表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/300

118話 妹とある意味初デート・4

「兄さん、兄さん! ペンギンですよ、ペンギン! はぁあああ……かわいいですね♪」


 ヨタヨタと歩くペンギンを見て、結衣が恍惚とした表情を浮かべる。

 さすがペンギン。

 女の子には大人気だ。


「本当にかわいいですね……抱きしめて、なでなでして、抱きしめたいです!」

「抱きしめる、二回言ったな」

「大事なことですから!」


 ウチの妹がちょっとおかしい。

 かわいいペンギンを前に、テンションが振り切れて、ハイになってるんだろうか?

 最高にハイってやつか。


「兄さん、兄さん」

「うん?」

「ペンギン、たくさんいますから、一羽くらいお持ち帰りしても構いませんよね?」

「いいわけあるか!?」

「大丈夫ですよ、バレませんから」

「バレるよっ! だいたい、どうやって連れ帰る気だ!?」

「兄さんにおまかせします」

「とんでもない無茶振りをされた!?」

「ペンギン、飼いたいです。ダメですか?」

「ダメです」

「そうですか……さようなら、また来ますね」


 ガチで凹んでた。


 冗談じゃなくて、マジトークだったのか……

 女の子の理性を失わせるなんて、ペンギン、恐ろしい子!




――――――――――




 今度は、クリオネを見に来た。

 再び、結衣の目がハートマークになる。


「小さくて、ぴょこぴょこってしていて、かわいいです♪」

「なんか、妙な愛くるしさを感じるよな」

「ですです。羽をぱたぱたさせるところなんて、もう最高ですね!」


 水族館に来てから、結衣の性格が変わってしまったような気がする。

 ウチの妹がおかしいのか、それとも、女の子全員こうなるのか……

 どうか、後者でありますように。


「泳いでますよ、いっぱい泳いでますよ。がんばれー」


 水槽に顔をぴったりと寄せて、結衣はクリオネを鑑賞してた。

 とてもかわいらしい。

 ほっこりする。


 でも、なんでクリオネを応援するんだ?

 クリオネ、レースでもしてるのか?

 そんなに忙しい生き物だっけ?


「ところで、知ってるか?」

「なんですか?」

「クリオネがなんて呼ばれているか。通称……」

「『流氷の天使』、あるいは『氷の妖精』ですよね」


 おおっ、迷うことのない即答。

 さすがだな。

 かわいいもの知識では女の子に勝てないかもしれないが……

 もう一つの豆知識については知らないだろう。


「なら、クリオネって何類か知ってるか?」

「……そういえば、何類なんでしょうね?」


 結衣が、コテンと小首を傾げた。


「普通の魚……ではないですし、イカ? いえ、クラゲ? ……あるいは、天使類という可能性も」


 天使類ってなんだ。

 クリオネ、そんなにすごい生き物だったのか。


「正解は、貝類だ」

「か、貝……?」

「こんなんでも、コイツ、貝だぞ」

「で、でもでも、貝はどこに……?」

「成長したら外れるらしい。どこかで、そんなことを見た記憶があるぞ」

「貝……」


 どんよりとした顔で、結衣は水槽から離れた。


「……兄さん、ひどいです」

「え? え? 俺、なんで怒られているの?」

「クリオネが貝なんて……女の子の夢を壊して楽しいんですか?」

「えぇ!?」


 豆知識を披露したら、なぜか怒られた……

 女の子は複雑だ。




――――――――――




 次は、ちょっと趣向を変えてサメを見に来た。

 サメと言っても映画に出てくるようなものじゃなくて、温厚と言われてるジンベエザメだ。

 大きな水槽の中を、巨大なジンベエザメがゆったりと泳いでる。


「おーっ、でかいな」

「そ、そうですね」

「でも、ノロマだな。あれなら、俺でも勝てそうだ」

「そ、そうですね」


 結衣の様子がおかしい。

 心なしか、俺の後ろに隠れるようにしてて……

 チラチラと目をやるだけで、水槽をまともに見ていない。


「……これくらい大きいと、結衣なんて一口でパクリだな」

「ぴゃあ!?」


 リアルに、結衣が飛び跳ねた。


「な、ななな、なんて恐ろしいことを言うんですか!? 兄さんは鬼ですか!?」

「怖いのか?」

「だってだって、サメですよ!? シャークですよ!? 怖いに決まってるじゃないですか!」

「こんなサメなのに?」

「サメは全部凶悪なんです!」


 ひどい冤罪だ。


「ジンベエザメは、滅多なことで人を襲ったりしないんだぞ?」

「ということは、言い換えれば、たまに人を襲うこともあるんですよね?」

「確かに……」

「あの大きな口で、パクリ……と」


 やばい、そう考えると怖くなってきた。


「……行くか」

「……はい」


 サメ、怖い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ