10話 妹と食べるごはんはおいしい
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
※ジャンル別日間1位、週間4位になりました! たくさんの応援をいただき、本当にありがとうございます! ……今まで『日刊』と書いていた、恥ずかしいミスに今気づきました。
昼休みになり、弁当を持って中庭に移動した。
「兄さん、こっちですよ」
ベンチの一角に結衣を見つけた。すぐに移動して、隣に座る。
「さあ、お昼ですよ。一緒にごはんを食べましょう」
「結衣が誘ってきたんだろうが……まあ、体育があって体を動かしたから、すっかり腹が減ったよ」
「たくさんあるから、いっぱい食べてくださいね」
「結衣が作ったように言ってるけど、それ、俺が作った弁当だからな?」
「わかっていますよ。でも、ほら、こういう風に言うと彼女らしいというか、そういう気分を味わいたいというか……」
「ん? なんでそんな気分を?」
「いえ、それは……常日頃から意識しておくことで、いざという時でもボロが出ないようにしているんですよ! そういう風に注意しておくことが、成功の秘訣です」
「なるほど、参考になるな」
よく考えているな、結衣は。
俺なんて、あたふたしているだけなのに。
しっかりと演技をしていて、周囲のことも考えていて……本当は、俺とこんなことをするのもイヤなはずなのに、文句の一つも言わないで……素直にすごいと思う。
「ところで、なんで、今朝はわざわざ教室に? 一緒に食べるなら、携帯で連絡をするなりして、で、弁当も昼に渡せばよかったんじゃあ?」
「言ったじゃないですか、兄さんに会いたくて……というのは冗談で! その……昨日のアレで騒ぎが起きて、兄さんだと墓穴を掘りそうなので、私はそのフォローをするため、といいますか……つまり、そういうことです!」
「なるほど。わざわざ俺のために……悪いな」
「いいえ、気にしないでください。全部、私のためにしていることですから。でも、できれば、兄さんも、もう少しがんばってくださいね? 恋人らしく、甘い感じでお願いします」
「が、がんばってみる」
甘い感じか……俺にできるんだろうか?
難しいと思うが……結衣はがんばっているし、俺もそれに応えないとな。
「それじゃあ、そろそろお弁当を食べましょう」
「そうだな」
弁当箱を開けて、箸を……あれ? 箸がない?
「どうしたんですか?」
「いや……どうも、箸を忘れちゃったみたいだ」
「そうなんですか?」
「ちょっと、学食行って割り箸もらってくる。先に食ってて構わないから」
「あ……待ってください、兄さん。その、あの……私が食べさせてあげます!」
「え? 食べさせる、って……」
「はい……あーんっ」
おかずを箸で摘み、こちらに差し出してきた。
こ、これは、恋人同士でやる伝説の『あーん』……だと!?
「ゆ、結衣? どうして……」
「今の私たちは恋人なんですから……普通じゃないですか? これくらいしておかないと説得力が出ませんよ? 世の中の恋人の9割は、あーんを経験しているのですから」
「そ、そうなのか? でも、さすがにこれは恥ずかしいっていうか……」
「……兄さんは、イヤなんですか? 私のことが嫌いなんですか? 私に食べさせてもらうなんて、ありえないんですか?」
「そんなことはないけど……」
「なら、問題ありませんね。ほら、これも、恋人らしくふるまうために必要なことですよ。こういうことを積み重ねていくことで、より、本物らしくなるんですから。そして、いずれ本物になって、兄さんとずっと添い遂げて……あぁ、夢が広がります!」
「結衣?」
「あっ、いえ。なんでもありません、なんでもありませんよ?」
顔を赤くして、パタパタと手を横に振る。
暑いのかな? でも、今は春なんだけど……うーん、謎だ。
「それじゃあ、改めて……あーん」
「あむっ」
ちょっと照れくさいけれど、素直に結衣が差し出したおかずを、ぱくりと咥えた。
自分で作ったものだから、味はもうわかっているんだけど……でも、なんでだろう? こうして結衣に食べさせてもらうと、いつもよりおいしく感じる。
「兄さんに、あーん、をしてしまいました……夢にまで見た瞬間が、ついに! ……今日の日記は長編になりそうですね、小説一冊分になりそうです♪ この瞬間を、未来永劫、残していきましょう♪」
「結衣?」
「はっ!? なんでもありませんよ? それよりも、どうですか? おいしいですか?」
「まあ、それなりに。結衣に食べさせてもらうと、いつもよりおいしい気がするよ」
「そう……それは良かったですね。じゃあ、続けて……」
さらに続けようとしたところで、足音がした。
「結衣」
聞き覚えのない声……振り返ると、見知らぬ女の子がいた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
結衣はコロコロと表情が変わるので、書いていて大変ですが、楽しくもあります。
愛されるようなキャラを目指していきたいです。
これからもよろしくお願いします。
※10月31日 追記
妹が既存の作品とすごく似ているという指摘をいただき、確かにその通りと思い、物語の軸はそのままに調整をしてみました。いかがでしょうか?
妹のキャラに関する感想をいただけると、とても幸いです。
よろしくお願い致します。