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112話 妹はがんばりたいです

 今まで、誰にも……凛ちゃんにも明日香さんにも打ち明けることのなかった、私の本心……

 同じ『妹』で、同じく兄さんを慕う者同士だからなのか、真白ちゃんには話をすることができました。


 ……まあ、こんな話をされても迷惑かもしれませんけどね。


「すみません。こんな話をして」

「それは……うん。私はいいよ。でも、結衣お姉ちゃんは……」

「真白ちゃんには知っておいてほしくて」

「……結衣お姉ちゃんは、これからどうするの? お兄ちゃんのことが……ううん、自分のことが信じられないっていうなら……」

「なんとか、してみたいと思います」


 ずっと、自分の弱い心から目を逸らしてきました。

 でも、真白ちゃんと知り合い……

 仲良くなるにつれて、そんな自分が恥ずかしくなってきました。


 真白ちゃんは、あんなにも兄さんにまっすぐな好意を向けていて……兄さんのことを、心から信じています。

 それなのに、私は……


 情けないです。

 でも、ただ落ち込むだけじゃなくて……

 悔しく思いました。


 真白ちゃんに対して、ではありません。

 私の弱い心が、兄さんを信じられないことが、悔しい。


 これじゃあ、兄さんを『好き』と、胸を張って言うことができません。

 私は、誰からも認められるような兄さんの『彼女』、そして『妹』になりたいです。

 だから、がんばろうと思いました。

 まずは、『妹らしく』あることから。

 そうすることで、少しでも、前に進めると思ったから……


 決意を聞いた真白ちゃんは、神妙な顔で私の手を握りました。


「真白も手伝うよ! その、何ができるかわからないけど……でもでも、結衣お姉ちゃんの力になりたいの! 一緒にがんばりたいの!」

「ありがとうございます」

「がんばるよーっ!」

「その、こんなことを言うのもなんなんですが……どうして、真白ちゃんはそこまでしてくれるんですか?」


 このことに関しても、料理を教えてくれたことに関しても。

 そして、『妹らしく』あることに協力してくれたことも。


 私たちは、出会って、まだ日が浅いです。

 もちろん、真白ちゃんのことは好きです。

 同じ妹同士、気が合うというか……懐かしい友だちに再会したような気分です。


 でも、本気で心配してくれて……

 ここまでしてくれる理由が思い浮かびません。


 不思議に思っていると、真白ちゃんは、無邪気な笑顔でにっこり。


「だってだって、結衣お姉ちゃんのことだもん!」

「え?」

「真白、結衣お姉ちゃんのこと、ホントのお姉ちゃんみたいに思ってるんだ! 大好きなんだ! だから、困ってるなら力になりたいのっ」


 あぁ……

 私は、また勘違いをしていたんですね。


 真白ちゃんは、私の力になることに『理由』なんてものは設定していません。

 強いて挙げるなら、『私が好きだから』。

 ただそれだけで、全力でがんばることができるんです。

 それが、真白ちゃんという女の子。

 そして……それこそが、『相手を信じる』ということ。


 今の私にはないもの。

 ……少し、真白ちゃんをうらやましく思いました。




――――――――――


<宗一視点>



「ふぅ」


 心地いい満腹感を抱いて、ベッドに横になる。


 まさか、結衣があんなにおいしいハンバーグを作れるなんて。

 予想外の驚きと、結衣の手料理ということもあって、何倍もおいしく感じられた。

 先生をやってくれた真白ちゃんに感謝だな。


「……いや。真白ちゃんだけじゃないか」


 真白ちゃんの功績は大きいだろうけど……

 でも、結衣もがんばったはずだ。

 俺は見ていないけど、すごくすごくがんばったはずだ。

 ハンバーグを食べた時、結衣のがんばりが伝わってきた。


 だから、結衣にも感謝しないと。

 おいしいハンバーグを作ってくれてありがとう、ってな。


「……でも、そんなこと言ったらキモがられないかな?」


 今までの結衣の反応を見る限り、過剰に褒めると、『嫌味ですか?』って逆の意味に捉えられてしまうことが多い。

 俺としては、普通に褒めたつもりなんだけど……

 なぜか、結衣はそう受け止めてくれないんだよな。


 まあ、嫌いに思ってる兄の言葉なんて信用できないか。


「嫌い……か」


 ふと、昔のことを思い出した。


 結衣と兄妹になって、しばらく経った日のことだ。

 その頃の俺たちは、出会った時のようにぎくしゃくした関係じゃなくて、それなりにうまくやれていたと思う。

 あの頃の結衣は、笑顔で『兄さん』って言ってくれてたもんな。

 かわいかった。


「って、俺はシスコンじゃないからな?」


 誰に向けているかわからない言い訳をしつつ、さらに記憶を掘り返す。


 色々とありながらも……

 俺と結衣は、ちゃんと『兄妹』をやれていたと思う。

 当時は、まだ父さんも母さんも家にいたから……

 世間一般の普通の家庭で……『幸せ』な時間を過ごしていた。


 そんな時だ。

 俺と結衣の間に、とある事件が起きたのは。

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