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192話 妹とみんなで旅行に行こう

 しばらくの間は、平穏な日々が続いて……

 特に何事もなく、一学期が終了。


 学生なら、誰もが待ち望む夏休みに突入した。


「夏休みですよっ、兄さん!」


 目を覚まして、リビングに降りると、テンションの高い結衣が笑顔で出迎えてくれた。


「起きるのが遅いですよ。今日がなんの日か忘れたんですか?」

「元気だなあ」

「それはもう、元気になりますよ。今日は、みんなで旅行ですからねっ」


 今日から、二泊三日で海に遊びに行くことになっている。

 よほど楽しみにしていたのか、結衣は小さな子供のようにはしゃいでいた。


「兄さん、早く準備をしてください。遅刻なんていけませんよ」

「まだ8時なんだが……」

「もう8時、の間違いですからね。待ち合わせまで、あと2時間! ちょっとでも気を抜いたら、遅刻してしまいますよ」

「ないない。準備は昨日のうちに終わってるし、駅前まで歩いても30分。遅刻のしようがないだろ」

「外は快晴で、旅行日和なんですからね? こんな日に遅刻したりしたら、大ブーイングですよ。ダメですからね、そんなことは」

「人の話を聞いてくれるかな!?」


 よほど楽しみにしてたのか、結衣はハイテンションだ。

 ウチの妹、なんでここまで元気なの……?

 楽しみで眠れなくて寝不足で、それゆえにハイテンションなの?


 ……実際にありえそうで怖い。


「結衣、ちゃんと寝たか?」

「はい、寝ましたけど、それが?」

「本当か?」

「本当ですよ。ちゃんと、2時間も寝ましたからね!」

「ちゃんとじゃねえよっ!」


 悪い予想が当たってしまった。


「今日が楽しみで、昨夜は寝たのが外が明るくなってからでした!」

「昨夜ってレベルじゃないからな!」

「大丈夫です! 私は元気です!」

「元気だからこそ不安になるんだよ!」


 こんな調子で大丈夫なんだろうか……?

 不安に思うものの、今から寝ていたら、本当に遅刻してしまう。


「調子が悪くなったりしたら、すぐに言えよ?」

「大丈夫ですよ。兄さんは心配症ですね」




――――――――――




「あう……き、気持ち悪いです、兄さん……」


 電車を降りた結衣は、青い顔をしてフラフラしていた。

 やっぱりというか、酔ったみたいだ。

 乗り物に弱くないとはいえ、寝不足で電車に乗ったら、そりゃ体調も崩す。


「大丈夫か? 立てるか?」

「うぅ、なんとか……」


 手頃なベンチに結衣を座らせる。

 うちわを取り出して、ぱたぱたと扇ぐ。


「先輩。結衣の調子はどうですか?」


 心配そうな顔をして、凛ちゃんが声をかけてきた。


「見ての通り、すっかりダウンしてるよ」

「結衣、乗り物に弱いというわけではないんですけどね」

「寝不足だったみたいだから、そのせいだろ」

「なるほど」


 寝不足の一言で大体のことを察したらしく、凛ちゃんは苦笑した。

 さすが親友だ。

 結衣のことをよく理解してる。


「じゃあ、ここで少し休憩しましょうか。旅館までタクシーで移動の予定なので……こんな状態で車に乗ったら、トドメを刺してしまいますからね」

「俺が残るから、みんなは先に行ってていいよ。付き合わせるのは悪いし」

「結衣を置いていけませんよ」


 凛ちゃんがそう言って、


「ちょっとくらい待つことなんて、あたしは気にしないわよ」

「っていうか、結衣お姉ちゃんを置いていったら、逆に気にしちゃうよー」

「皆で揃って行動してこその旅行だと思うぞ」


 明日香、真白ちゃん、小鳥遊さんが揃って同意した。


 今日はフルメンバーだ。

 だからこそ、誰か一人でも欠けた状態で行動したくない。


 そんなことを口にするように、みんな、優しい顔をしてた。


 改めて、このみんなと出会うことができて良かったと思う。

 良い出会いに感謝だ。


「というわけで、少し休憩していきましょう。長い間電車に乗っていたから、私たちもちょっとのんびりしたいですし」

「ありがと、助かるよ」

「いえいえ。この恩は、いずれ金品で返してもらえれば」

「金とるのかよ!?」

「五百円でいいですよ」

「微妙にリアルな金額だな!」


 やっぱり、この出会いに感謝するのはやめておいた。


「兄さん……横になりたいです……膝を貸してください……」

「ほら」


 結衣の隣に座り、膝を叩いてみせる。

 結衣はフラフラしながらも、俺の膝にぽすんと頭を乗せた。


「はふぅ……兄さんの膝枕ぁ……気持ちいいです……」

「少しは楽になったか?」

「はい、すごく……ずっと、このままでいたいくらいです……」


 ずっとこのままだと、いつまで経っても旅館にたどり着けないぞ。

 おいコラ、本気で寝ようとするな。

 笑顔で俺の膝に頬をこすりつけるな。


「ふむ。二人は本当に仲が良いのだな」

「爆ぜろー♪」

「私も膝枕してもらいたいなあ」


 みんな、好き勝手言いつつ、俺と結衣を温かく見守るのだった。

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