185話 妹と幼馴染と水着と・2
30分ほど水着を吟味した後、結衣と明日香は左右に別れた。
それぞれ好みにタイプが異なるらしい。
結衣は、ワンピースタイプなどが並ぶ控えめな水着のコーナーへ。
明日香は、ビキニタイプなどが並ぶ派手な水着のコーナーへ。
俺は、そんな二人をのんびり眺めながら、選び終えるのを待つ……
ってわけにはいかないんだろうなあ。
選ぶところから付き合わないと、色々と面倒なことになりそうだ。
ひとまず、明日香のところへ行く。
「どうだ? 良いものは見つかったか?」
「んー、ある程度は?」
そういう明日香は、両手にそれぞれ一着ずつ、水着を手にしていた。
右手に赤のビキニ。
左手に、さらに布地が少ない際どいタイプのもの。
「どっちがいいと思う?」
「……その二択なのか?」
「どっちもかわいいでしょ? だから、悩みどころなのよねー」
かわいい……のか?
エロいとしか思えない俺は、心が汚れているんだろうか……?
「結衣に聞いたらどうだ?」
「もちろん聞いたわよ。その上で、この二つまで絞り込んだの」
「なるほど」
「だから、最後は宗一の意見に頼ろうかな、って」
「……ちなみに、俺が選んだ方を買うのか? それを着て海に?」
「そりゃそうでしょ。何のための水着よ」
なら際どい方で。
……と言いかけて、冷静になる。
落ち着け、俺。
明日香にまでエロい目を向けてどうするんだ?
延々とからかわれることになるし、結衣がどんな反応をするか……
「赤い方がいいんじゃないか?」
「なるほどなるほど。宗一は、こっちの際どい方が好み、と?」
「んなこと言ってねぇ!」
「でも、こっちがいいんでしょ?」
「むぐっ」
「わかるわよ、宗一の考えてることなんて。何年、幼馴染やってきたと思ってるの?」
「……赤も似合うと思うのはホントだぞ?」
「ありがと」
にっこりと笑う明日香。
「ま、あたしも宗一以外の人に肌を見せたくないし、おとなしめの赤にしておきますか」
そういうことをサラリと言わないでほしい。
照れる。
そんな俺の反応も計算の内らしく、明日香はニヤニヤしてた。
油断ならないというか、なんというか……
色々な意味で手強い幼馴染だ。
「じゃあ、試着してみるから、宗一はコレ戻しておいてくれる?」
明日香から水着を受け取る。
「すぐに戻ってきてよ」
「え、なんで?」
「試着するんだから、見せる相手が必要でしょ」
「……俺?」
「他に誰がいるの?」
「いや、でもな……」
「照れてる?」
「そ、そんなわけないしっ」
「ならいいじゃない。っていうか、どうせ、海行ったらあたしの水着姿を見ることになるんだし。予定より早くなるだけよ」
「それは、まあ……」
「というわけで、感想、楽しみにしてるから」
言うだけ言って、明日香は水着を手に試着室に入ってしまった。
仕方ないか。
明日香から受け取った水着を商品棚に戻して、試着室の前に移動する。
「宗一」
「ん? 着替え終わったのか?」
「まだよ。今のあたし、裸だから」
「ぶっ!」
「想像した? 想像した?」
「するわけないだろ」
本当はしました。
おもいきりしました。
すいません……
「覗かないでよ?」
「しねえよ!」
「あたしの裸、興味ないの?」
「あるよ!」
「清々しい態度ね……」
「口が滑ったんだよ!」
「素直だもんね、宗一は。まあ、これくらいにしといてあげる」
「ホント、これくらいにしてください……」
ガリガリと精神力のゲージが削られていく。
水着選びに付き合うだけなのに、なんでこんなに疲れるんだ……?
「あっ」
「どうした?」
「サイズ、ちょっと合わないかも。宗一。悪いけど、別の持ってきてくれない?」
「だーかーらあああああっ!!!?」
……色々な意味で、明日香に悩まされるのだった。
この幼馴染、小悪魔である。
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