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第六話:中学校③

 暗闇の教室の中、俺はどの机が中弥の物か探した。電気を点ければ奴が来る可能性もあって、暗闇での捜索になる。しかし、思いの外あっさりと見つかった。


 あの女がやったのか、廊下側の前から三番目の机には刃物で削られた文字があった。


 ワ タ シ ノ モ ノ


 たった6文字だが、机にある傷の深さや文字の形から、俺には呪いの文字に思えた。


「怖ぇよ……」


 あの女はマジでヤバい。きっと、アレが小子という女学生なんだろう。中学生で同じ生徒の上履きに画びょう入れるような奴だしな……。


「……ま、とりあえず中を見るかね」


 椅子を引き、机の中を漁る。冷たい鉄板の感触の他に、平たい物を手に取った。


 取り出したソレは日記だった――。


「……ついに、か」


 公園にもあった日記、俺の記憶のヒント。ここは暗くて読めないし、隣の教室に移動した。


「…………」


 ガンッ、ガンッ


 廊下に出ると、遠くの方から警報以外に鉄が鉄を叩く音が聞こえる。まだここに戻ってこないだろう。

 俺は明るい教室で日記を開いた。




 ◇




 4月10日(晴れ) 起床時間6時00分

 先日中学生になったということで、俺と中弥と小子で公園の木の下に埋めたタイムカプセルを掘り出した。懐かしいモノがいっぱい出て来たが、使える物は駄菓子屋で貰ったメダルぐらいだろう。50枚で500円分、何を買おうか3人で考えた。


 6月29日(雨) 起床時間7時01分

 中間テストが返ってきた。何故中弥はあんな良い点取れるんだ、わけわからん。俺とお前はやっぱり違うのか……? 小子も割と良い点取ってるしな、俺も頑張らねば。


 7月23日(晴れ) 起床時間6時52分

 今日から夏休み。部活も入ってない俺たちは遊び三昧ではなく、勉強ばっかしてた。


 中弥の奴、医者になる為に理系に進むらしい。頭良いし、アイツならきっとなれる筈だ。小子も頑張って医者、若しくは看護師になると言い出す。その辺はお察しなのだが、そしたら俺もいろいろ考えて、勉強しようと思った。俺と中弥は、結局違うんだ。だったら俺は文系に行きたい。小説を書くとか翻訳するとか社会学を学ぶとか、そういうのはまだちっとも考えてないけど、俺は俺の道を行くと思うんだ。

 今日もみっちり勉強しよう。




 ◇




「…………」


 ここまで読んで、いろいろな光景を思い起こした。そして、1つの真実にたどり着く。


「……間違いなく、鉈を持っていた女は小子だ。そして……」


 ――間違いなく、俺を助けてくれる少年は中弥だ。


 だがまだわからないことがあるし、これでは中弥と小子が死んでいる、という事になる。だからアイツは、俺に“思い出さない方がいい”と言ったのだろう。


「……小子」


 アイツはどうしてしまったんだ? 俺の知る小子は優しく、俺達の妹分みたいな存在で、弄られたらブリブリ怒って逃げていくような奴だった。中学の頃にあんな事件を起こしていたなんて、俺は知らなかったし――。


「……変だな、ホント」


 この世界は不気味で奇妙に満ちている。さっさとこんな所脱出して、中弥や小子に事情を聞きたい。

 それとも、これはただの夢なのだろうか。全てが夢なら全部説明がつく。いっそ夢なら、それが一番幸せかもしれない……。


 でも、俺にはまだわからない記憶がある。俺の今履いているスラックスは中学のものではない、ならば高校のもの。高校で何があったのか、俺は知らなくちゃならない。


「……。ん? まだページがあるな」


 今回は次のページにも日記の続きがあった残り1日分の後は白紙が続いている。


 11月21日(曇り)起床時間5時55分

 今日は俺と中弥の誕生日だ。小子やクラスの奴らに祝われて、それなりに楽しい1日だった。

 中弥の奴、俺の誕生日プレゼントに石鹸3個セット+オマケの1個をよこしやがった。マジでコイツなんなの。俺もタンクローリーのミニカーという用途不明の物を渡してやったがな。

 来年の誕生日はちゃんとした物を買うとお互いに約束もしたし、それで良しとしよう。

 あと、小子の誕生日プレゼントが年々俺のより中弥の奴の方が凄くなってるんだが、許すまじ。


 それが日記の内容のすべてだった。


「誕生日が、同じ……?」


 内容から察するに、俺と中弥の誕生日は同じらしい。そういう友達も稀に居るだろうが……そういうこともあるんだな。


「……まぁ、大した情報じゃなかったな」


 親友達のことを少し思い出せたというだけだ。後は高校の記憶……次でこの廻廊も最後だろう。


「……おっ」


 読み終えた日記を閉じると、何やら日記が光りだした。眩い白の光が視界を覆い、徐々に光は収まっていく。

 目を開けると、手に握っていたのは中央昇降口の鍵だった。


「……これで逃げろってことか?」


 公園の時もそうだったが、日記は消えてしまい、鍵だけが落ちていた。今の現象を鑑みるに、アレは鍵になっていたのだろう。もうこの学校には何もないらしい。職員室からいろいろ鍵を持ってきたが、無駄だったらしいな。とにかく、出よう……。


「大樹――?」

「ッ――!?」


 不意にかけられた声に肩が跳ねた。教室のドアの方に振り向くと、そこには小子が立っていた。彼女の目を見て、俺は鍵を落とす。


 その瞳は、真っ黒だったのだから。


「……ねぇ、大樹。中弥は?」


 彼女は一歩踏み出し、すると彼女の胸から血が溢れた。何かの刺し傷だろうか、絶え間なく血が流れている。


「……悪いけど、一緒じゃねーんだよ。それより、その傷は……」

「ねぇ、中弥は? 中弥はどこなの? ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ?」

「…………」


 これはどうにも、俺の手に負えそうにはなかった。俺はゆっくりとした動作で鍵を拾い、改めて小子を見る。……中弥に会えなくて怒りに震えてるのか。俺は中弥の居場所なんて知らない。小子には悪いが……逃げさせてもらう!


「俺は中弥の居場所なんて知らない! じゃあなっ、小子!」


 捨て台詞を履いて、俺は全力で教室を飛び出した。廊下に出ると一直線に階段へと向かい、駆け下りる。


「待ってよ大樹。ねぇ、待ってって。ねぇ、なんで逃げるの?」


 しかし、小子はもう階段の所まで来ていた。速い……怪我をしていてそのスピード!? 瞬間移動でもしてるのか!?


「クソッ……!」


 階段を飛び降り、ダンッという着地音と共にまた降りる。俺にはもう逃げの一手しかない。そして1階に着いた。後ろを振り返ると、小子もすぐ後ろから追ってきている。


「――――」


 彼女は足を浮かせていた。階段を降りる音など1つもなく、彼女は血を撒き散らしながら右手に持つ鉈を振りかぶって俺に迫ってくる。

 予想通りというべきか、矢張り彼女は幽霊らしい。どうして――考えながら、俺は昇降口に出た。鍵穴に昇降口の鍵をぶっ刺し、勢いよく開く。小子の姿はすぐ後ろに迫っていたが――


「よっと!」


 扉の向こうに広がる暗闇に足を入れ、俺は勢いよく扉を閉めた。ガンッ、ガンッと鉈で扉を叩く音が聞こえる。しかし、俺の握る持ち手と共に音は消え去った。扉が消えたのだ――。

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