197話 妹はみんなでお風呂へ・3
<結衣視点>
「ねえねえ、なに話してるのー?」
「私たちも混ぜてくれないか?」
羞恥に悶えていると、真白ちゃんがすいすいと泳いできました。
その後に、小鳥遊先輩が続きます。
「……」
「うん?」
「二人を見ていると安心するわ」
凛ちゃんが真白ちゃんと小鳥遊先輩を見て……主に胸の辺り……笑みを浮かべました。
視線の意味を理解していない真白ちゃんと小鳥遊先輩は、頭の上に疑問符を浮かべます。
「なんの話だ?」
「い、いえっ、なんでもありませんよ。なんでも!」
このままではまずいと、私は話を逸らします。
胸の話はデリケートなんです。
とっても大事な問題なんです。
軽々しく口にしてはいけません。
ということで、ここまで!
「明日香さんの肌は綺麗ですね、っていう話をしていたんですよ」
「おー、確かに綺麗だよね!」
「うむ。同性の私でも、思わず見惚れてしまうほどだ」
「小鳥遊先輩は、同性だからこそでは……?」
次は、明日香さんを好きになったりするんでしょうか?
ありえそうで怖いです。
「つるつるで、ぷにぷにで……たまご肌って、こういうことを指すんでしょうか?」
話題を逸らすために、咄嗟に口にしたことですが……
実際、明日香さんの肌は、とんでもなく綺麗なんですよね。
なにか、特別なケアをしているんでしょうか?
気になります。
恋する乙女としては、すごく気になります。
「えいっ」
「ひゃ!?」
不意をつくような感じで、真白ちゃんが明日香さんの脇の辺りをつつきました。
「な、なにするの?」
「触ってみたいな―、って」
「だからってホントに触らないの」
「でもでも、すっごいね! ぷにぷにのもっちもち! 私もこうなりたいなー」
「ふむ……えいっ」
「ひゃう!?」
真白ちゃんに続いて、小鳥遊先輩もちょんちょん。
脇が弱いのか、明日香さんは体をくねらせて悲鳴をあげます。
「おぉ、確かにすごいな。こんな感触、味わったことないぞ」
「あ、あのねえ……」
「……えいっ」
「うひゃ!? ゆ、結衣ちゃんまで!?」
「す、すいません。みんながそこまで言うから、つい、興味が……」
「えいやっ!」
「ひぃんっ!?」
凛ちゃんも参戦して、おもいきりつつきます。
「ふふふ、これは楽しいですね」
「人で遊ばないのっ!」
「明日香さん、どんなお手入れをしているんですか? 気になります」
「んー、言うほど特別なことしてないわよ? 市販の、どこにでも置いてるようなヤツを使ってるくらいで、他には何もしてないし」
「それでコレですか……」
「うらやましい……」
私と凛ちゃんの視線が明日香さんの肌に突き刺さります。
その感触を得たのか、明日香さんは体を隠すようにして、後ずさりました。
「こ、これ以上は禁止よ! お触りダメ!」
「いかがわしいお店みたいなことを言うんですね」
「誰が言わせてるのよっ」
盛大にため息をこぼす明日香さん。
「まったくもう……あたしはツッコミ入れる側であって、いじられキャラじゃないのに」
「そう思っているのは本人だけですよ」
「えっ、マジで!?」
「明日香さんは、いじられいじめられっ子キャラです!」
「満面の笑みでそんなこと言わないでくれる!? そんなキャラ願い下げだから!」
「返品不可です」
「クーリングオフ制度は!?」
「ありません」
「悪徳業者!」
……なんて。
明日香さんと言葉遊びを楽しんでいると、隣の凛ちゃんが笑います。
「二人とも、仲が良いのね」
「そうですね」
「そうね」
「息もぴったり。すごいわね」
そんなに疑問に思うことでしょうか?
明日香さんと仲良くしたらいけない、なんて決まりはないし……
私にとって、本当のお姉さんのように優しい存在で、仲良くなるのはごくごく自然な流れだと思うんですが。
私の疑問に答えるように、真白ちゃんが言います。
「でもでも、二人はライバルなんだよね?」
「あ……」
「それなのにこんなに仲がいいんだから、それはすごいことだと思うな。あっ、もちろん悪いことじゃないよ? 仲が良いのはいいこと!」
そういえば……
と、その事実を忘れてしまいがちですが、私と明日香さんはライバルでした。
普段、とても仲良くしてもらっているので、たまに現実を忘れてしまいます。
「……」
今更ですが……
私と明日香さんって、不思議な関係ですよね。
恋のライバルなのにいがみあうことなく、自然体でいられる。
優しくしてくれて、仲良くしてくれる。
普通なら、こうはならないと思いますが……
うーん?
私たちが普通じゃないんでしょうか?
それとも、こういうことはよくあることなんでしょうか?
考えれば考えるほど、わからなくなっていきます。
ブクマや評価が、毎日更新を続けるモチベーションになります。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、
ブクマや評価をしていただけるとうれしいです。