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元恋人に死亡フラグが立ったなら、俺はどうすれば良いのだろうか  作者: 嚇嚇 鹿鹿
第1話                                  Prologue~Grieve chapter~
7/16

 先生は、朝のホームルームでこう言った。


 「昨日転校してきた、鳥羽 茜さんは、現在心配停止状態が続き━━危篤だそうです。放課後空いている人はお見舞いに行ってくださいね」


 「えっ」


 突然の衝撃の事実に戸惑いながらも、俺はがやがやと騒がしくなったクラスを抜け出した。


 「赤坂君!何処へ行くんですか!?」

 「先生、茜の病院は何処だ!?」

 

 目眩がする。昨日、ようやく一時ではあるが最高の幸せを手に入れたというのに━━。


 「伊丹総合病院ですが………」

 「先生、俺今日欠席ってことで良いから、あいつの病院行く」

 

 欠席、早退━━どうでも良い。

 昨日交わしたあの約束を果たすために今の俺はある。


 「ちょっ………待ちなさ」

 

 距離にしてそれほど遠くない━━走れば10分かからないだろう。着くまで、あいつが生きていることを祈り、全速力で見慣れた街を走破する。

 商店街の込み合いに舌打ちし、車の行き交う交差点を赤信号を構わず無理矢理渡り━━、病院の受付で号室を聞いた俺は一秒惜しんで爆走する。かつてないほどの速さだった。「病院内で暴れるな」というナースの叱りをBGMに、病室に飛び込む。


 そこにいた医者はこう言った。何故か笑いを堪えているような口調だ。


 「鳥羽 茜さんは、つい先ほど癌で亡くなりました」

 「嘘………だろ………?嘘って言ってくれよ」 


 医者の横を走り抜け、窓際のベッドに近づく。息をしていない幼馴染みの亡き殻にしがみつき、呻く、泣く、叫ぶ。何時もはこれっぽっちも出やしない涙が、滝のように溢れ出てくる。


 すると先の医者は、誰に向かってか、「もぅ、良いんじゃないですか?」と、優しく問い掛ける。さっぱり意味が分からなかった。すると、混乱した俺の、耳に昨日聞いた声がした。


 「ふふ………」

 「………ん?」

 「嘘だよ?」


 しがみついていた動かぬはずの身体が急にもぞもぞと動き出した。茜の死体が起き上がったのだ。


 「おま………生きてたのか?」

 「あったり前じゃない!桐ちゃんのしてくれた約束、絶対果たしてもらうんだもん!じゃなきゃ、とても安らかに成仏出来ないよ」

 

 多少のいらつきがあり、そしてホッと安心して━━色々な感情が一気に湧いて、表現できない。


 「糞………糞が」

 「えええっ!?」


 幼馴染みの顔を見ると心が温かくなる、気のせいだろうか。学校からの不安や焦りが開放され、ついつい茜の胸の中で泣きわめいてしまった。


 「桐ちゃん………そんなに私のことが心配だったんだね」

 「………んなわけあるか」

 「もぉ~、ツンデレなんだから」


 「では、私はこれで………」と、呑気な医者はニコニコと笑いながら病室を出て行った。


 ふと外を眺める。楽しそうに鬼ごっこをしている5、6歳の子供たちが見えた。寒空からしんしんと降る雪は今日も街中を白一色に覆う━━クリスマスまであと4日。




 ◆◇◆◇


 俺が神様から例の能力を頂いてから、4、5日が経った━━つまり10年前。丁度クリスマスの日だ。

 幼馴染み、茜の家でクリスマスパーティーを開くということで、俺&妹は朝から遊びに訪れていた。


 「いらっしゃい、桐人君………と、志乃ちゃん」


 「お久しぶりっす」 

 「ご無沙汰してます。今日は1日よろしくお願いします」と、礼儀正しい妹。

 

 これは毎年恒例の行事で、実に4回目を迎える。今回も彼女のお母さんのお出迎えから始まった。


 鳥羽家は、地方でも有数の財閥で、家もそれなりに大きい。長い廊下を通って連れていかれた客間には、案の定可愛くドレスを着飾った茜の姿があった。


 「あっ、桐ちゃん!待ってたよ!」

 「茜、おはよう。今日は何して遊ぶ?」

 突如急用を思い出し、イマイチなところでプッツリ切れてしまいました。申し訳ありません。

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