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103話 妹と妹と嫉妬と

 朝食を食べて、リビングでのんびりしてると、インターホンが鳴る。


「俺が出るよ」

「すいません」


 結衣は洗い物をしてたから、俺が玄関に向かう。

 ガチャ、と扉を開けると……


「やっほー、お兄ちゃん!」

「うわっ」


 満開の笑みで真白ちゃんが突撃してきた。

 良いタックルが腹に……!


「せ、成長したな、真白ちゃん」

「うん? 真白、成長した?」

「今のはいい一撃だ」

「えへへ、よくわからないけど褒められちゃった」


 ちょっとは皮肉に気づいてもいいんだよ?

 ……まあ、この無邪気なところが真白ちゃんらしい、か。

 このままでいてほしいものだ。


「ところで、いきなり突進するのはどうかと思うよ」

「お兄ちゃんだから突進したんだよ?」

「勘弁して」

「でもでも、よく確認してなかったけどね!」

「ダメじゃん」


 俺じゃなかったらどうしよう? とか考えないんだろうか、この子は。


 ……まあ、昔からこんな子だったからな。

 真白ちゃんは、いつも走り回ってて、俺に抱きついてきて、笑顔を浮かべてて……

 小さい頃のことを思い出して、ついつい笑顔になる。


「ん? お兄ちゃん、どうしたの? おもしろいことあった?」

「真白ちゃんが面白いよ」

「え、真白が? なになに、それ。どういうこと?」

「秘密」

「えー、つまんない」

「それよりも、今日は……って」


 そういえば、結衣が料理を教えてもらう、って言ってたよな。


「結衣お姉ちゃんいる?」

「奥にいるよ」

「おーい、結衣お姉ちゃーん! 真白、来たよー!」


 大きな声で呼びかける真白ちゃん。

 それに応えるように、結衣がひょこっと顔を出した。


「あっ、真白ちゃんだったんですね」

「やっほー、来たよ。結衣お姉ちゃん」

「わざわざありがとうございます。今日は、お願いしますね」

「うんうん。真白ちゃん先生におまかせだよ!」


 にこにこ笑顔で胸を張る真白ちゃん。

 頼りになりそうというよりは、普通にかわいい。


「結衣に料理を教えるんだって?」

「うん、そうだよー。楽しみにしててね、お兄ちゃん」


 やっぱり、味見は俺なのか……

 本当に大丈夫なんだろうか?

 真白ちゃんを疑うようで申し訳ないが、不安は消えない。

 何しろ、生徒は結衣だからなあ……


「真白ちゃんって、料理できたんだ?」

「うん。けっこう得意だよー。あとあと、お菓子も作れるよ。お兄ちゃん、お菓子も欲しい?」

「……いや、お菓子はいいかな」


 ついつい、失敗した時のことを考えて、品目を減らすような発言をしてしまう。


「真白ちゃん、真白ちゃん」

「ふい?」


 ちょいちょいと手招きをして、真白ちゃんと内緒話。


「……ちょっと聞きたいんだけど、真白ちゃんの料理の腕前はどれくらい? 得意っていっても、教える方も得意なの?」

「うい? どうしてそんなこと気にするの?」

「あー……これ、結衣には内緒な? 結衣の料理の腕は、なんていうか……相当アレだから」

「なるほど、アレなんだ」

「アレなんだよ」


 アレだけで、俺の言いたいことは伝わったらしい。

 真白ちゃんは、察したように頷いた。


 敏い子だよな、真白ちゃんって。

 幼いように見えて、見るところは見てるっていうか……

 かわいいだけじゃなくて、色々と考えてて……今時、珍しい子だ。


「んー、答える前に聞いておきたいんだけど、結衣ちゃんは、どんな感じに料理がダメなの? 単に不器用なのか、それとも用法用量を守らないとか……お兄ちゃん、知ってる?」

「独自のアレンジをしようとするんだ。この前は、味噌汁を作る時、色味が足りないと言ってケチャップを入れてたな……」


 あの時は、妹の前で泣きそうになってしまった。

 味噌とケチャップが絶妙な具合で入り混じり、なんともいえない味に……

 思い出すだけで腹の辺りが重くなってくる。


「あー、なるほどなるほど。そういう感じなんだ」

「なんとかできそう?」

「大丈夫。真白におまかせあれ、だよ♪」


 おぉ、真白ちゃんが頼もしく見える。

 とても年下とは思えないな。

 これなら、任せても平気かもしれない。


「あのー……兄さん? 真白ちゃん? こそこそと、何を話しているんですか?」


 結衣が不機嫌そうな感じで頬を膨らませてた。

 やばい、放置したことで疎外感を覚えたのかもしれない。


「いや、なんでもないよ。ちょっとした世間話だ」

「ふーん、そうですかー。世間話ですかー、ずいぶん親しそうな世間話ですねー」

「大した話じゃないから」

「そうですか、そうですか。妹には聞かせられないような、そんな話なんですねー」


 なぜか、結衣の言葉が棘のようにチクチクと突き刺さる。

 放置されたことが、そんなにイヤだったんだろうか?


「お兄ちゃん。なんで結衣ちゃんが不機嫌なのか、わからないの?」


 俺の心を見透かしたように、真白ちゃんがそんなことを尋ねてきた。


「わからないけど……真白ちゃんはわかるの?」

「……はぁ」


 やれやれとばかりに肩をすくめられて、真白ちゃんはため息をこぼした。


 え? なにその反応?

 なんか、俺が悪いみたいじゃん。


「お兄ちゃんは、すっごく良いお兄ちゃんだけど……鈍感なところはダメダメだよね」


 そう言って、真白ちゃんは、もう一度ため息をこぼすのだった。

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