天使の白い羽根
花凛は、昨日圭からプレゼントされた銀の羽根を型どったストラップを目の前にぷらぷらさせながらじっと見つめていた。
本人は、ニヤニヤして見ているつもりなのだが表情に表すことが出来ない花凛がやっているとまるで催眠術の練習にしか見えない。
クラスの女生徒は、時折不思議そうな顔でそれを見ていた。
圭が遅めに登校してきたのに気付いた花凛は、早速行動を開始した。
「圭っ、おはよう」
朝からくねくねするのはやめて欲しいものだ
「おはよう、花凛」
「花凛なんてよそよそしい呼び方は、やめてよ、もう『か』とかでいいから』
もはや殺虫剤でもまいたほうがいいのだろうか、ある意味駆除は必要かも知れないな。
花凛は、気に入ってくれたのか俺のあげたストラップをぷらぷらさせていた。
「圭っ、ありがとう、この婚約ストラップ」
そんなものがあるとは初耳だ。
「気に入ってくれたなら嬉しいよ」
「うん、ずっと見てても飽きないよこれ、昨日もずっと見てたんだ、ぷらぷらさせてね、そしたら圭を思い出してまた、見ちゃうんだよ」
軽くディスってないかと思えるのは気のせいだろうか
「そういえば、由良の件だけど…」
由良のストーカー対策の件は、実はまだ考えていなかった。
「ベテランに聞くしかないわ」
川嶋の事だ。
「ちょっと、ストーカーに聞きたいんだけど」
川嶋の事だ。
「クズの意見を聞きたいのよ」
川嶋の事だが、言い過ぎだろう
「いいよ」
いいのか川嶋!
俺たちは、川嶋に由良の名前を伏せて事情を説明した。
「その子は、俺が守るよ」
ストーカーが、ふたりに増えただけだった…
この前の合コンは、どうやら失敗したらしい。カラオケに集まった川嶋たちは、1時間ほどそれぞれ歌をうたい何ごとも無く解散したそうだ。
「何ごとも無くて良かったな、川嶋」
優しい口調で話しかける花凛だが、何ごとも無い合コンには、全く意味がない。
「なんかもう、あの子には冷めちゃってさ」
ジゴロのようなセリフの川嶋だが、なんかあったのだろうか
「どうした、何が原因なんだ川嶋、あんなにお気に入りだっただろ」
「ああ、すごいダサい格好で来るし、食べかた汚いし、パンツ黒いし、歌下手だし…」
いま、なんか気になる要素が入っていたようだが…
「とにかく、あの子の背中にあった白い羽根は、消えてしまったんだよ」
そんなものが見えていたとはかなり重症だ
「ありがとう、川嶋、参考になったよ」
よし、とれ高は、充分だ。
次の週末、待ち合わせの噴水に、チェックのネルシャツを着てケミカルジーンズをはいた由良三崎の姿があった…
テーマは、もちろん"幻滅"だ