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184話 妹と幼馴染と水着と・1

 時間は流れて、翌日の放課後。

 一度家に帰り、服を着替えた後、再び外に出て明日香と合流する。


「ゴチになりまーすっ!」

「第一声がそれかよ!?」

「今日は、世界のおいしいもの全部、宗一がごちそうしてくれるんでしょ?」

「情報伝達の歪み具合が半端ないな!?」

「ゴチになりまーすっ!」

「天丼か!」


 コイツ、本当に俺のことが好きなのか……?

 からかわれてばかりで、好意というものがまるで感じられない。


「照れ隠しよ。小学生男子が好きな子にちょっかい出すようなものね」

「人の心を読まないでくれるかな!?」

「やだ……宗一ってば、鬼畜……そんあドエロいこと、いつも考えてるの?」

「冤罪キタ!?」

「うーんっ、良いリアクション! やっぱ、宗一はおもしろいわね」

「しまいにゃグレるぞ」

「どうぞどうぞ。宗一がグレても怖くないし」


 男の威厳というものがまるでない。

 むしろ、明日香の方が堂々としてて威厳がある。

 俺っていったい……?


「兄さんと明日香さん、テンション高いですね……」


 俺たちのノリについていけない結衣は、やや引いていた。


 やめて。

 そんな冷たい目を向けないで。


「目的を忘れないでくださいね? 今日は、水着を買いに来たんですから」

「わかってるよ」

「本当にわかっているんでしょうか? 兄さんの頭、心配です……」

「俺の頭がおかしいように言うな!?」

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。いつまでもこうしていても仕方ないですし」

「そうね。ほら、遊んでないで行くわよ、宗一」

「俺のせいみたいに言うな!」


 心なしか、明日香が加わったことで、結衣も俺にちょっかいを出しているような気がする。

 悪いことの相乗効果だ。

 結衣がグレたらどうしよう?




――――――――――




 繁華街の一角にあるアパレルショップにやってきた。

 夏ということで、水着コーナーが大きく作られている。


 ざっと眺めて……


「俺はこれでいいか」

「えっ!? 兄さん、もう決めたんですか?」

「はやっ。まだ1分も経ってないじゃない」

「男の水着なんて、どれも変わり映えしないからな。適当で問題ない」

「でも、他にも色々ありますよ?」

「これなんてどう? どう?」

「ブーメランタイプなんて履くか!」

「兄さん、兄さん。この七色のヤツはどうですか?」

「派手すぎる!? 本当に似合うと思ってるのか!?」

「すいません、遊んでました」

「兄で遊ばないでくれるかなあ!?」


 ダメだこの妹。

 悪い幼馴染の影響を受けまくっている。


「俺のことはいいから、二人共、自分の水着を選べよ」

「それもそうね。結衣ちゃん、行きましょ」

「はいっ」

「じゃ、俺はそこら辺で待ってるから」

「何言ってんの? 宗一も来てくれないと困るわよ」

「はっ? なんでだ?」

「宗一の意見を聞きたいからに決まってるでしょ? 女の子だけで選ぶのもいいけど、男の子の視線っていうのも気になるからね」

「そういうものか……?」

「水着は自分を着飾るだけじゃなくて、かわいく見せることも含まれてるんだから。見る人を意識しないでどうするの」

「そう言われると納得してしまうような……?」


 でも、俺も一緒に行くのか?

 やたら華やかな女の子の水着コーナーに、男の俺がついていくのか……?


「ほら、兄さん」

「行くわよ」

「ちょっ、お前ら……!?」


 二人に手を引かれて、逆らうこともできず女の子の水着コーナーに連れて行かれた。


 右を見ればワンピースタイプのような、おとなしい感じの水着が並んでいる。

 左を見ればビキニタイプのような、派手な感じの水着が並んでいる。


「……」


 ここにいることがひどく場違いのような気がして、ひどく気まずい。

 落ち着かない。

 すぐにここを立ち去りたい。

 が、結衣と明日香が左右から俺の腕をがっしりと掴んでいるため、逃げることができない。

 俺が逃げるということは、二人にとって簡単に予想できることらしい。


「宗一、恥ずかしいの? ここにあるの、下着じゃなくて水着なのよ?」

「それはわかってるんだけどな……なんていうか、ほら……形は同じじゃないか」

「だから、エロいことを連想するって? わー、宗一のドすけべ」

「兄さん……引きます」

「だから外で待ってるって言ったのに!」


 この妹と幼馴染は鬼か!

 俺をからかって、そんなに面白いのか!


 ……明日香なら、まず間違いなく、面白いって即答するだろうな。

 ハハハ、やってられないぜ。


「あの、できれば兄さんにもいてほしいんですが……」

「男の子の意見も、けっこう重要なのよ?」

「わかった、わかったよ。逃げたりしないから、離してくれ。ちゃんと、二人の水着を選ぶよ」

「よろしい。じゃ、結衣ちゃん。まずは右の方から見ましょっか」

「そうですね」


 二人は仲良く水着を選び始めた。

 そんな二人を見て、俺は疲労たっぷりの吐息をこぼすのだった。

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