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第五話:中学校②

 理科室が開いていて助かった。俺は意外と軽い人体模型を持ち出し、職員室から少し離れたところに置く。


「…………」


 近くで見るとかなり怖い。しかし、お前ともすぐにオサラバだ。


 俺は人体模型を置いた反対側の扉の方に立つ。なぜ教室に扉が2つあるのか知らないが、こういう時は助かるな。


 人体模型にはアラームをセットした携帯を持たせてある。落ちないように念のため、理科室のセロテープで固定もしておいた。職員室の時計をチラリと見ると、あの時計が正確ならばあと10秒でアラームが鳴り響く。


 そして俺は、あの時計が電波時計だということを知っている――。


(段々思い出してきたよな、ホント……)


 不敵に笑うと、その間に秒針は7秒も刻んでいて――



 3



 2



 1



 ――ピリリリリリリリリッ!!!



 けたたましいアラームの音が鳴り響くと同時に、俺は職員室から離れて身を潜めた。

 あの女が内鍵を開ければ俺は向こうからも出られる。まぁ出ようとは思わないけど。


 ゴンッ


(……ん?)


 闇に身を隠していると、何か鈍い音が聞こえてくる。


 ゴンッ


 それも、一回や二回ではない。


 ゴンッ


(……なんだ、この音は……?)


 ゴンッ!!


 4回目の音の後、何かが崩れる音が聞こえた。職員室の方を見ると、八つ裂きになったドアが倒れていた。持っていた(なた)で切り刻み、吹っ飛ばしたようだ。


 普通に開けないとは、どうやら思考回路がないようだ。俺も鉢合わせたら八つ裂きにされるのだろう。


 しかし作戦は上手くいき、あの女は鉈を引き摺りながら人体模型の方へ向かって行った。その隙を見て俺は忍び足で職員室に入る。


「何かヒントは……」


 職員室の鍵があったということは、きっとここに来る意味があるはずだ。出席簿に載っていた担任の机をとりあえず調べる。


「…………」


 机の中には1枚のプリントを見つけた。読んでる時間は……


 グチャッ、ドチャッ……。


 …………。

 人体模型が鉈で八つ裂きにされているようだ。この分ならまだ戻ってこないだろう。それに、奴は血を垂れ流しているし、歩くのが遅い。ここに戻ってくるとも限らないしな。


「どれ……」


 プリントの内容を読む。見出しは反省文と書かれていて、そこにある名前は――國原小子と書かれていた――。


 この少女は俺に関わりがあるのだろう。改めて反省文の内容に目を通す。


 この度、私事で女生徒の靴に画びょうを入れたことを深く深く反省します。しかし、悔いることはありません。何故なら彼女達は私の中弥くんに手を出そうとしたからです。中弥くんは私のです。中弥くん。中弥くん中弥くん。中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん中弥くん――


 そこから先は同じ文字が続いていた。


「……これはアレだな、ヤンデレってヤツだな」


 俺はそっと、反省文を引き出しに戻した。いろんな意味で怖い女だ。中弥って奴を自分の物と勘違いしてるのか。というか画びょうを入れたことなんて、よく犯人わかったな。


 などと考察していると、音が止んでいることに気がつく。足音も聞こえず、不気味だった。しかし、こちらに戻ってこないならこの辺りを探索しよう。


 俺は他の机や机上のファイルをパラパラ見たりしたが、他に情報らしいものは得られなかった。そしてまだ奴が戻ってこず、俺は入り口に掛けてあった鍵を幾つか手にとって廊下に顔を見せた。


 廊下は闇が広がるばかりで、奴の姿は見えなかった。奴が破ったドアの方には人体模型が倒れている。念のために、人体模型を確認してみた。


「…………」


 内臓の模型がグチャグチャ飛び散り、頭も真っ二つになっている姿は近くで見るものでは無かった。血はないはずだが、奴の血のせいでグロさが引き立っている。


「……すまんな、マジで」


 身代わりにしてしまったので、一応祈りを捧げる。(ちな)みに、携帯も真っ二つにされていて2度と使えないようにされていた。とんでもないぞ、あの女……。


「……ま、会わなかっただけマシか」


 一応、奴は俺の存在に気付いてないと思う。この空間にはいろいろあるし、俺が設置したような罠もあるかもしれない。


「さて……次は、中弥の居る教室を探さないとな」


 あと何かあるとすれば、中弥という男の机だろう。そこを探すため、俺は今一度上の階へ戻った。




 ◇




 世間が狭すぎて困る。本当に。


「なんでアイツがいるんだよ……」


 教室のドアの横で、再び俺は頭を抱えていた。暗い教室の中を徘徊し、鉈を持った女には本当に困る。もう音の出るものは無いし、奴を(おび)き出すのは容易じゃない。


 最初に俺が居た電気の点いている部屋は隣で、変な女が徘徊しているのがその隣の部屋。謎の女子はまた鉈を引きずっている。


「……どうしたもんかな」


 火災報知器を鳴らしたり、消火栓にある非常ベルを鳴らせば音は出るかもしれない。しかし、奴は反応するだろうか?


「……まぁ、モノは試しか」


 試すしかないだろう。火災報知器はこの状況だと鳴らすのが困難だし、この階の非常ベルを鳴らして階段を降り、別の階段から登って来れば奴を撒けるだろう。


「……ふぅ」


 やるしかない。俺は教室から離れ、その階にある非常ベルの方へと向かって行った。教室からは割と遠いが、近くに西階段がある。ここから中央階段まで行って上に登れば……よしっ。


 俺は人差し指で赤い丸のボタンを思いっきり押した。


 ジリリリリリリリリリリリッ!!!!


 けたたましい音が校内を支配する。

 すると同時に俺は階段を駆け下りた。あの女がここまで来るには時間が掛かるだろう。だがもしかすると走ってくる可能性もある。とにかく、俺は全力で降りて、中央階段の方へ向かった。


 廊下に俺の足を阻むものは無かった。もうなんらかの驚かしもない。


 中央階段を登り、俺はさっきの教室まで戻った。


 そこに女の姿は、なかった――。

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