表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/300

127話 妹とプレゼント・2

<結衣視点>



 さらに数日が経った、ある日のこと……


「結衣、ちょっといいか?」

「はい、なんですか」


 自室でとある作業をしていた私は、ノックの音に気がついて、部屋の扉を開けました。

 扉の向こうには兄さんが。

 何やら、そわそわしています。


「悪いな。勉強の途中だったか?」

「いえ、て……なんでもありません」

「うん?」

「ほぼほぼ終わったことなので、気にしないでください。で、どうしたんですか?」

「あー……いざってなると、照れるな。これ」

「はい?」

「こっちの話だ。つまり……大事な話があるんだ」


 そう話す兄さんは、ちょっと赤くなっているみたいでした。


 大事な話……照れる……赤くなる……


 も、もしかして……告白!?

 ついに、ついについについに、私の想いが兄さんに届いたんですか!?

 フリではなくて、本物の恋人に……!


 なんて、そんなわけありませんよね。

 何度も夢で思い描いたことですが、それらしいフリはありませんし、イベントも起きていません。

 自分に都合の良いことを考えるのはやめにしましょう。

 現実に直面した時、ダメージが大きくなります。


 兄さんのことだから、今日の夕飯の話とか、あるいは学校に関連することとか、そんなことでしょう。


「今更、って思われるかもしれないけど、俺としては、どうしても無視できなくてさ。自己満足かもしれないが、やっておきたかったんだ」

「えっと……話が見えないんですけど?」

「つまり……はい、これ」


 兄さんは、とあるものを差し出してきました。


 手のひらサイズのケース。

 それは……指輪でした。


「え? ……え?」

「ずいぶん遅れたけど……誕生日、おめでとう」

「え? え? え? ……え?」


 私は混乱の極みに達します。

 これは夢? 夢ですよね? だって、こんなことありえません。

 私、まだ何も言っていないのに……


 あれ?

 でも、夢にしてはやけに鮮明な……

 あれ?


「結衣? どうした? やっぱ、今更って呆れてるか……?」

「い、いえ……呆れているというか、そんなことはなくて……え? 驚いているんですが……な、なんですか、これ?」

「昔のやり直しだよ。ほら、いつかの誕生日の時、結衣が指輪が欲しい、って言っただろ? でも、その時は買えなかったからさ……今更だけど、やり直しがしたくて」


 一拍置いて。


「えええええぇっ!!!?」


 ようやく目の前の現実を理解することができた私は、驚きの声をあげました。


 どうして!? どうして!? どうして!?

 なんで、兄さんが指輪のことを!?


「思い出したんですか……?」

「ああ……って、結衣は覚えてたのか?」

「そ、それはもう……大事なことですから」

「そっか、大事なことか……なら、やっぱり、思い出せてよかった」

「でも、どうやって? 兄さん、すっかり忘れていたじゃないですか」

「うっ、すまん」

「あ、責めるつもりはなくて……どうやって、思い出したんですか? ……もしかして、誰かから聞いたり?」

「いや、そんなことはないぞ?」


 なら、どうして?

 頭の上に疑問符を浮かべていると、兄さんは、サラリととんでもないことを口にします。


「思い出せたのは、結衣のことをずっと考えてたからかな」

「ふぇっ!!!?」

「この前、水族館で昔のことを話しただろ? あの時、思ったんだ。昔の失敗をそのままにしたくない、ちゃんと結衣を笑顔にしたい……ってな。それで、ここ最近、ずっと結衣のことについて考えてたんだ。朝も昼も夜も結衣のことばかり考えて……で、ようやく思い出すことができた」

「ひゃあああ……」


 そ、そそそ、そんな告白みたいなことを言わないでください!!!

 兄さんは、妹を萌え殺すつもりですか!?

 私の心臓はドキドキばくばくしていて、今にもどうにかなってしまいそうですよ!

 兄さんの妹たらし!!!


 あううう……でもでも、思い出してくれたことは本当にうれしいです。

 しかも、思い出しただけじゃなくて、指輪を買ってきてくれるなんて……


「って……ほ、本当に指輪を買ってしまうなんて……これ、高かったんじゃあ……?」


 宝石などはついていない、シンプルなタイプの指輪ですが……

 でも、とても洗練されたデザインで、簡単に手が出せるようなものではないと、素人目でも一目でわかります。

 こんなものを買ってしまうなんて……これ、いくらしたんでしょうか?


 思わず心配する私に、兄さんは笑ってみせます。


「まあ、多少はしたけどな」

「やっぱり……そんな無理をしなくても……」

「無理なんかじゃないさ」

「え?」

「大事な妹のためなんだ。無理に思うことじゃない」

「……兄さん……」


 兄さんに抱きつきたい衝動に駆られました。

 抱きついて、おもいきり甘えて、告白して……

 そんなことをしたくてしたくて、もうたまりませんでした。


 でも、今、そんなことをしてしまうのは、なんだかずるいことのような気がしたから……


 他のことで、兄さんへの感謝の想いを伝えることにしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ