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テンプレ騎士団  作者: Unknown
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第一話 テンプレ的なアレ

 テンプレそれは彼にとって掛け替えのないものであり、先人達の知識の集大成であり、このMMO――Tower of War通称TOWの必須要素である。

 彼はあることがきっかけでテンプレを愛し慈しみ、知識を貰う側から受け渡す側へと歩んでいったのだ。




 彼、いや今はゲーム内なので彼女というべきか――彼女エリス・アーサーはギルドタワーと呼ばれるギルド拠点の会議室、ギルド内通称『円卓』に座り一人頭を悩ませていた。

 エリスは身長が低く設定されており、その身長は140cm、白銀の兜の隙間から出ている銀のポニーテールに蒼色の瞳、銀の髪の横から先の尖った耳がわずかに出ている。

 顔はキャラメイク時に作り込んだのか現実世界基準であるのなら10人中9人はロリコンでないとしても振り向くくらいには美しい。

 白銀の鎧を着ていなければどこかの貴族のお嬢様にも見えるだろう。

 エリスが何を悩んでいるのか――それは近々行われる予定の大規模アップデートについてだ。

 大規模アップデートと聞いて普通は喜ぶものが多数だろう、しかしエリスはその多数には属さない。

 なぜなら彼女はテンプレの信奉者で大規模アップデートによりそのテンプレが変わる可能性が出てくるからだ。

 どのくらい調整が入りそれに合わせてテンプレを変えるのか、新マップや新ボス、新ダンジョン等のテンプレもまた作らなければならない、やることが多く得なければならない知識も多い。

 このゲームについて説明すると基本的にはGvG、ギルド同士の対戦がメインではあるがギルドタワーと呼ばれるのギルドの拠点を作らなければGvGに参加する必要はなく、PvP、プレイヤー同士の対戦やPK、プレイヤーを殺すシステムはあるもののPK嫌いの日本人が集まっているせいかPKK、プレイヤーを殺すプレイヤーを殺すプレイヤーが多くPKはごく一部の人間が行っているくらいになっている。

 そしてPKが行われにくい理由はもう一つある、キャラを育てるのにプレイヤー同士PT(パーティー)を組んで協力するのが前提となっているのだ。

 最大レベルが100でレベル上限解放クエストが30・60・90レベルであり、ソロでも挑めるがその挑めるレベルではクリア不可能でPTで挑む必要がある。

 よってPKをしたプレイヤーは赤ネーム、キャラクターの上に表示される名前が赤色で表示されPKを行ったプレイヤーと分かりPTからハブられてしまうのだ。

 また、IDと呼ばれるインスタンスダンジョン、PT専用のダンジョンもあり更にPKの肩身は狭くなっている。

 もちろんPT推奨ゲームというかほぼ必須ゲームの為テンプレから外れるPT構成やスキル構成はかなり嫌われていた。

 職業は剣士系、魔術師系、聖職者系、弓兵系、商人系に分かれておりそれぞれ準火力+盾役もしくは盾役、火力もしくはデバフ役、回復もしくはバフ役、火力もしくは回避盾、生産と役割が分かれており、この中から通常は一つ選ぶのだが、二回目の上限解放クエストでもう一つのクラスを選ぶことができるダブルクラスシステムだ。

 テンプレ外が嫌われているもののダブルクラスシステムを利用し剣士系で回避盾をしようとしたリ聖職者系で火力役を目指す者も少なからずいたが、どのようなスキル構成・装備・PT構成でも基本のテンプレを上回ることはなく装備を最上位の物に整えてようやく装備の整ってないものに追いつけるかどうかくらいだった。

 種族は人間・エルフ・ドワーフ・獣人のみで隠し種族もなければクエストで開放できるスキルはあるが隠しスキルもなく実はこれが強かったなんてことは10年続いて色々と探しつくされているこのゲームでは基本的にはあり得ないのだ。

 もしあるとするならボスの超レアドロップがありそれがドロップしていない、もしくは一部のギルドが入手し秘匿しているとか発見されていないバグがありそれらを利用すれば強い――とかはあるかもしれない。

 例外を除けばこのTOWと言われるゲームはテンプレを徹底し守り、ボス等はテンプレ通りに対処できるかどうか、PvPやGvGでもそう、多人数相手だとしてもどこまでAに対してBと呼ばれるようなテンプレを行えるかというプレイヤースキルというか慣れが重視されているゲームなのだ。

 よって今まで積み重ねてきたテンプレ、研鑽が潰れてしまう可能性のある大規模アップデートに対してエリスは頭を悩ませているのだった。


「どうしよう……内容を見る限り新マップや新ID・新ボス等の実装と一部スキルに修正が入ると書かれているけど、何かまで書いてないのが怖い」


 エリスの癖ではあるが誰もいるわけでないのにチャットを打ち込みログに流す、考えをまとめるためであったり何をするべきかのメモのためではあったりするのだがついつい唯々無意味に打ち込んでしまったりもしている。

 しかしそんなチャットの発言をちょうどログインしてきた一人のギルドメンバーが見ることとなる。


「そんなもん、アップデート来てから対処すればいーっしょ」

「あ、こんばんは。カズさん……今はリズさんでしたか」


 リズと呼ばれた女性は身長は170cmくらいで赤髪のセミロングに碧色の瞳、エリスと同等くらいの美人ではあるが幼女体系のエリスとは違い出ているところは出て、引っ込んでいるところは引っ込んでいるようなモデル体型をしていた。


「リズはやめよーぜ、どうせ一週間たったら元に戻すんだしよ」

「ああ、容姿変更ポーションあとで買ってお渡ししますね」

「ん、りょーかい。それにしても昨日のギルドイベントは楽しかったからまたやりたいっしょ」

「私をリアル破産させる気ですか、容姿変更が必要なギルドメンバー14名分の容姿変更ポーション……2000×14×2ですよ」

「あーあーきーこーえーなーいー」

「あーでも、女騎士の姿を気に入っていた人が数名はいたのでもう少し安くなるかもしれませんね」

「ギルマスもよく考えたよな、『くっころ女騎士イベント』とか」

「せっかくギルドメンバー全員が剣士系の盾役である上位職の聖騎士系なのでやってみようかなと思いまして」


 くっころ女騎士イベントとはエリスが考えたイベントでギルドメンバー中11名の男性をすべて容姿変更ポーションで女騎士に変更し、了解を取ったギルドにGvGを申し込み女騎士で突貫するというイベントだった。

 実際には容姿をそれっぽく変更したいと3名の追加分を入れて14名分払うことになったがエリスの財布以外は何の問題もなかったようだ。

 イベント内容としてはGvGで申し込んだギルドの戦力を予想し主要メンバーである円卓の騎士である12名を各ギルドに1名ずつ派遣、残りのメンバーである18名には好きなところに向かわせて、全滅するまでの時間で競う予定だったのだが――。

 いざイベントが始まると相手の主力がいなかったりこちらの主要メンバーである円卓の騎士12名が固すぎたのか女騎士を相手のギルドが落とすことができず相手の玉座までたどり着いたり「くっ殺せ」とチャットで発言しながら装備を脱ぎ始める女騎士などカオスを極めたものとなった。

 そしてイベントの最後に行ったのが有名な獣人♂だけの上位ギルド『うほっ!獣人男だけのパラダイス。ぽろりもあ』というギルドへの突撃だった。

 ギルド名が途中で切れているのは決定する時に文字数が足りなかったらしいのだが本人達は逆にこれがいいと思っているらしい。

 そしてこのギルドへのGvGだが一つ問題が起こっており伝えたギルマスが残業で遅れて他のギルドメンバーに伝わらないままGvGが始まり相手が戸惑っているところにエリス達のギルド『テンプレ騎士団』が押しかけ「くっ殺せ」とチャットで集団発言しながら装備を脱ぎ始め獣人♂達を追いかけまわし阿鼻叫喚の宴となることとなった。

 本当は負けそうになったら「くっ殺せ」というイベントのはずがリズが装備を脱ぎながら言い始めたのを見たギルドメンバーが真似し始めてこんなことになったのだ。

 獣人♂ギルドのギルマスが帰ってきたのが追いかけまわされている阿鼻叫喚の最中で説明しようとするも「くっ殺せ」と獣人♂ギルドメンバーのチャットのせいでログが流れ事態が落ち着くまでかなりの時間がかかったのだった。



 獣人♂ギルドが戸惑ったのも無理はない、エリス達のギルド『テンプレ騎士団』は上位のギルドでほとんどのTOWプレイヤーなら知っておりこのギルドメンバーの盾役がPTの募集に来れば諸手を挙げて歓迎されるくらいだ。

 『テンプレ騎士団』は傭兵依頼は受けるものの自分からGvGやPvPに参加することはなく平和なギルドとして知られていたからだ。

 ギルドに入るのも厳しく、性格も重視されるが細かく設定された要件をクリアできるかどうかである。

 まず、各種属性への対応方法の知識から問われ、状態異常耐性について、防御力・ダメージの計算方法、ステータスの知識・振り方、スキル構成やPT構成の知識、危機の対処、ボスへの対処等々を答えなければならない。

 その後はID攻略についてだ、IDはランクがあり☆1~10まであり、エンドコンテンツとして☆6からのIDを全てクリアできるかどうか、☆7のを~といった感じでランク付けされる。

 ☆6ができるのなら入隊は可能でランクは6として扱われる。

 そして円卓の騎士と呼ばれる上位12名になるためにはランク12になる必要があり、ランク11として対属性装備切り替えができるかどうか、ランク12として対状態異常装備に切り替えができるかどうかで決まる。

 これらの装備を集めるためにはかなりやりこまなければ集められないし敵の攻撃種類を動作やスキル発動ログから即判断してそれに合わせて装備を切り替える必要がある。

 しかも、定期的ではなくランク12になるためには1秒毎に飛んでくる属性攻撃・状態異常攻撃に合わせられるかどうかで決まるのだ、『テンプレ騎士団』の円卓の騎士と呼ばれる12名がどれだけゲーム狂いなのかわかってもらえるだろう。

 この情報は『テンプレ騎士団』の公式HPで見ることができ入ろうとする人は誰しもが見ている内容だ。

 もちろん上位ギルドの情報を集めている誰もがこれを見ていることだろう、なのでGvGで『テンプレ騎士団』と戦おうとする上位ギルドはいないのだ、盾役の集団なので負けはしないが勝てはしない、GvGをするのもタダではなく経費がかかるのでやらないということだ。

 そして何よりこのギルドは難しい盾役も全てこなすので対ボスやレイドボスに傭兵として協力してもらうことが多く喧嘩を売って傭兵を拒否されることやこのギルドを利用している他のギルドに嫌われてしまうデメリットが多い。

 更にGvGで孤立する可能性が出てくるのでなおのこと敵対することはできないのだ。


 そんなこんなで獣人♂ギルドは戸惑っていたのだが、場が落ち着いてきて説明を受けるとギルマスが決闘システムにより袋叩きにされ、その様を見た女騎士集団がチャットで「┌(┌ ^o^)┐」と打ち続け笑いながら無事にイベントを終えたのだった。





「本当に面白かったよなー」

「ええ、散財した甲斐がありましたよ」

「んー、そろそろ時間かー?」

「そうですね、21時に始まる円卓会議まであと15分ですね」


 エリスとリズが話しているとそこに身長は165cmくらい、黒髪ロング、眠そうな紫の瞳、胸部が大きく膨らんでいる黒色の甲冑を纏った女騎士が突然現れた。


「おいすぅ」

「こんばんは、黒雪さん」

「おいーっす」

「眠いよぅ」

「お仕事お疲れ様です。眠いのなら今日の会議は参加しなくても大丈夫ですよ」

「ん、じゃあ……あーしは寝ていい?」

「リズさんはだめです。昨日は貴方のせいで本当に大変なことになったんですから……」

「後悔も反省もしていない、あいつらが火力ないのが悪い」


 リズはドヤ顔のエモーションを出しながらキャラクターポージングの仁王立ちをする。


「相変わらずですねぇ。あ、リズちゃんは一人称あーしにしたんですねぇ」

「うるせー、この見た目で俺とか女騎士としてありえないっしょ」

「いや、女騎士としてあーしもどうかと思うのですが……」

「ロリコンは黙ってろー」

「ロリコン言わないでください。低身長はリーチが短いですがやられ判定が薄く味方のカバーはスキルで可能なので盾役としてはかなり優秀なんですよ」

「まぁまぁー、むっ来ますよぅ」


 と黒雪が言った瞬間に円卓に新たに三人現れる。

 三人の容姿は似通っており身長は全員160cmくらいで茶髪、茶色の瞳、体系は標準的でただそれぞれ大きく違うところがある、一人は猫耳、一人はうさ耳、一人は犬耳といった感じだ。


「こんばんにゃー」

「こんばんはウサ」

「こんばんわん」

「こんばんは、ヒーさん、フーさん、ミーさん」

「こんばんにゃーウサわん!」

「おいすぅ」

「そしてログイン前にログインしてくるのがわかった黒雪きもいっしょ」

「えっ」


 確かにそういわれてみればという感じの!マークのエモーションを出すエリスに驚きのエモーションを出すログインしてきた三人。


「あぁー、それはですねぇ。ログインするより先にフレンドリストのログインマークに明かりがつくのですよぅ」

「ああ、そういえばそういうシステムでしたね。忘れていました」


 と納得した様子のエリス。


「すっかりわすれていたわー」


 とリズ、三人組もうんうんとエモーションを出している。


「で、そのすごい簡易的なキャラ付け続けるんですかひふみさん達は」

「決まってるにゃー」

「変更するまで続けるウサ」

「末っ子なので決めたことには逆らえないワン」

「末っ子って可哀想だなー」

「まぁまぁ、いいんじゃぁないですかぁー」

「まあ、わかりやすいので構いませんが、そろそろ5分前ですね。5分前と言えば……」

「ああーあいつっしょ」

「あぁ、あの人が来ますねぇ」

「最強の中二戦士……にゃー」

「盾の見た目変更をし鎌に変えた聖騎士(笑)ウサ」

「黒騎士カムイ……わん」


 21時5分前ぴったりにログインのエフェクトと共に一人の騎士が現れた。

 身長は150cmくらいで黒髪のショート、片目は赤くもう片方は眼帯で隠れている、手には黒の鎌を持ち黒の甲冑を着ているがエリス以外の他のメンバーと比べると全くと言っていいほどに起伏がないようだ。


「今、最強の吾輩……5分前行動をしっかりとし、降臨!!」

「はい、カムイさんこんばんは」

「今、最強ってwwwじゃあ、あとになったら最強じゃないってことかww」

「5分前行動はえらいですよぅ、カムイさん」

「降臨にゃー」

「降臨ウサ」

「降臨わん」

「うるさいぞリズ、今でも今後も吾輩は最強ぞ」


 とチャットしながらカムイは黒雪の傍により照れているエモーションを出す。

 それを見た黒雪は頭をなでるキャラクターポーズをし、カムイに答える。


「相変わらず仲いいですねー」

「えぇ、弟を見ているようでぇー」

「最強のカムイさんもお姉さんには勝てないかー」

「吾輩に勝てない者などいない!」

「聖騎士で一対一なら勝てるのは当たり前っしょ」

「はいはい、そこリズさんもカムイさんも喧嘩しないでください。そろそろ時間なんですから」


 21時になる前に残り5人の内4人がログインし、挨拶を行い席に座る。


「あと一人来ませんが時間ですねー、始めましょうか。」

「おおー」


 とそれぞれ声があがる。


「それでは第251回円卓会議を縺ッ縺倥a縺セ縺」


 エリスの中の彼は急な文字化けに驚き打ち直そうとキーボードを構えたところで大きな揺れを感じた。

 その揺れはパソコンの画面が揺れているのか自身が揺れているのか判別できず何が起きているのかもよくわからなくなっていき世界が曖昧になっていくような感覚を彼は感じていた。




 次に彼が目を覚ました時には彼、いやエリスは円卓にいた。


「ん、どうなってるんだこれ!」


 いつもとは違う世界の見え方、どこかで見たことあるようなないような景色、いつもとは違う声色。

 そのすべてが彼を困惑させた。

 体がを触ると冷たい金属の感触を感じ思わず手を宙へと戻す。


「これってまさか……」


 エリスは一つの可能性にたどり着く、最近の小説で流行っている"アレ"ではないかと。

 テンプレ的な例の"アレ"ではないかと。


「いやいやいや、いくら私がテンプレを愛していると言ってもありえないだろ」


 しかしいくら否定しても考えても目の前の光景は変わらないし声色も変わったままだ。


「なんぞこれぇー!!」


 辺りにそれを聞けば誰もが守りたくなるような幼気な声が空しく響いた。




もう一つの案がこちら。

少年と本の天使を書くかテンプレ騎士団を書くか……テンプレ騎士団の方が続きを書きやすい気がしないでもない。

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