181話 妹が考えるこれからのこと
<結衣視点>
私と入れ替わりに、兄さんがお風呂に入りました。
その間に、私はバスタオルで髪を拭いて、ある程度したところでドライヤーをかけます。
髪を乾かしながら考えることは、もちろん、兄さんのことです。
ついに、兄さんに告白することができました。
私の想いを伝えることができました。
「でも、これがスタートなんですよね」
告白したら満足、なんてことは言えません。
やっぱり、兄さんと本物の恋人になりたいです。
そのために、たくさんたくさん、たくさーーーんっアプローチしないといけません。
兄さんは鈍いですからね。
ちょっとくらい大胆な方がいいというものです。
「でも……」
迷いが生まれます。
それは……明日香さんのこと。
同じく兄さんを好きで……
私にとってお姉さんみたいで、大好きな人。
現状は、私が抜け駆けをしているようなもので、フェアじゃありません。
明日香さんは、私と兄さんが付き合っていると思ってますからね。
兄さんを惚れさせてみせると言っていたものの、やっぱり、アプローチしづらいと思います。
自己満足のようなものですし……
今更ではありますが……
明日香さんとは、正々堂々と競いたいです。
「だけど、どうしたらいいんでしょうね?」
気兼ねなく、明日香さんも兄さんにアプローチできる状況を作る。
考えてみるものの、なかなか良いアイディアは浮かびません。
実は私と兄さんは偽の恋人なんです。
そうやって、本当のことを話したら解決するのかもしれませんが……
リスクが大きいです。
私はともかく、兄さんを巻き込んでしまっているので……
本当のことを話したら、兄さんにまで被害が及ぶかもしれません。
それは絶対に避けないといけません。
「やっぱり、本当のことは打ち明けられません……となると……ふぇ?」
二階の方から音が聞こえてきました。
勘違いではなくて、わずかにですが、聞こえます。
足音……じゃないですね。
むしろ、人工的に作られた電子音……
「あっ、私のスマホ!」
慌てて二階の私の部屋へ。
扉を開けると、机の上に置きっぱなしにしていたスマホが、着信音を奏でていました。
急いでスマホを手に取り、通話をタップ。
「はい?」
「もしもし。今、大丈夫かしら?」
「あっ、凛ちゃんでしたか」
「私以外の誰だと言うの?」
「すみません。名前を見てなかったもので」
「先輩とイチャイチャしてて、慌てて電話に出たとか?」
「ち、違いますよっ」
「そういうことにしておいてあげる」
「だから、違うんですってばぁ」
くすくす、と凛ちゃんの笑い声が聞こえてきます。
意地悪な友だちです。
「それで、どうしたんですか?」
「結衣と先輩、夏休みの予定はどうなっているのかしら?」
「夏休みですか? まだ、特に決まってないですが」
もうすぐ夏休み。
とても楽しみですが、まだ予定は何も入っていません。
できることなら、兄さんとデートしたりデートしたりデートしたいですが……
告白の件もあるし、明日香さんの件もあるし、うまくいくかどうかわかりません。
「ならよかったわ。夏休み、みんなで遊びに行かない?」
「え? どこにですか?」
「海よ」
「海ですか?」
「親戚の叔父さんが旅館をやっているのだけど、よかったら遊びに来ないか? って誘われて」
「なるほど……でも、そこそこするんじゃないですか?」
「タダでいいらしいわ。うちのお父さんとお母さんに、色々と借りがあるみたいで、ここらで返しておかないと後が怖いことになる、って言ってたから」
……どういう借りなんでしょうか?
凛ちゃんの家族、色々と謎ですね。
「さすがに交通費はかかるけど……それ以外は全部タダよ。どう?」
「そうですね……」
これは、ひょっとして良い機会なのでは?
みんなと一緒に遊ぶことになれば、兄さんにアプローチできます。
それに、うまいことチャンスを見つけて、兄さんと明日香さんを二人きりにして、明日香さんの背中を押すこともできます。
私にも。
明日香さんにも。
決して悪い話ではないはず。
それを除いても、夏休みに海で遊ぶというのはとても魅力的な話です。
「ぜひ参加したいですっ!」
「決まりね」
「あっ、ちょっと待ってください。まだ兄さんに聞いてないので……あとで、折り返し電話しますね」
「そこまで急ぎじゃないから、学校でも構わないけど? あ、それと、天道先輩と真白ちゃんにも聞いてくれない? 叔父さんに話を通したりで、ちょっとやることがあって」
「はい、構いませんよ。あっ、せっかくだから、小鳥遊先輩も誘ってみましょうか?」
「結衣が構わないのなら、私は問題ないわ」
「じゃあ、参加メンバーは凛ちゃんと私。兄さん。明日香さんに真白ちゃんに小鳥遊先輩ですね!」
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