175話 妹はドキドキします
<結衣視点>
カチャ、と浴室の扉が閉まる音が聞こえました。
それから、シャワーの音が響いて……
「っっっーーーーー!!!!!」
瞬間、私はベッドに飛び込むようにして、枕に顔を埋めました。
そのまま、ゴロゴロゴロゴロ!
悶えます。
羞恥に悶えます。
おもいきり身悶えます。
「あーーーうーーー!!!?」
告白……しちゃいました!
ついに、しちゃいました!
本当に、しちゃいました!
つい先程の光景が脳裏に思い浮かびます。
兄さん、好きです……って。
「ひゃあああああっ!!!?」
ゴロゴロゴロゴロ!
思い返す度に、とんでもなく恥ずかしくなり、ベッドの上を転がります。
こんな光景、兄さんに見せられません。
良いタイミングでシャワーを浴びてくれて、本当に助かりました。
「……兄さん」
今は、兄さんのことしか考えられません。
予想していたことですが、私の告白に、兄さんは驚いていました。
兄さんにとって、私はあくまでも『妹』。
女の子とは見られていなかったんでしょう。
そのことを考えると、少し凹んでしまいます。
でも、兄さんは私の告白を受け止めてくれた。
すぐに答えは出せないけど、きちんと考える、って……
真剣に考えてくれた。
すごくうれしいです。
兄さんは、やっぱり優しいです。
「だから、好きなんですよ♪」
告白をして、気分が浮ついているのかもしれません。
兄さんのことを考えると、胸がぽかぽかします。
勝手にニヤニヤしてしまい、笑みが止められません。
まだ、OKの返事もらったわけでもないのに……
でもでも、返事を保留っていうことは、まだ見込みはあるっていうことですよね?
限りなく低いかもしれませんが、勝機はありますよね?
もしかしたら。
ひょっとしたら。
兄さんの『本物』の彼女に……
「にゃあにゃあにゃあああああっ!!!」
その時を想像してしまい、私の顔は、ぼっと沸騰します。
そして、再びゴロゴロ。
もうダメです。
告白できただけで、幸せです。
私、このまま死んでしまいそうです。
「って……いえいえ、むしろ、勝負はこれからでしょう! 落ち着いて、落ち着きましょう、私」
7割近い確率でなかったことにされると思っていただけに、『保留』という結果はうれしい限りですが……
そこで満足してはいけません。
この先に進むために……
兄さんの好感度を稼がないといけません!
「……自分でいっておいてなんですが、ゲームみたいですね」
兄さん攻略ゲーム。
兄さんの好感度を上げて、好き、って言ってもらいましょう。
なにそのゲーム。
最高ですねっ!!!
絶対に買います。
店舗ごとに予約して、保存、布教用に三つまで買います!
って、いけません。
また思考が暴走してしまいました。
兄さんのことになると、どうも、冷静でいられませんね。
これも妹の性でしょうか。
「今の私は、ようやくスタート地点に立ったようなもの。勝負はこれから、ですっ!」
ぐっ、と拳を握り、気合を入れます。
やりますよ、私!
絶対に、兄さんを振り向かせてみせます!!!
「えいえいっ、おーーー!!!」
「なにしてんだ?」
「ぴゃあああああっ!!!?」
ばっ! と跳ね起きれば、兄さんの姿が。
男の人、シャワーの時間が短すぎませんかね!?
「えっと、これは、その……」
「結衣……大丈夫か? 病院、行くか?」
「その優しさが辛いです!?」
「俺は、いつでも結衣の味方だからな?」
「慈愛に満ちた眼差しはやめてくださいいいいいっ!!!」
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