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元恋人に死亡フラグが立ったなら、俺はどうすれば良いのだろうか  作者: 嚇嚇 鹿鹿
閑話                                   Beginning of "bad luck"
10/16

 某所



 辺りを森林で囲ったある小さな小屋には、夜にも関わらず明かりが灯っていた。

 ここはある反社会派国際犯罪者グループの砦だ。


 国際レベルのハッカーが集うこのグループは、現在ある目的を持っている。


 

 《鳥羽 茜の暗殺》━━それは彼らにとって最重要事項かつ、存在意義を問われる事業、そして、彼ら本来の目的でもある。

 


 実を言うと、彼女の病は、ある工作員によって企てられたものだ。それ自体、殺傷効果は皆無だ。しかし、彼らによって彼女の身体を意図も容易く操ることが可能だ。


 つまり、病は病気ではなくウイルス━━最先端の技術をもって作られたそれは、そこらのヤブ医者に分かるような代物ではない。


 恐らく、彼女には不治の病と知らせられていることだろう。


 ある外国人系の男性はニヤリと笑った。

 彼は、反社会国際犯罪者グループ日本支部のリーダーだ。だが、この事業は彼が企てた気晴らしなどではなく、上からの命令だ。勿論、彼には何の得もない。今思えば、拒否権があったのではないか━━。


 アンドラゴス=ルシア━━彼の偽名だ。幼い頃から両親から虐待を受けた。そのためだろうか、彼には全ての人間が恨めしく感じられる。

 前人類に対する報復がためにこのグループに入ったのではないだろうか━━と、時折考えないこともない。



 工作は今も絶えず進んでいる。

 

 鳥羽 茜の入院している病院に手下を送り込み、幼馴染み赤坂 桐人との会話を盗み聞きしているのだ。新たな情報が入ることはないと彼にも分かっているのだが、律儀な性格故に諜報工作をしているのである。


 夜通し勤めていた手下に休むよう指示した後、自ら頬を叩き活を入れた。


 (俺も頑張らなければな)




 ◆◇◆◇


 ある工作員が、リーダーであるルシアからの命令により、ターゲットの入院する病院に着いたのは昼を過ぎた頃のことだ。


 慣れた動きで病室の天井裏に辿り着いた。心の中でホッと溜息をつき、事務としての顔で、隙間から下をのぞき見る。


 (赤坂 桐人………リア充が)


 ターゲットの下に顔を埋めてすーすーと寝息を立てる桐人をキッと睨みつける。自分は一度も女性と馴れ合ったことなど無いというのに━━。



 しばらくうとうととしていると、下の室内から音がした。


 いつの間にか桐人は起きて、ターゲットと何やら喋っていた。慌てて録音機のスイッチを押す。


 ………「お前のお母さん、なんで死んじまったのかなぁって」

 「分からない」

 「犯人………舞踏会の会場に逃げたんだろうけど。心当たりのある人は無いし、怪しい人もいないとなると━━どうしようもないな」

 「そだね」━━


 突如、工作員の足元を何かが通り過ぎた。

 つい、ザッ、と足音を立ててしまう。


 (ネズミか………!?)


 下から椅子を勢い良く立ち上がる音がした。桐人だ。


 気付かれたのでは、と一瞬背筋に悪寒が走る。


 ………「桐ちゃん、どうしたの?」

 「もう、帰っちゃうの?」

 「いや………何でもない………蚊が飛んでたから、叩こうと思って」

 「嘘~、桐ちゃん、この時期は蚊なんて飛んでないよ?」

 「ああ、そうか………何かの見間違えかなぁ、あははははは」………。



 諜報工作は、夜まで続いた。

 時折危うく音を立てそうになることがあったものの、桐人が病室から出たことを確認すると、足速に病院を去っていった。

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