190話 妹と幼馴染と水着と・7
<結衣視点>
「ところで、聞きたいことっていうのはなんですか?」
兄さんに褒めてもらって大満足した私は、少し冷静になり、さきほどの話を思い返しました。
カーテン越しなので、兄さんの顔は見えませんでしたが……
どことなく、真面目な雰囲気でした。
何か大事な話があるんでしょうか?
……も、ももも、もしかして、告白の返事!?
ついに!?
いよいよ!?
でもでも、こんなところで告白の返事をするんですか!?
というか、私、水着なんですけど!?
いや、水着だからこそ?
兄さんは水着が好きで、それにたまらなくなって、ついつい……
ダメですよ、兄さん。まだ早いです。
でもでも、兄さんがどうしてもっていうのなら、私としては……
明かりは消してくださいね……?
「あー……中学の頃、って言ってただろ?」
「へ?」
「いや、だから……俺を好きになったの」
「あ、はい。そうですね」
どうも、告白の返事じゃないみたいです。
それなのに、私は一人ではしゃいで、覚悟まで決めて……
「っっっーーーーー!!!」
とんでもなく恥ずかしくなってきました。
兄さんから思いきり目を逸らします。
恥ずかしいです。
あんな妄想をしてしまう自分が、とんでもなく恥ずかしいです。
でもでも、仕方ないじゃないですか。
ピンク色の妄想をしてしまうくらい、兄さんのことが大好きなんですから!
「そのことで、もう少し聞いておきたいことが……結衣? 聞いてるか?」
「あ、はいっ! もちろん聞いていますよ? 私が兄さんのことを好きになったきっかけ、の話ですよね!?」
改めて口にすると、ちょっと恥ずかしいです。
「その時の結衣の気持ち、もうちょっと詳しく教えてくれないか?」
「ふぇ!?」
兄さんに惚れた時の話を、兄さんの目の前で私がする。
それ、なんて羞恥プレイですか!?
もしかして、兄さんは妹を辱めて喜ぶ趣味が……?
兄さんのことならなんでも受け入れたいと思っていますが、正直、それは引きます。
ダメダメです。
私が兄さんを矯正してあげないと!
「兄さん。あの、ですね……そういうことは、軽々と話せるようなものではないといいますか、ましてや、本人に改めて話をさせるなんてこと、ありえないといいますか……兄さんは、そういう趣味なんですか?」
「なんだ、そういう趣味ってのは?」
「えっと……妹に改めて告白させて、恥ずかしがるところを楽しむ……という」
「ちげぇよっ!!!」
「違うんですか?」
「え、ウソ、意外。なんて顔をするなっ!」
「兄さんなので」
「だから、その言葉でなんでもかんでも済ませようとするな!」
私の予想は違っていました。
おかしいですね?
それなら、なんでこんな話を?
「話しづらいこと、っていうのは理解してるよ。ただ、もうちょっと詳しいことを聞きたくて……でも、本人以外に知らないことだろ?」
「どうして、詳しいことを知りたいんですか?」
「結衣と向き合うために必要なことなんだ」
「そう、ですか」
私のことを考えてくれた上の行動でした。
ここまでしてくれる、っていうことは……
告白に応えてくれる可能性はある、と考えてもいいんでしょうか?
期待しちゃいますよ、兄さん♪
「……わかりました。そういうことなら」
「ありがと。助かるよ」
「恥ずかしいんですから……こんなこと、何度も言わせないでくださいね?」
恥ずかしくて、相変わらず兄さんの顔をまともに見ることができません。
でも……
今は、きちんと顔を見て話したいです。
私の想いをしっかりと伝えたいです。
ぎくしゃくしながらも、兄さんの方を向きます。
「ぅ」
たぶん、今の私、顔が真っ赤になっているでしょうね……
また想いを語らないといけないなんて……しかも詳しく……どんな羞恥プレイですか。
落ち着きましょう、私。
ある意味、これはチャンスです。
もう一度、想いを伝えることができるのは、なかなかできないことです。
アピールポイントになるかもしれません。
顔は、きっと、赤いままだけど……
どうにかこうにか、最低限のラインまで気持ちを落ち着けて、私は口を開きます。
「あの時の私は……」
当時の気持ちを思い返しながら。
当時の心を胸に抱きながら。
幸せで、温かい想いに浸りながら。
私は、兄さんに対する『恋』を語りました……
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