１４２話 妹と一緒にする恋愛相談
「じゃまするわ」
「おじゃまします」
「おじゃましまーすっ！」
放課後。
明日香、凛ちゃん、真白ちゃんがウチに集まる。
一同大集合。
こんなにたくさん集まるなんて、久しぶりだな。
いつかの勉強会以来だろうか？
「やっほー、あなたが真白ちゃん？」
「そういうお姉さんは、明日香先輩？ それと、結衣お姉ちゃんのお友達の凛先輩？」
「あら。私のことを知っていたの？」
「はいっ！ 明日香先輩と凛先輩のことは、結衣お姉ちゃんから色々と聞いてたから」
「へえ、そうだったんだ」
「どんな話なの？」
「それは……」
「ま、真白ちゃん。そういうことを話すのは反則ですよ」
「ふぐっ」
結衣が慌てた様子で真白ちゃんの口をふさいだ。
「なんで？」
「なんでといわれても、その……恥ずかしいじゃないですか」
結衣のことだから、悪口なんて言ってないだろう。
むしろ、その逆。
これでもないかというくらいに褒めて、褒めて……
だから、そのことを本人に聞かれるのが恥ずかしいんだろうな。
「えー、あたし、結衣ちゃんの言葉が聞きたいなー」
「私も。日頃、結衣がどう思っているのか、とても興味があるわ」
二人は結衣が恥ずかしがっていることを理解してるらしく、ニヤニヤと笑っていた。
「えへへー、実はね」
「だから、ダメですってば！」
「むぐぐっ」
いきなり騒々しい時間が訪れる。
明日香と凛ちゃんは、真白ちゃんと顔を合わせるのがこれが初めてだけど……
どうやら、すぐに仲良くなったみたいだ。
よきかなよきかな。
――――――――――
場所をリビングに移して、キンキンに冷えた麦茶をみんなに配る。
「あーっ、麦茶おいしー……生き返るわ―……ぐでー」
「明日香、おっさんっぽいな」
「宗一、マイナス５０点」
「なんの点数だ！？」
「明日香ちゃんの好感度」
「なら、マイナスでいいや」
「いいの？ マイナス１００になると、爆弾が爆発するわよ。リアルに」
「こえぇよ！」
「今、マイナス９９点」
「臨界点！？」
「はいそこ。イチャイチャしてないで、そういうのは二人きりの時にしてくださいね」
凛ちゃんが冷静にツッコミをいれる。
いや、イチャついてたわけじゃないんだが……
「ちぇ、残念」
明日香は、なぜか、もっとしていたい、というような顔をした。
楽しんでいたのか……？
そういや、俺、明日香に告白されたんだよな……
いつの間にか、うやむやになってるけど……返事した方がいいのか？
でも、本人がいらない、って言ってるし……悩ましい問題だ。
「なに？」
「……いや、なんでもない」
まあいい。
明日香のことは後回しだ。
今は、結衣の問題を優先しないと。
そのために、わざわざみんなに集まってもらったわけだしな。
「今日はわざわざ集まってくれてありがと。特に真白ちゃん。なんの事情も知らないのに、来てくれて感謝してるよ」
「お兄ちゃんと結衣お姉ちゃんのためなら、例え火の中水の中こたつの中」
なにそのぬくい発言。
「でもでも、真白たちを集めて何をしたいの？ 婚約会見？」
「そういうことなら、あたしは全力で阻止しないとね」
「ムービー撮りますね」
「そんなわけあるか！ そこの二人、悪ノリすんなっ」
「えへへ……兄さんと……そ、それもいいかもしれませんね」
結衣さんも、悪ノリしないでくれませんか？
今日は、あなたのために、みんなを呼んだんだからね？
「え、えっと……事情を知らない真白ちゃんのために、改めて説明するが」
結衣が同姓に告白されたこと。
その相手に、俺たちの関係が疑われていること。
……などなど、一連の出来事を説明した。
「……と、いうわけなんだ」
「私としては、その……に、兄さん以外と付き合うなんて考えられませんし。私たちの仲を疑われることも心外ですし……このまま、というわけにはいきません」
「とはいえ、同姓から告白されるなんて思ってもなかったからさ。しかも、相手は一癖も二癖もありそうな相手。なかなか諦めてくれなさそう」
「どうすればいいか？ 頭を悩ませてしまいます」
「そこで、みんなの知恵を借りたい……っていうわけだ」
俺と結衣、揃って頭を下げた。
「おー、お兄ちゃんと結衣お姉ちゃん、息ぴったり」
「なにかしら？ これはアレかしら？ 見せつけてんの？」
「リア充爆発しろ」
「そういう感想なのか！？」
「あのー……こちらから頼むとはいえ、もっと真面目に考えてもらえると」
「冗談よ、冗談」
明日香が言うと本気にしか聞こえない。
……と思うものの、口にしたら厄介なことになること間違いないので、言葉にはしない。
「結衣お姉ちゃん、女の子に告白されたんだー……ほぅ、モテモテだねぇ」
「うれしくないですけどね」
「わかるよー。真白も、なんでかみんなにベタベタされるからねー」
それはたぶん、マスコット的な扱いをされてるんだろうな。
真白ちゃんは、そういう立ち位置だ。
「そういうことなら、真白にとっておきの作戦があるよ！」
