終幕1
建物事態の揺れがじょじょに大きくなり、部屋中に張り巡らした配線が火花をだしながら切れはじめた。
俺は倒れた牧草を背中にかつぎこの場から脱出しようとするも、あまりの揺れの大きさにバランスが取れない状態だった。
それでも牧草はコンテナの中を気にしていた。
「はやく、扉をあけて。」
俺は牧草の目をみていると、ただの殺人者ではなく、自らの命を投じ何かを、為し遂げなくてはならない思いを感じた。
俺は牧草を地面に横たえ、立ち上がりロックの外れた重い扉を、肉体のすべての力を使ってこじ開けた。
中は真っ暗でなにも見えない。
「ねぇ。村川君。私を信じて。この中に入って、中から扉をしめるの。大丈夫。私を信じて。さぁ、はやく。」
牧草の体から流れる出る血は下から押し寄せる海水のように一面を真っ赤に染めた。
俺はモーセレ柿沼と豊島と目をあわせ首を縦に振った。そしてコンテナの中に踏み込み、中から重い扉をおもいっきり引いた。
扉の凹凸部分が重なり合う音がコンテナ内に響き渡った。
牧草は息が荒くなり、体から流れる赤い血は、サクラの活力を弱め壊滅への終幕が降りていくような赤い幕のようだった。
中は闇に覆われ、周りに何があるのか検討がつかず、俺達は押し寄せる海水に恐怖し自暴自棄な行動を我慢していた。
「大丈夫。この箱の後ろは洞窟のような道になってるの。箱に隠れて見えないけどね。 上昇してくる海水の水圧に押されて、滑り台のように、このコンテナは押し出され、外の砂浜に放り出されるから。目を閉じて、周りにあるものに捕まってなさい。」
牧草は言った。
俺達信じるしかなかった。
暗闇の中、周りにある金属のような突起物に懸命にしがみつき頭を下げた。
数分後コンテナごと後ろにゆっくり動き始めた。水圧で少しずつ箱が傾き始めた。
そのあとは一瞬だった。
俺達は重力とは無縁に、体が宙に浮き、振り回され、箱の壁に激突し風圧に押し付けられた。
息ができず、肺がしぼんだ風船のように感じ叫ぼうとも声ができない。
俺達を乗せた箱は轟音とともに容赦無用に、水圧に押され、すごい勢いで坂道を下っているように感じた。
みんな下を向き耐え、コンテの動きが止まることを願ってるようだった。
「神様ーー。」
俺は願った。
コンテナはゆっくりと減速していき、完全にとまった。俺は生きていることに歓喜極まり涙がながれた。
俺は無意識に誰に言ったのかわからないが、何回も連呼していた。
「ありがとう。ありがとう。ありがとうーー。」
俺は直ぐ立ち上がりコンテナの重い扉を全開に開いた。
コンテナの中の暗闇から一転し大きな太陽から照らし出された眩しい光が箱の中に射し込んだ。
そして暗闇の全貌を明らかにした。