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元恋人に死亡フラグが立ったなら、俺はどうすれば良いのだろうか  作者: 嚇嚇 鹿鹿
第2話                                    Date Chapter
11/16

 茜が退院したのは、翌日の早朝のことだ。

 病院から脱出し、外界の空気を肺の奥底まで行き渡らせる。


 「ふぅ………いい気持ち。久しぶりの外の空気は良いなぁ」


 といっても昨日一日だけの入院だったのだが。医師には特に異常はないからと言われた。意識不明になる原因は何も無いというのに━━と、不思議がってもいた。


 「っと。桐ちゃん、もう着いてるかな」


 実際にワクワクという音が聞こえるほど茜は弾んだ様子で、鼻歌を歌いながら、昨日桐人と約束した場所へと向かった。



 ということあって、茜は約束の時間午前10時の10分前に到着したわけだが、いくら経っても桐人はやって来ず。昔から、約束を破ることは万に一つ無かった彼が━━心に不安を感じた茜は、桐人に電話を試みた。


 『只今、電源を切っているか、電波の届かないところに………』


 虚しくも、通話無理を告げる電子音が耳に入る。

 すると、それを図っていたかの如く、一件のメールが届いた。見るからに桐人の物ではない、不審なソレを見た茜の顔は驚愕の一言に尽きる。

 

 メールの内容はこうだ。


 『鳥羽 茜、お前の彼氏、赤坂 桐人は我等の手の中。救いたければ、我が砦(森の小屋)へ向かうがよい━━』


 彼女は、脱兎の如く全速力でメールに書かれてある、森に密かに佇む小屋へと向かった。




 ◆◇◆◇

 

 何故そのようになったのか。



 場所は変わり、ここは桐人宅。時刻は午前8時少し前。


 彼の家は、父親がとある企業の社長にも関わらず、庶民的、ごくこじんまりとした二階建ての一軒家だ。


 まばゆい朝日が差し込むその一室に、俺は寝室でベットの上で仰向けに倒れていた。『倒れていた』とは、昨夜は今日のデートのプランの詳細な計画と見直しで、2時30分を過ぎた頃に、ようやく就寝という行為にありつくことができたためだ。つまり俺の今の状態を著すと、寝不足の一言に尽きる。


 と、そこで、静かで長閑なる朝を打ち破るような目覚まし時計の音が、俺の耳をつんざいた。


 時計を叩いて音を止め、覚醒しない全身をなんとかむくりと起き上がらせる。


 「ふぁは………」


 良い目覚めだった。

 今日は感動の9年目の再開を果たした幼馴染みとの初デートの日だ。

 

 寝過ごすことこそ無かったが、遅寝した身体が今も悲鳴を上げている。

 遅い動きで着替え、したのダイニングに降り、母(7、8年前、逃亡した母を見捨てて結婚した)の作った朝食を20分程でたいらげる。

 一旦自室に戻り、手短に支度を済ませ、再び階段を速足に降りると、そこには俺の妹である志乃がいた。


 「お兄ちゃん、茜ちゃんに会えて、実は嬉しいんでしょ?今のお兄ちゃんの顔、ここ最近で一番良いもん」

 「なっ………んなわけねーだろ!」

 

 そそくさと妹の横を通り、玄関へと向かう。


 後ろから「照れてるのバレバレ~」と妹が笑っているのを完全に無視し、「行ってきます」と言って、家を出た。

 

余談だが、家族には幼馴染みと再開したこと、今日デートすることなど、簡単に話をつけている。

 

 「行ってらっしゃい」という聞き慣れた声に後押しされ、彼女の待つ元へ足を速めた。


 同時刻。

 そこから少しばかり離れた、反社会国際犯罪者グループ日本支部である某所小屋でも動きはあった。


 「よし、ターゲット『桐人』が家を出たぞ」

 「リーダー、桐人が家を出たそうです」


 「よし、奴の尾行を続けろ。運良く奴が路地裏に入ればそこで拘束。そうでなければできるだけ人気の少ないで拘束しろ」


 「「はっ!」」


 空気を引き裂かんばかりの張りきった声だった。

 それは、ただ信頼するリーダーに対する敬意の表すためだけでは無いだろう。


 昨日病院帰りの桐人を尾行し家を見つけた彼らは、作戦が順序良く進んでいることに安堵し、本来の目的の本格始動に期待を寄せていた。


 「失敗したら………命は無いと思え」

 「はっ!リーダーのため、この身をもって━━」


 リーダー、ルシアは手下の応えに首を縦に振り、まるで機械が動くかのように立ち上がる。

 その目が蒼く妖しく濁っていることに気付く者は誰一人としていなかった。



 この大事業の目的が何なのか━━何のために鳥羽 茜を殺害するのか━━今のルシアには知るよしも無いだろう。自分が操られていることすら分かっていないのだから。


 彼が元々日本人で、現ターゲットである二人の幼馴染みのような仲であることすら理解(わか)っていない。

 


 彼は、唯一無二『植原 恭介』だった。

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