11話 妹の親友は疑っています
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
「あれ? 凛ちゃん?」
「結衣、この子は……」
「相馬凛ちゃん、私の友だちですよ」
結衣の言葉を受けて、凛と呼ばれた女の子はペコリと頭を下げた。
小さい。
まず最初に思い浮かんだ言葉は、それだ。
背が低く小柄で、中学生みたいだ。いや、下手したら小学生?
でも、マイナスポイントはそれだけ。
顔の造形は芸術的なまでに整っていて、圧倒的な美少女だ。10人いたら10人が振り返るくらいのレベル。
愛想はない。というか、感情を伺うことができない。ただ、それが悪い方向に働いているということはなかった。クールで知的、という印象を受けて、良い印象の方が強い。
矛盾した表現かもしれないが、クールビューティーでかわいい女の子だ。
「どうしたんですか? 私になにか?」
「田辺先生からの伝言よ。次の授業で使うプリントを運んでおいてくれ……だって」
「またですか? 私、クラス委員ではないんですけど……もう、仕方ないですね。というか、兄さんとの時間を邪魔するなんて……ギルティですね!」
やれやれとため息をこぼして……なにか、気になることを言ったような気がしたけれど、よく聞こえなかった……から、結衣はこちらを向いた。
「すいません、兄さん。用事ができてしまったので……」
「わかったよ。ただ、それは飯を食べる時間もないくらい、急ぎなのか?」
「それは……どうなんですか?」
「そんなことはないわ。プリントを運ぶだけだから、10分もあれば終わると思う」
「なら、飯を食べる時間はあるな。焦らないで、ゆっくり食べようぜ」
「兄さん、そんなに私と一緒に……? 私も兄さんと一緒したいですよ、昼だけじゃなくて、朝も夜も、ずっとずっと……!」
「ん? どうした?」
「いえ。なんでもありません、なんでもありませんよ? じゃあ、残りを食べてしまいましょう」
「私も手伝ってあげる」
「ありがとうございます、凛ちゃん」
「ゆっくりしていいから。そこで本を読んでいるから、食べ終わったら声をかけて」
「はい」
――――――――――
<結衣視点>
お昼を食べて……さすがに凛ちゃんを待たせるのは申し訳ないので、途中で割り箸を取りに行き、お弁当は手早く食べました……凛ちゃんと一緒に校舎を移動します。
「えっと、プリントは職員室ですか?」
「ええ、そうね。先生の机の上に置いてあるらしいわ。勝手に入って、勝手に取っていって構わない、って」
「適当ですね」
苦笑しながら足を進めます。
すると、凛ちゃんがじっと私を見つめてきました。
「さっきの、結衣のお兄さんよね?」
「はい、そうですよ」
「ずいぶん仲がいいのね。あーん、をするなんて」
「見ていたんですか?」
「ちょうど……ね」
「えっと……仲が良いのは当然ですよ? 何しろ、私と兄さんは『恋人』ですからね」
私と兄さんは恋人……自分で言っておきながら、ニヤニヤしてしまいます。口にする度に幸福感に包まれて、昇天してしまいそうになります。
私と兄さんは恋人♪
「恋人……?」
意外なものを見たように、凛ちゃんは目を丸くしました。なんていうか、猫が逆立ちをしたところに遭遇した、みたいな感じです。
凛ちゃんとは中学生の頃からの付き合いですが、こんなに驚いたところは初めて見ます。
「意外ですか?」
「そうね……意外と言えば意外だけど、ある意味、納得ね。結衣がお兄さんのことを好きなことは、ずっと前から知っていたし」
「えっ、知っていたんですか!?」
「見ていればわかるわ。いつもお兄さんのことばかり話していて……会ったことはなかったけれど、好き、という気持ちはいつも伝わってきたわ」
凛ちゃんが気づいているのに、どうして、兄さんは私の想いに気づいてくれないんでしょうか? ちょっとだけ、もやもやしてしまいます。
まあ、想いを受け入れてもらえるかわからないので、気づかない方がいいのかもしれませんが。
うぅ、複雑な気分です。
「でも、私の気持ちを知っていたのなら、どうして意外に思うんですか?」
「こう言ったらなんだけど、相当、難易度が高いように見えたから。バカにするわけじゃないのだけど、お兄さん、けっこう鈍そうだから」
凛ちゃん、正解です。
私が中学生の頃からアピールをしているのに、まったく気づいてくれませんからね。
兄さん、鈍感すぎます。
でもでも、私が困っている時などはすぐに気づいてくれて、身体を張って助けてくれて……格好良いところもあるんですよ? 兄さんは、とても素敵なんです♪
「そんなお兄さんを、いったい、どうやって攻略したのかしら?」
「それは、まあ、色々と」
「ふーん」
「どうしたんですか?」
「ううん、別に」
この反応……ひょっとして、凛ちゃんは、私と兄さんの関係を疑っているんでしょうか? 本当の恋人なのだろうか……と。
だとしたら、ピンチです。
せっかく、フリとはいえ、兄さんと彼氏彼女の関係になれたのに……下手をしたら、関係解消、という事態もありえるかもしれません。
これは、なんとかしないといけませんね。
具体的には、そう……疑う余地がないくらいに、兄さんとイチャイチャして、私たちが恋人ということを見せつけましょう!
……決して、私が兄さんとイチャイチャしたいわけじゃないですからね?
いえ、やっぱりイチャイチャしたいです!
これ以上ないくらいにイチャイチャしたいです!
というわけで、さっそく、今夜にでも話をしてみましょう♪
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
妹が、既存の作品とすごく似ているという指摘をいただき、確かにそのとおりと思い、物語の軸はそのままに、全体的に調整をしてみました。いかがでしょうか?
もしよろしければ、感想などをいただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。