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159話 妹とデートをしよう進展編・2

 妹さまのご機嫌が斜めだ。

 なんとかしないと。


 ……なんて思っていたら。


「さ、兄さん。行きましょう」


 今までのやりとりなんか忘れたとばかりに、結衣はコロリと表情を変えて、笑顔で俺の手を引く。

 怒ったわけじゃないのか……?

 尋ねてみたい気がするが、それをしたら、本当に怒らせてしまうような気がする。

 『やっぱり、兄さんは女心がわからないんですね』とかなんとか言われて。


 怒っていないならそれでいいか。うん。


「どこから見て回る? 適当にフラフラするか?」

「あっ、私、本屋に行きたいです」

「了解。確か、二階に入ってたよな」


 エスカレーターを利用して二階へ。

 さらに歩くこと少し、本屋が見えてきた。


「ここの本屋、ほとんど来たことなかったけど……意外とでかいな」


 他の店の三軒分くらいのスペースを有している。


「品揃えも豊富なんですよ」

「たまに来てるのか?」

「そうですね。ウチの近くの本屋にないものがありますし、たまに利用していますよ」


 店に入ると、まず、新刊や話題の本が並べられているスペースが目に入る。

 その奥に、自分の背より高い棚がずらりと並んでいる。

 手前に、高いところの本を取るための踏み台が置かれていた。


「古本屋みたいだな」

「スペースが限られていますからね。この店は、おしゃれよりも物量を優先しているんですよ」


 なるほど、と納得しつつ、店内を見て回る。

 普通の小説は読まないので、漫画コーナーへ。

 一般的なラインナップは完全に揃えられていた。

 それだけではなくて、マニアックな漫画も完備してる。


「おーっ、いいな、この店。ないものを探すにはぴったりだ」

「あの……兄さん?」


 なぜか、結衣が呆れたような視線を向けてきた。


「普通に感心してるように見えますが……今日の本当の目的、忘れたんですか?」

「……あ」


 いかん。

 頭からすっぽりと抜け落ちていた。


「はぁ……」

「わ、悪い。謝るから、その視線をやめてくれ」

「もう、しっかりしてください」

「でも、こんなところで、どうイチャつくんだ?」


 ちょっと変わった、品揃えが豊富な本屋。

 恋人の憩いの間とは言えない。


「わかりませんか?」

「わからん」

「なら、答え合わせです」


 結衣が、ちらりと本棚に視線をやる。


「ここの本屋、棚が大きいでしょう?」

「だな。古本屋みたいに、天井近くまであるし」

「これだけの大きい棚なら、遠くから見ると、影に隠れて私たちのことはよく見えません」

「見えないんじゃ意味がないような?」

「完全に見えなくなるわけじゃありません。少しは見えますよ?」

「えっと……つまり?」

「こういうことですよ」


 答えを求めると……

 えいっ、とかわいらしい声をあげて、結衣が抱きついてきた。


「ゆ、結衣っ!?」

「お、落ち着いてください」

「いや、でも、これは……」


 結衣の顔がすぐ目の前に。

 それに加えて、女の子の柔らかい体の感触が……

 二つの膨らみが潰れて……やばいやばい、意識するな!


「こうすると、離れたところで見てるみんなは、私たちが抱きついてイチャイチャしてるように見えます。実際は、ただくっついているだけですが……棚が影になっているので、細かいところは見えません。良い作戦だと思いません?」

「な、なるほど。でも、店内でこれは……やりすぎじゃないか?」

「店内だからこそ、ですよ。いつでもどこでもイチャイチャする、という印象を植え付けることができます」


 色々と考えてるんだな。

 さすがだ、と感心してしまう。


「し、しばらくこのままでいますよ」

「しばらくって……ど、どれくらいだ?」

「五分くらい、でしょうか」


 五分も……

 これは、かなり恥ずかしいぞ。


 結衣は、ただくっついてるだけ、とは言うが……

 抱きついていることに変わりないわけで……

 これも、イチャイチャしてることに変わりないような?


 ああ、ダメだ。

 突然のことに驚いて、うまく頭が回らない。


「……」

「……」

「兄さん」

「うん?」

「どうして無言なんですか」

「結衣こそ」

「わ、私は、ほら……恥ずかしいとか、照れているとか、そんなことはありませんからね? 兄さんとくっついているだけで幸せとか、そんなこと思ってませんし……本当は、今すぐに離れたいくらいなんですから!」

「俺は……このままでもいいけどな」

「えっ!?」

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