最弱勇者の究極戦記
俺は弱い。
自分を守るのに必死で友達も簡単に捨てる。
自分が負けた時には相手を素直に褒められずシカトする。どんな時だって俺は自分しか頭にない。自分だけで精一杯で何人泣かせたって治すことができないんだ。
なのにどうしてだ。
こんなにも人を傷つける俺になにか出来ると言うのか。異世界の勇者だなんて………
それは昨日の朝のこと。
「このお兄ちゃん朝なのに起きないよぉ!!!!」
「安心しろ、メウビス。時期に起きるさ。」
聞きなれない声が聞こえてきた。
俺は寝ぼけているのだと思った。
目を擦り周りを見渡す。青空の下に赤い屋根のレンガ造りの家が立ち並ぶ…。あれ、今までの中で1番、まるで夢でないように空気を感じられる夢だな。
不思議な感覚だった。
「あー!起きたよ!!!!起きたよ!!!!!!!!」
赤い艶のある髪を揺らしながらこちらを見て喜んでいる少女。そして、こちらに向かってくる茶髪の青年。何もかもがリアルで全然夢だなんて思えない。状況が全く掴めない。
「どうなってんだ。夢…なのか?」
「目覚めましたか。あなたはこの世界の方ではないですよね?喋り方が独特です。」
喋り方が独特…初めて言われた。俺といえば何一つと個性がないことでクラスでも有名だったのだが…
でもそういえばこの青年の言葉、少し聞き取りにくい気がする。
「ここは…どこなんだ?」
「チルメノス王国です。あなたからすれば異世界…と言ったところでしょうか…。」
異世界…だと!?俺は元々ゲームが大好きだ。異世界もののRPGなんかもよくやっていたが…だめだ。説明を受けたところで全く分からない。
「あなたは選ばれたのですよ。というか運命です。」
「運命……」
「何故あなたがこのチルメノス王国に召喚されたのか。それはおそらくギルド様にそっくりだからだと思いますよ。」
話がどんどん発展していって頭がついて行かないがとりあえず聞いてみよう。
「ギルドって誰なんだ?」
「はるか昔、このチルメノス王国はアレスシア王国という国と対立していました。アレスシア王国は武器をたくさん持っていて軍勢も多く圧倒的にチルメノス王国よりも有利でした。絶望的な状況におかれていた我が国はアレスシア王国に支配されることを覚悟していました。しかし、そんな時にひとりの勇者が現れたのです。そのお方は聖剣を使いこなし莫大な数の敵軍をどんどん倒していきました。敵軍はみるみる数を減らし遂には我が国と並ぶ数になったのです。慌てたアレスシア王国の王は深々と頭を下げ争いをやめるよう頼み込んできました。それから我が国とアレスシア王国はたくさん交流するようになり仲良くなっていきました。そして、勇者はとても明るく優しかったのでどちらの国からも愛されました。100年以上たった今もなお、勇者は国民全員から愛されているのです。その勇者というのがギルド様でございます。」
「メウビスもギルド様大好き!!!!」
どう考えても正反対だった。似てる…どこがだ。
俺は愛されてなどいない。人を傷つけるような俺が勇者に似てるなんて…相手を幸せにできたことなんて1度もないのに…。
「この世界は今地球という星に狙われているのです。ギルド様の時は同じ星内での戦争でしたが今回はそれ以上に危機的状況なのです。何しろ地球は膨大な力を持っているらしいので。あなたはそれを救う勇者になる運命なのです。この星を救ってください!!!!」
故郷(地球)を守るのか異世界を守るのか。
俺はとんでもない選択肢を迫られてしまった。