151話 妹と考えた作戦は?
「眠い……」
「眠いですね……」
兄妹揃ってあくびをこぼしながら、学校に向かう。
太陽が眩しい。
青い空が黄色く見える。
完全な寝不足だ。
ちょっとでも気を抜いたら、そのまま寝てしまいそうな気がする。
「……すやぁ」
「結衣!? 歩いたまま寝るな!?」
「ふぁ!?」
びくっ、と結衣が震えて目を開けた。
「す、すいません……昨夜は遅かったから、つい」
「悪い。遅くまで付き合わせたせいだよな」
「兄さんのせいじゃありませんよ。私の問題ですし……むしろ、こんなに真剣になってくれてうれしいです。そ、その……ありがとう、ございます」
「礼なんていいさ。俺は結衣の彼氏で、兄貴なんだからな」
結衣の頭を撫でると、猫がするように、目を細くした。
喜んでいる?
「はよー」
「おはようございます」
「おっはよー!」
明日香、凛ちゃん、真白ちゃんと合流した。
これからのことについて、最終的な確認を行うために、わざわざ足を運んでもらったというわけだ。
朝から申し訳ない。
特に真白ちゃんは、違う学校なのに……
とは思うものの、ここで謝るのは何か違う。
今は甘えることにして……後で、たくさんお礼をしよう。
「それで、方針は決まったわけ?」
明日香が尋ねてきた。
「ああ、ひとまずな」
「小難しいことは考えないで、ストレートにいくことにしました」
「っていうと?」
「今まで以上に、恋人らしいところを見せつける!」
「キスするの?」
「しないしない」
「しないんですか……サプライズで、実は、でもよかったんですが……」
なぜ結衣が残念そうに?
「そんなことでいいんですか? キスするのが一番だと思いますが」
凛ちゃんの疑問も最もだ。
が、さすがにそこまでやるのは、色々と無理がある。
「キス一つではい解決、ってことにはならないと思うんだよな。それで済むなら、そもそもこんなことになってないと思うし」
「なので、キスでごまかすんじゃなくて、私と兄さんの仲は誰も入りこむことができないんですよ、というところを見せつけないといけません」
「ふむ。一理あるわね。結衣にしては考えているじゃない」
「何か引っかかる言い方ですね……」
「先輩のことしか考えてない結衣にしては、考えているじゃない」
「言い直されました!?」
朝からコントを披露しないでほしい。
ツッコミいれるほどの元気は残ってないぞ。
「恋人らしいことって、何するのー?」
「良い質問だ、真白ちゃん」
「お兄ちゃんも結衣お姉ちゃんも、らしいことはもうしてるんじゃないの?」
「あっ、そこは興味あるわね」
「同じく。どうするんですか?」
明日香と凛ちゃんも話に乗っかってきた。
「まずは、デートするところを見せつける。この時、いつも以上にイチャイチャするわけだな。普段は学校だから抑えていた、って言い訳をつければ完璧だ」
「ふんふん、それで? 最後にキスするわけ?」
「しない」
「そんなんで平気なの?」
「インパクトに欠けますね」
「ただイチャイチャされてもねー」
三人揃って難しそうな顔をした。
だが、そんな反応が返ってくることは想定済みだ。
昨夜、結衣とあれこれ話し合い……
完璧な作戦を思いついたからな。
「キスはしませんよ。でも、大丈夫です。それ以上に、インパクトのあることをすればいいんですから」
「キス以上、って……」
「……結衣、大人の階段を登る?」
「ち、ちちち、違います!?」
結衣が赤くなる。
「あっ、いえ、ある意味ちがわないような……?」
「「「えっ!!!?」」」
なにかありますよ、と匂わせるような発言に、三人が目を大きくした。
って、そのセリフだと完全に誤解させてしまう。
ややこしいことになる前に説明しておかないと。
「別に、変なことをするわけじゃないからな? 明日香が今考えたようなことは、絶対違うからな?」
「あーら、あたしがナニを考えてるのかわかっているの?」
「お前のことだから、ろくでもないことだろ」
「こういう話は、女の子はみんな大好物なの」
そんな好物捨ててしまえ。
「結局、どうするんですか?」
「まず、さっきも言ったとおり、デートするところを見せつける。そこで、見せつける」
「ふむふむ」
「でも、それだけじゃ弱いよねー」
「真白ちゃんの言う通りだ。だから……」
この続きを口にするのは、ちょっとためらわれる。
が、この作戦の良し悪しを判断してもらうためにも、最後まで話して、みんなの意見を聞きたい。
「デートは、あくまでも前座だ」
「本命というか、本当の狙いは最後にあるんですよ」
「おー、なんか秘密作戦みたいでかっこいい」
「それで、何を考えてるわけ?」
「デートの最後……結衣とラブホに入る」