189話 妹と幼馴染と水着と・6
<結衣視点>
このカーテンの向こうに兄さんがいます。
そう考えると、とんでもなく恥ずかしくなってきました。
私と兄さんの間にあるのは、カーテン一枚だけ。
そんな状況で、服を脱ぐなんて……
「あうあう」
もしもカーテンが透けていたら?
もしもカーテンがめくれたら?
どちらもありえないことなのですが、ついつい、そんなことを考えてしまいます。
その場合、段階にもよりますが、私の恥ずかしい姿を兄さんに見られてしまうことに……
「ふぁ……」
恥ずかしいです! 恥ずかしいです! 恥ずかしいです!
でも……
ちょっとだけ、ドキドキしてしまいました。
私、えっちな女の子なのかもしれません……
「んっ!」
いつまでもためらっていても仕方ありません。
私は意を決して、服を脱ぎました。
まずは、上着から。
続いて、スカート。
このままの勢いで、早いところ試着を……
「なあ、結衣」
「ひゃい!?」
なんていうタイミングで兄さんは声をかけてくるんですか!
見えているんですか!?
見えていないですよね!?
「あっ、なんかタイミング悪かったか?」
「悪いと言えば悪いですが……狙ってませんよね?」
「んなことしないって。こっちからは何も見えないんだし」
「それならいいんですけど……それで、どうしたんですか?」
「ちょっと聞きたいことがあったんだけど、後でいいよ」
「そ、そうですか」
兄さんの聞きたいこと……なんでしょう?
気になったものの、下着姿で話をする度胸なんてありません。
今は、試着を済ませてしまいましょう。
ササッと水着に着替えます。
「えっと……終わりました」
「お、そっか」
「……」
「……」
「あ、開けますね?」
「なんだ、今の間は?」
「笑われないか心配で……」
「そんなことしないって」
「本当ですか?」
「本当」
「約束ですよ」
「ああ、約束だ」
「なら……」
私はごくりとツバを飲み込んで、それからカーテンを開きました。
兄さんに水着姿を見せます。
ここまで露出の高い格好を見せたのは初めてです。
果たして、どんな反応が……?
「……」
無言でした。
兄さんは目を丸くして、珍しいものを見るような視線をこちらに向けています。
何も言わず。
何も反応せず。
ただ、じーっと見つめています。
うぅ……失敗だったんでしょうか?
似合わなかったんでしょうか?
そんなことを言われたら、私、泣いてしまいそうです……
でも、ここまできたら、確かめないわけにはいかなくて……
「あ、の……ど、どうでしょうか……?」
「……あ、ああ……うん」
我に返った。
そんな表現が正しい感じで、兄さんはパチパチと瞬きしました。
それから……視線をわずかに逸らします。
でも、完全に逸らすことはなくて……
チラチラとこちらを見ています。
鼻先をかきながら……
「まあ……うん。いいんじゃないか?」
「な、なんですか、その曖昧な表現は」
「○」
「もっと曖昧になりました!?」
「ええで」
「うさんくさい感じです……もうっ! 兄さんっ、ハッキリ感想を言ってください。だ、ダメならダメで、ちゃんと受け入れますから……うぅ」
「ダメなんてことはない! その……すごくいい。似合ってるよ」
「ほ、本当ですかっ?」
「ああ。ウソなんてつかないよ。マジでいい。その……めちゃくちゃかわいい」
「はぅ!?」
兄さんが、か、かわいいって……あうあう!?
ひゃあああ!
そ、そんなことを言われたら、どうしていいかわからないじゃないですか!
何度言われても慣れることはありません。
そして、何度言われてもうれしいです。
胸の奥がキュンとして、熱くなります。
頬が勝手に赤くなって、制御不能に陥ります。
熱くて……
温かくて……
この感覚、幸せです♪
「えへ……ありがとうございます、兄さん♪」
私は、とびっきりの笑顔を浮かべるのでした。
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