169話 妹とラブホ探検
「にしても……」
軽く室内を見回す。
「意外というか、わりと普通の部屋なんだな」
目を引くのは、大きいサイズのベッド。
二人で寝ても、まだ余りそうなくらい広い。
クイーンサイズ? キングサイズ?
ベッドだけじゃなくて、ソファーにテーブル。
あと、テレビに冷蔵庫もあって、普通のホテルというような感じだ。
「おっ、ゲームもあるのか。対戦しようぜ。スマシスやろう。場外までふっとばしてやんよ」
「子供みたいに目を輝かせないでください。それよりも、今は探検です」
「どんだけラブホに興味あるんだ?」
「ななな、ないですよ! 興味なんてないですからね!? 私がえっちな女の子みたいな言い方、しないでくださいっ」
「いや、でも……」
「これは社会勉強なんです! こういう機会は、なかなかないですからね。仕方なくしているんです? 仕方なくですからね?」
とんだ社会勉強もあったものだ。
まあ、興味がないというと、ウソになる。
結衣に続いて、引き続き部屋を見て回る。
「……なんか、やたらティッシュが多いな?」
「そうですね。あちこちにあります。なんででしょうか?」
「さあ?」
「花粉症対策?」
「今、夏ですよ」
「なら、いったい……あっ」
「わかったんですか?」
「……いや、わからない」
「紛らわしい真似はしないでください」
ホント言うと、大体の用途は理解したんだけど……
そのまま口にすると、『兄さん、どうしてそんなこと知っているんですか?』と、藪蛇をつつくことになりかねないので、黙っておいた。
「何かおもしろいもんは……?」
引き続き、部屋を探索する。
「兄さん、兄さん」
「ん、どうした?」
「こっちにお風呂がありますよ」
「まあ、風呂くらいあるだろ」
「でも、変ですよ?」
「変?」
言われて奥に移動すると……
「ほら、壁がガラスになっています」
なんということでしょう。
そこには、中が透けて見える浴室が!
「なんでガラス張りになっているんでしょうね?」
不思議そうにしながら、結衣は、コンコンとガラスを叩いた。
「これ、強度大丈夫なんでしょうか?」
「気にするところ、そこなのか……?」
「あと、これじゃあ見えてしまうじゃないですか。壁の意味、なくありません?」
「あー……」
壁の意味がないことに意味があるというか……
透けて見えるところにロマンを感じるというか……
こういうところを見ると、ここはラブホなんだなあ、って思う。
「兄さん。どうして納得顔なんですか?」
「え?」
「もしかして、ガラス張りの理由、知っているんですか?」
「知ってるというか、想像つくというか……」
「そうなんですか? なら、教えてください」
「えぇ!?」
妹からラブホの風呂がガラス張りの理由を求められる。
これ、どんなシチュエーションだよ!?
結衣はエロい思考につながらないらしく、興味津々という顔を向けてくる。
やめて。
そんな顔を向けないで。
なんだか、俺がものすごく汚れているような気分になるんですが。
「兄さん、教えてください」
「えっと……」
「もしかして、知らないんですか?」
「……」
「知っているんですよね? 教えてくれてもいいじゃないですか。意地悪しないでください」
「……エロいから」
「え?」
「いや、ほら……ガラス張りだと、色々と……っていうか、全部見えるじゃん? とてもエロいわけで……だから、ガラス張りなんじゃないのかなー……なんて」
「……」
ピシリ、と結衣が石化したように硬直した。
やはりというか、驚いているらしい。
ただ、変化はそれくらいで、後は普通だ。
意外と耐性があったか?
なんて思ったのは束の間。
結衣の顔が少しずつ赤くなり……
やがて、耳までりんごのように染まる。
たぶん、俺が言った光景を想像したんだろうなあ。
「結衣のエッチ!」
「私のセリフです!!!」
ブクマや評価が、毎日更新を続けるモチベーションになります。
少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、
ブクマや評価をしていただけるとうれしいです。