161話 妹とデートをしよう進展編・4
<結衣視点>
というわけで、CDショップにやってきました。
棚にずらりと並んだCD。
それと、ライブのブルーレイや映画なども並んでいます。
さらにさらに、レコードも取り扱っていました。
「あれ、レコードだよな? なんであんなものがあるんだ?」
「最近、じわじわと人気が出てきているみたいですよ」
「ほー。なら買ってみるか?」
「ウチに、レコードプレイヤーなんてありませんからね?」
「残念。CDと音が違うか、確かめてみたかったんだが」
「あ、それは私も気になるかも」
適当に商品を見ているだけですが、話題は尽きません。
兄さんと一緒だから、ですね。
兄さんとお話するなら、一晩中でもいけます。
いえ、2日でも……いえいえ、一週間通しでもいけます。
それくらい、兄さんとは色々なことを話したいと思っているんですよ?
そこのところ、わかってくださいね?
……なんてことを言いたいですが、口にできません。
だって、恥ずかしいじゃないですか。
甘えん坊の妹と思われたら、なかなか厳しいです。
それだけならまだしも、私の本当の想いが知られたら……
「……まあ、それは平気ですね。兄さんですし」
「よくわからんが、バカにされてないか?」
「気のせいですよ」
「そう言えば、ごまかせると思ってないか!?」
「ソンナコトアリマセンヨー」
「めっちゃ棒読み!?」
「さっ、兄さん。奥の方へ行ってみましょう」
「最後は力技だ!」
ぐいぐいと兄さんの背中を押して、店内を見て回ります。
最新のCDから古いレコードまで。
本当に色々なものがあって、見ているだけで飽きません。
と、試聴コーナーを見つけました。
ヘッドホンとイヤホンの両方が設置されています。
「イヤホンもあるなんて珍しいな」
「これ、新製品ですね。アピールも兼ねて置いているんじゃないですか?」
その時、閃きました。
「……兄さん、一緒に聴きませんか?」
「え?」
「ほら、こうして……」
兄さんと肩をぴったりとくっつけて……
それから、一つのイヤホンを二人でつけます。
「こ、これは……」
「えへへ……こ、こういうの、恋人らしいですよね」
二人で一緒に音楽を聴く……最高のシチュエーションです♪
触れ合う肩と肩……
音楽だけじゃなくて、私の心臓の鼓動も聴こえてしまいそうです。
兄さん……私、こんなにドキドキしているんですからね?
全部、兄さんのせいですよ?
「これ、なんだろうな……さっきより密着してないのに、妙に恥ずかしい」
「み、密着とか言わないでください」
「顔が近いから……なのか?」
「そう、かもしれませんね」
一つのイヤホンを二人で使っているから、自然と顔の距離が縮まります。
そっと視線を動かせば、すぐ目の前に兄さんの顔が。
視線と視線がぶつかります。
「っ」
恥ずかしくなり、逸らしてしまいました。
でも、それではいけません。
今日は、私と兄さんのイチャイチャを見せつけないといけません。
だから、もっと恋人らしく……
甘い雰囲気をたっぷりと出さないといけません。
すーはーすーはーと息を吸って吐いて……
気持ちを落ち着けたところで、視線を兄さんに戻しました。
「……」
「……」
兄さんは、まだこちらを見ていて……
再び、視線が重なります。
言葉はありません。
イヤホンから流れる音楽が私たちの間に響きます。
そっと、兄さんが微笑みました。
私も笑顔を返します。
ゆらりゆらりと、穏やかな並に揺られているような心地よさ。
何も言葉にしなくても、全てが伝わっているような感覚。
ずっと、このままでいたいです。
そんなことを思うくらい、とても良い雰囲気でした。
今なら……
私の本当の想いを……
「あっ」
不意に、音楽が途切れました。
再生が終了してしまったみたいです。
それと同時に、夢心地の気分も覚めて、急に恥ずかしくなってきます。
「に、兄さん、顔が近いですよ!」
「そ、それは仕方ないだろ」
「そうかもしれませんけど、よ、喜んでませんか?」
「おい、人を変態みたいに言うな」
「似たようなものじゃないですか」
「おいいい!?」
結局、いつもの私と兄さんに戻ってしまいました。
もうちょっと、あの優しくて甘い雰囲気に浸っていたかったです。
そうすれば……
勇気が出たかもしれないから。
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