165話 妹とデートをしよう進展編・7
<結衣視点>
少しして、すぅすぅと寝息が聞こえてきました。
兄さんとしては、ちょっとだけ休むつもりだったのかもしれませんが……
どうやら、本格的に寝てしまったみたいです。
「兄さん♪」
私の膝で眠る兄さんは、子供みたいでかわいいです。
あどけない寝顔。
膝に感じる心地いい重さ。
どれも愛しいです。
「それにしても……疲れていたんでしょうか?」
こんなにすぐに眠ってしまうなんて。
先日は、ほぼ徹夜であれこれと話して……
それに、私の都合で色々と振り回してしまって……
そのせい、なんでしょうか?
私のせいで兄さんが……
申し訳ない気分になります。
でも……うれしくもありました。
こんなこと考えるなんて、ひどい妹かもしれませんが……
兄さんが私のためにがんばってくれている。
大事にされていることが伝わってきて、とてもうれしいです。
「ん……」
そっと、兄さんの顔を撫でました。
兄さんは気持ちよさそうな顔をします。
ホント、子供みたいな反応です。
兄さんかわいい♪
胸がぽかぽかします。
心がきゅんきゅんと刺激されます。
これが母性本能?
いえ、よくわかりませんけどね。
適当言ってみました。
でも……
兄さんのことが愛しいと思う気持ちは本物で……
この時間がずっとずっと続けばいい。
ついつい、そんなことを思ってしまいます。
「ずっと、なんてことはないんですけどね」
今は、兄さんと『恋人』でいられますが……
それがいつまで続くのか?
どこかで終わりは来ます。
本物になるのか。
それとも、偽物のまま終わるのか。
それはわかりませんが……
「……できるなら、兄さんと本物の関係に……」
決意はしたつもりですが……
いざ、その時が近づいてくると、情けないことに怯えてしまいます。
本当にうまくいくのか?
余計なことはしないで、今のままでいいんじゃないか?
そんなことばかり考えてしまいます。
「でも」
ここで逃げるわけにはいきません。
今日、必ず、兄さんに……告白してみせます。
「……ん?」
「ひゃっ!?」
もぞもぞと兄さんの頭が動きました。
なんていうタイミングで目が覚めるんですか。
思わず、変な声をあげてしまったじゃないですか。
ひょっとして、狙ってません?
「あれ……?」
「起きましたか、兄さん」
「……あっ、わ、悪い!」
「そのままでいいですよ」
自分が寝ていたらしいと気がついた兄さんは、慌てて起きようとしましたが、そっと頭に手を添えて、留めました。
そのまま、兄さんの頭をなでなで。
ふふっ♪
「ぜんぜん苦ではないので、私はこのままで構いませんよ」
「そう、なのか?」
「はい。兄さんのかわいい寝顔を、特等席で見ることもできたので」
「やめてくれ……」
「照れてます?」
「照れるだろ、そんなこと言われたら」
「ふふっ」
兄さんを照れさせるために、わざと言ってるんですよ?
「……ひょっとして、わざと言ってないか?」
「そ、そんなことありませんよ?」
「目が泳いでるぞ」
こんな時だけ鋭いですね、兄さんは。
「もう少し、このままでいてください」
「……結衣がいいなら」
「いつまでもいいですよ」
「閉館時間になっても?」
「帰れなくなっちゃいますね」
「それはそれで」
「アリなんですか?」
「楽しそうじゃないか?」
「ふふっ、そうですね」
また眠くなってきたのか、兄さんが大きなあくびをして……
私は、そんな兄さんを優しく撫でます。
ホント……こんな時間がずっと続いたらいいのに。
今日、何度目になるかわからないことを、ついつい考えてしまうのでした。
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