表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/300

178話 妹と二人きりの夜

 ファミレスで夕飯を食べて……ちなみに、安くておいしいサイゼにした……みんなと別れて、結衣と一緒に家に帰る。


「ただいま」

「おかえりなさい」


 俺がそう言うと、結衣が応えてくれる。


 結衣がそう言うのは、ちょっとおかしいんだけど……

 でも、誰かに『おかえり』って言ってもらえるのは、いいもんだな。


「お風呂の用意してきますね」

「俺がやるよ」

「兄さんはゆっくりしててください。慣れないことばかりで、今日は疲れたでしょう?」

「それを言うなら、結衣も疲れただろ?」

「私はまだまだ余裕です。それに、兄さんは雑なところがあるので、準備は任せられません」

「ひどいこと言うな」

「事実じゃないですか。この前も、軽く掃除をすることなく、いきなりお湯を張ろうとしてましたよね?」

「……キオクニゴザイマセン」

「ここに証拠の写真がありますが」

「なんでそんなもの持ってんの!?」


 妹の用意周到っぷりが半端ない。


「冗談ですよ。そんなもの、用意してるわけないじゃないですか」

「ホントに冗談なのか……?」

「……」

「怖いからそこで黙らないでくれるかな!?」


 そんなこんなありつつ……


 結衣が風呂の用意をして、その間、俺はリビングでのんびりする。

 少しして結衣が戻ってきた。


「おつかれ」

「三千円になります」

「金とるの!?」

「妹が準備したお風呂は高いんです」


 字面だけ見ると、なんかいかがわしい感じがするな。


「お湯がいっぱいになるまで、10分くらいはかかるから、それまでは待ってくださいね」

「了解。って、俺が先に入っていいのか?」

「構いませんよ。兄さん、今日は疲れたでしょう? お風呂に入って、ゆっくりしてください」

「それを言うなら、結衣も疲れたんじゃないか?」

「まあ、それもそうですが……お風呂をちょっと我慢するくらいで、どうにかなるわけでもないので。まずは、兄さんにゆっくりしてもらいたいんです」

「献身具合が半端ないな。結衣は、良い嫁さんになるぞ」

「ふぇっ!?」


 火が点いたように、ボッと結衣が赤くなる。


「えっ、いや、その……あ、ありがとうございます」

「あ、と……」


 少し前に、結衣から告白されたばかりで……

 そんな俺から、良い嫁さんになるとか、そんなことを言われたら当然意識してしまうわけで……


 自分の迂闊な発言を呪う。

 どうして、こう、余計なことを言ってしまうのか?

 というか、何も考えないで口を開いているせいか?

 それとも……意識していないから?


 どちらにしろ、今の発言はよろしくない。

 あの時のことを意識してしまい、微妙な空気になってしまう。


「……」

「……」

「あの……に、兄さん」

「な、なんだ?」

「その、えっと……う、うれしいです」

「えっ」

「ですから、その……良いお嫁さんになる、って言ってくれて……うれしいです」

「そ、そっか」

「……でも、兄さん以外の相手はイヤですよ?」

「うぐっ」

「兄さんとなら……だ、大歓迎です♪」


 恥じらいながらも、うれしそうな顔をする結衣。

 正直に言うと、かわいい。


 今だけは、結衣は妹ではなくて、一人の女の子に見えた。


「ぐいぐい来るな……」

「言ったじゃないですか。私、ただ待っているつもりはありませんよ……って」

「それはそうなんだけど」

「私の方を見てもらえるように、がんばりますからねっ」


 この勢いに呑まれて、そのまま流されてしまうような気が……?


 って、そんなことはいけない。

 断るにしろ受け入れるにしろ、きちんと自分で考えて、自分で答えを出さないと。


「話は戻るけど、風呂は結衣が先でいいぞ? 俺だって、今すぐに入らないと死ぬってわけじゃないし」

「そんなことを言われても……」

「結衣が俺のことを気遣ってくれるのはうれしいけどさ。なんだかんだで、俺は結衣の兄のわけで……妹を優先するのは当たり前だろ」

「そんな理由ですか」


 なぜか結衣が不機嫌そうになる。


「兄さんにとって、私はあくまでも『妹』なんですか?」

「あ、いや……そういう意味で言ったわけじゃないんだが」

「ふーん、そうですか」

「これからどうなるかわからないけどさ……今は、結衣の『兄』なんだから。これくらい、普通だろ?」

「むぅ……私は、今すぐにでもその先に行きたいんですが」

「それは勘弁してくれ……まだ、色々と混乱してるっていうか、気持ちがまとまってないんだ」

「わかっています。唐突、っていうのは私も自覚していますから……そうでなかったら、即決即断を求めていましたよ」


 きちんと手順を踏んでいた場合は、その場で答えを求められていたのか。

 ホント、ぐいぐい攻め込んでくるな。

 結衣は、こんな子じゃなかったと思うんだけど……

 本当の結衣は、こんな性格だったんだろうか?

 それとも、『何か』があって変わった?


 何が結衣を変えたんだろうか?

 気になるけれど、具体的な想像はできなかった。


「良いことを思いつきました」

「なんだ?」

「どちらが先で揉めるのなら、いっそのこと、い、いいい……いっひょにお風呂に入りまふぇんかっ!?」

「落ち着け、ものすごい勢いで噛んでるからな」

「うぅ……やっぱり、恥ずかしいです……」


 安心した。

 やっぱり、結衣は結衣だ。


「いくらなんでも、そこまで体を張ろうとするな。やりすぎだ」

「迷惑ですか……?」

「じゃなくて……」


 そこまでぐいぐい来られたら、本当に落とされてしまいそうで困る。


「……そういうことは、本物になってからだろう?」

「残念ですが、待つことにします……でも、諦めませんからね!」

「とりま、風呂に入ってこい」

「はい」

ブクマや評価が、毎日更新を続けるモチベーションになります。

少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、

ブクマや評価をしていただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ