくと、仲良くなる機会はないように見えるし」

「ですよね……?」

「でも、人の心って、言葉で説明できるものじゃないでしょ?」

「あ……」

「矛盾するような気持ちも抱いてしまう。そういうものじゃない?」

「……そう、ですね」

「あたしは宗一が好き。でも、結衣ちゃんも好き。だから、ライバルといえど、仲良くしたいの。つきつめると、そんな感じで『好き』って気持ちがあるからね。それが、あたしの答えよ」


 明日香さんの言葉が温かい想いになって、胸に広がります。

 すごくうれしいです。

 うれしいですけど……


 同時に、罪悪感を覚えました。

 私は、明日香さんを騙しています。

 本当は、まだ兄さんと付き合っていないのに、付き合っているとウソをついて……


「……」


 こんなこと……続けていいんでしょうか?


 今更撤回することは難しいですが……

 でも、明日香さんにまで、ウソをつかないと?

 こんなにも真摯に接してくれる人にまで……?


 それは……ダメです。


「よしっ」


 決めました。

 明日香さんにだけは、本当のことを話します。


 どうなるかわかりませんけど……

 自己満足かもしれませんけど……


 そうすることが正しいと思うから。


 兄さんを好きな女の子として。

 明日香さんのライバルとして。

 私は、常に『正しく』ありたいです。


「どしたの、結衣ちゃん? なんか、難しい顔してるけど」

「あっ、いえ。なんでもありません」


 さすがに、みんながいるところで話せることではありません。

 何か、機会があればいいんですが……


「そろそろ上がりましょっか」

「あ、そうですね」


 ひとまず、本当のことを話すことは置いておいて……

 みんなに声をかけて、お風呂を後にしました。

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