195話 妹はみんなでお風呂へ・1
<結衣視点>
兄さんと一緒に公園を散歩して……
それから、近くのお店で地元のスイーツを食べて……
二人の時間を満喫したところで、日が暮れてきたので旅館に戻りました。
「結衣、おかえり」
「うん、ただいま」
部屋に戻ると、凛ちゃんを始め、みんなが迎えてくれます。
どうやら、私が最後だったみたいです。
それにしても、凛ちゃんを相手に『ただいま』と言うのは、ちょっと違和感がありますね。
まるで、凛ちゃんと家族になったような気分です。
不思議な感じですが……悪い気はしませんね。
でもでも、本当にそういうことになるとしたら、兄さんと凛ちゃんが結婚した場合……ですよね?
ダメです!
それはダメですよ、兄さん!
明日香さんだけじゃ足りず、凛ちゃんも毒牙にかけるつもりですか!
兄が手を出していいのは妹だけなんですからね!
「結衣? どうかした?」
「あっ……う、ううん。なんでもないですよ? ちょっと、考え事をしてて」
「どんな?」
「えっと……きょ、今日の夕飯は何かな、とかそんなことですよ」
兄さんとの修羅場を想像してました、なんてことは言えないので、適当にごまかしました。
ですが、これはこれで、私が食いしん坊キャラに思われるのでは……?
「結衣が帰ってきてくれてよかったわ」
「どういうことですか?」
「これから、みんなでお風呂に行こう、って話をしてたのよ」
凛ちゃんの代わりに、明日香さんが説明してくれます。
「お風呂……ですか?」
「露天風呂があるみたいよ」
「わぁ、露天風呂ですか♪」
「眺めは最高! でもって、疲労回復や肌に良いらしいわ。これはもう、入るしかないでしょ!」
「ですね!」
「二人共、仲が良いのね」
ライバルなのに……というような顔をして、凛ちゃんが呆れたように言います。
確かに、明日香さんとはライバルですが、それ以前に、頼れるお姉さんなのです。
そしてそして、露天風呂の前では私たちはただの女の子に戻ります。
競い合うことはせずに、露天風呂の恩恵に浸りたいのです。
それだけの魅力があるんですよ、露天風呂には!
「なにかおバカなことを考えていない?」
「凛ちゃん、ひどいですね……」
最近の凛ちゃんは、口が悪いような気がします。
反抗期でしょうか?
――――――――――
<結衣視点>
全会一致で露天風呂に行くことが決まり、すぐに準備をして更衣室へ。
服を脱いでいきますが……
「……」
あと一枚で裸、というところで、私は手を止めました。
体育の授業で下着姿になることはありますが……
裸を見せる、ということはありません。
女の子同士だから気にすることはないんでしょうけど……でもでも、ちょっと恥ずかしいです。
みんなは気にしないんでしょうか?
「~♪ 温泉、温泉♪ 露天風呂~♪」
明日香さんは鼻歌を歌いながら、ぱぱっと服を脱いで裸になってしまいます。
惚れ惚れするような脱ぎっぷりです。
とても堂々としていて、威厳すら感じられます。
さすがですね……
見事なスタイルなので、それを隠すことに意味はない、ということなんでしょうか?
「? どうしたの、結衣?」
「い、いえ。なんでもありませんにょ?」
凛ちゃんも気にすることなく、普通に裸になっていました。
お風呂に入るのだから服を脱ぐのが当たり前でしょう?
むしろ脱がないでどうするの?
……というような態度です。
なんということでしょう。
凛ちゃんは、私よりも大人でした。
「結衣お姉ちゃん、どうしたの? 早くお風呂入ろうよ」
「風呂は逃げることはないが……せっかくだから、みんなで入った方が楽しいぞ」
真白ちゃんと小鳥遊先輩もとっくに服を脱いでいました。
タオルを手にしているものの、体を隠すようなことはしていません。
恥ずかしいものなんてない、というように堂々としています。
「……」
あれ?
恥ずかしがっているのは、もしかして私だけでしょうか?
女の子同士だから、裸を見せることに抵抗がないのが普通なんでしょうか?
うぅ……
なんだか、途端に自分が子供に思えてきました。
こんなところでためらってしまうなんて……
「よしっ」
ここでためらっていても、仕方ないですからね!
それに、い、いいい、いざという時は兄さんを相手に裸になるわけで……きゃあきゃあ!!!
そ、それはともかく。
女は度胸、ですっ!
私は下着を脱いで、タオル片手にお風呂に突撃しました。
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