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144話 妹の親友が考える作戦

「はいはい、拗ねないの」

「す、拗ねてなんかいませんよ!? 変なこと言わないでください、凛ちゃん。兄さんに、ご、誤解されるじゃないですか!」

「むしろ、それは望むところじゃないの?」

「あっ、いえ……め、面倒な女の子と思われたくないんです」

「その発想がすでに面倒な気もするけれど……まあいいわ」


 相変わらず、結衣と凛ちゃんは仲がいいな。

 ただ、拗ねるとか、よくわからない話をしているところは謎だが。


「では、次は私の番ですね」


 凛ちゃんが、自信たっぷりな顔をした。

 ちょっと期待してしまう。

 いたずら心のある小悪魔敵な後輩だけど、そのポテンシャルはかなり高い。

 凛ちゃんならば、この状況を一発で解決するような、すばらしいアイディアを出してくれるかもしれない。

 そんな期待をしてしまう。


「私が思うに、今回の問題は先輩と結衣にあるわけではなくて、むしろ逆。相手の方……小鳥遊先輩にあるわけです」

「小鳥遊さんに? 何か問題があるようには見えなかったが……?」

「彼氏持ちの結衣に告白する時点で問題ですよ」


 言われてみれば、問題のような気がしてきた。

 普通なら、彼氏がいる時点で諦めるからな。


 まあ、世の中には略奪恋愛とか寝取りとか、色々あるらしいが。

 俺たちはまだ学生で、子供だ。

 そんな領域に踏み込むなんて、まだまだ早い。


「軽く会っただけなので私見が混じりますが……小鳥遊先輩は、自分が正しいと思うことは世の中においても正しいと錯覚するタイプですね。つまり、間違ったことをしていないという認識なので、立ち止まることがない。迷うこともありません。非常に厄介なタイプです」

「ああ、それ、なんとなくわかります」

「結衣も同意見?」

「凛ちゃんほど極端ではありませんが……先輩は、猪突猛進というか、周りが見えていない感がありました」


 それでも、私たちの関係に疑問を持つ辺り、鋭くはありますが。

 ……と、結衣が俺にだけ聞こえる声でそう付け加えた。


「私正しい、私最高、私天才、っていうめんどくさい人ですね」


 言葉に悪意が感じられるんだが……

 凛ちゃんのように、ちょっとひねくれた子からすると、小鳥遊さんとの相性は悪いのかもしれないな。

 こんなことを口にしたら色々と絡まれそうなので、黙っておく。


「そういう人の対処法は一つ。その人の価値観をおもいきり歪ませてやることです」

「どういうことですか?」

「簡単なことよ。自分がやっていること……今回の場合は、結衣に告白することね。それが間違いであることを自覚させてあげるの」

「なるほど」

「話を聞く限り、『正しくあろう』とする人みたいだから。間違ったことをしていると自覚すれば、それ以上は何もできなくなるわ」

「でも、そんなことできるんですか? なかなか難しそうな人でしたけど……」

「できるわ」


 断言する凛ちゃん。

 その自信はどこから来るのだろうか?


 自分が正しいと信じてる人ほど、その価値観を覆すことは難しい。

 外野が何か言っても、『間違った言葉』として処理されて、心に届かないからだ。

 人間、自分が信じるものと異なる言葉は、なかなか受け入れられないものだ。


 凛ちゃんは、いったい、どんな方法を使うのだろうか?


「まず薬を用意します」

「薬?」

「自白剤ですね」

「こらこらこら」


 一気に話が怪しくなり、ストップをかける。


「何をするつもり?」

「イヤですね、冗談ですよ。普通の女子高生が自白剤なんて手に入れられるわけないじゃないですか」

「わかりにくい冗談はやめてくれ……」


 凛ちゃんの場合、マジに聞こえるから困る。


「場を和ます、ちょっとした冗談ですよ」


 むしろ、緊張したような気がするが。


「こほん。では、気を取り直して……小鳥遊先輩のような方は、当事者の意見を聞きません。先輩や結衣が何を言っても、一度疑いを持った以上、受け入れないでしょう。しかし、それが当事者以外の言葉なら?」

「それって……凛ちゃん、っていうことですか?」

「結衣、正解。私、明日香先輩、真白ちゃん。みんなで、先輩と結衣の関係について証言するんです。二人は正真正銘の恋人ですよ、って」

「そんなことで大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫よ。同級生、上級生、他校の生徒まで揃って証言されたら、どれだけ頑なな頭の持ち主でも、多少は心が揺らぐわ。大人ならそうはいかないかもしれないけど、なんだかんだで、私たちはまだ子供だもの。言葉で簡単に揺れ動いてしまうような心を持っているの」


 そんな言い方をする凛ちゃんは、すでに大人の域に達してるような気がするんだけど。


「具体的にどうするんですか?」

「あることないこと吹き込むわ」

「あ、あることないこと……?」

「先輩と結衣が、いかにお似合いのカップルで、普段から砂糖たっぷりのように甘いイチャイチャ生活を過ごしているかとか……そういうことを吹き込むの。本人たちが言っても信じてもらえないだろうけど、他人から言われると、なかなかに効くものよ」

「に、兄さんとイチャイチャの話を……ぐ、具体的には?」

「そうね……」


 顎に手をやり、考える仕草を取る凛ちゃん。

 心なしか、楽しそうに見える。


「まず、二人は一緒に住んでいることを教えないと。それから、毎日、一緒のベッドで寝ているの」

「一緒!?」

「結衣は先輩の腕枕で寝て、先輩は結衣を抱く枕にしているの」

「あわわわ……に、兄さんの腕枕なんて最高……ではなくて、すばらしい……ではなくて!? そ、それに私を抱き枕にしてしまうなんて……そんなことされたら、ど、どうなってしまうか……兄さんえっちです!」


 なんで俺が怒られるんだ!?


「登校する時は腕を組んで、休み時間の度に会いに行き、ハグを一回。ごはんはあーんで食べさせっこをして、放課後はらぶらぶデート」

「そ、そそそ、そんなことを言ってしまうんですか!? だ、大胆すぎませんか? ふぁ……想像したら、ドキドキしてきました」

「今の話を100倍くらい誇張したようなものを考えているわ」

「今の100倍!?」

「これだけの甘い話をされれば、さすがの小鳥遊先輩も二人の仲を認めざるをえないでしょう。考えを変えて、諦めるはずよ」

「あ、あのぉ……でも、そんな風に見られるというのは、ちょっと……いえ、かなり恥ずかしいんですけど……」

「我慢しなさい」

「ほ、本当にうまくいくんですか? うまくいかなかったら、ただ、恥ずかしい思いをするだけのような……」


 結衣と同意見だ。

 そんな話をされて失敗したら、特大の恥ずかしさだけが残ってしまう。


「そうね。失敗する可能性もあるわ。でも、それはそれでおもしろそうだから良し!」

「よくありませんよぉっ!!!」


 結衣の渾身のツッコミが炸裂するのだった。

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