167話 幕間・その2
<第三者視点>
小鳥遊はやては迷い、悩んでいた。
宗一と結衣のデートを見て……
二人は恋人ではないのではないか? という疑問は、すっかり消えていた。
結衣の宗一に対する強い信頼、深い愛情を見せつけられた。
宗一の感情は、最初はよくわからなかったけれど……
よくよく観察してみれば、結衣のことをとても大事に想っていることがわかった。
例えば、一緒に歩く時。
結衣の歩幅に合わせて、歩く速度を落としている。
例えば、買い物をした時。
そうすることが当たり前のように、負担をかけないように、結衣の荷物を持っている。
いずれもさりげなく、ごくごく自然な動作なため、見逃してしまいがちではあるが……
一度、そういう仕草に気づいたら、後は簡単だ。
宗一が結衣を思いやる行動が次々と見えてくる。
思うに、宗一は考えて行動するようなタイプではないのだろう。
大事な人のために、自然と体が動いてしまうような。
大事な人のために、優しくすることが当たり前のような。
そんな人なのだ。
だから、遠くから見ているだけでは、宗一の想いに気づかなかったのかもしれない。
しかし、こうして二人がデートをするところを見れば……
一目瞭然だった。
「ふぅ」
はやてはため息をこぼした。
疲れたような、諦めたような、そんなため息。
心の中では、ほとんど負けを認めていた。
宗一と結衣の仲に何も問題はない。
これを偽物と断定するなら、世の中、偽物だらけになってしまう。
しかし。
素直に敗北を認められなかった。
受け入れることができなかった。
わかっているけれど……悔しいのだ。
女が女に恋をする。おかしな話だ。
しかし、はやては本気だった。
バカバカしいと、他人から笑われるかもしれない。
おかしな目で見られるかもしれない。
それでも。
好きになってしまったのだ。
好きだから、止まることができないのだ。
頭で理解しているものの、心は受け入れてくれない。
もしかしたら、という思いが湧き上がり、諦めきれないでいた。
「情けないものだ」
こうなったら、最後まで見届けよう。
はやては覚悟を決めて、二人の後をつけた。
――――――――――
<第三者視点>
おや? と、はやては疑問を抱いた。
宗一と結衣がショッピングセンターを後にしたのだ。
日は暮れ始めている。
もうデートは終わりだろうか?
そんなことを思うが、二人は駅とは違う方向に移動する。
デートは地元に戻るまで。
そんな取り決めを思い出した。
となれば、まだデートは続いているのだろう。
おそらく、夕食をとるのではないか?
夜景などが見えるレストランで、優雅に食事を……
「それは夢がすぎるか」
苦笑しつつ、後をつける。
二人は繁華街に移動する。
しかし、予想通りなのはここまでだ。
ファミリーレストランなどを素通りして、二人は繁華街の奥に歩く。
その先にあるのは……
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