ⅩⅠ
「フハハハ、苦しいか?」
「ウググ………」
俺は、車に揺られ20分で到着した、見知らぬ小屋に入れられた。
地下に繋がる露骨な階段を無理矢理に降りさせられ、陰気な廊下を歩いて、ここ、地下一番奥にある牢屋に閉じ込められたのは10分前のことだ。
念入りに縄を痛いほどにきつく縛られ身動きの取れなくなった俺を、そこへ投げ入れたのは他でもない、あの年寄りだった。
それで、痛みに耐え兼ねた俺は、悲痛の叫びをあげたというわけだ。
年寄りは、にこりとも笑わず俺を見据え、低い声で話しかけてきた。
「心配するでない。わしは、反社会派国際犯罪者グループ………通称『Death・FRID』元元帥、セイバー=ヤバスチャン………外国人だ」
突然、彼はケラケラと顔を歪めた。悪魔のような声で、年寄りは話しつづける。
「君に危害を加えるつもりはない。ただ、それには条件というものがある。………今、君の幼馴染みであり、恋人でもある『鳥羽 茜』は、この砦目指して走り続けている」
「茜に何をするつもりだ!?」
目前にあったスクリーンに見慣れた少女の姿が映し出される。彼女は監視の目に少しも気づかず、俺がこの監獄に来る際に通った森を、必死に走っていた。
たいそう嫌な予感がしたものだ。
「フハハ………彼女は、君を救うためにここへ向かっているのだぞ?私の前に来たならば、君の恋人『赤坂 桐人』君を助けられる、と、彼女にはメールで伝えてある。ここのありかもきちんとね?」
「どうするつもりなんだ!」
「だから言っただろう?君は無事に解放される。私は彼女を『殺害』した後、ここを抜け出るつもりだ。警察に通報しても無駄デチュヨ~」
「殺害、だと?」
そうか、茜に死亡フラグが立っていたのは━━。
「何故だ!何故殺すんだ!?」
「君が知る必要もなかろう。そういううちに、もう、君の彼女様がやって来たようだねぇ」
「くそっくそっくそっォォォオ!!」
俺はがむしゃらに、身体を縛る縄を解こうともがいた。
「大丈夫だよ、ボク?もうすぐその縄も解いてあげられるのだから」
「茜を殺したら、お前も殺す!!」
「それは無理だろうよ。私たちは国際レベルの殺人屋集団だ。初心者の君に殺せるはずがない」
と、そこで、今一番聞きたくない声が聞こえた。茜だった。
彼女は牢屋に入るなり、大声で叫んだ。
「桐ちゃん!!」
「茜!来るな!殺されるぞ!」
「え?」
後ろに、殺意を感じた彼女は今入ったばかりの牢屋の扉に振り返った。
そこには、身長が2mあるかないかの巨体がそびえ立ち、ぎらついた目で彼女を見下ろしていた。
「『鳥羽 茜』………待っていたよ、この時を」
その男の手から垣間見えるのは、大振りのナイフだ。俺は、背筋にゾッとするような強い悪寒を感じた。
「私は『Death・FRID』元帥、植原 恭介だ」
「植原、恭介………だと!?おま………」
次は第2話最終話です!




