汚れた孤島
出発当日。
俺と柿沼。そして豊島の三人は福岡空港の滑走路にいた。
「準備はできた?」
柿沼が俺と豊島のほうを見ていった。
「はい。」
俺は答え、豊島は声を発することなく首を縦にふった。
柿沼は俺達に銃を差し出しながら話した。
「念のため渡しておくわ。使わない事を祈るわ。」
俺は使った事のない、ずっしりと重い銃を握りしめながら決意を固めた。
目の前に置いてあるヘリコプターはドアが最大限に開き、いつでも出発できる状態だ。
俺は親父の形見の時計を腕にし、柿沼と豊島とともに乗り込んだ。
ヘリコプターはゆっくりプロペラを回転させながら宙に浮き、一気に空めがけてかけ上がった。
太陽ののぼりきらない空は若干肌寒く、近くみえる雲は霧のように透き通り、俺達の進行方向とは逆に流れていた。時間は10時半を指し示し、孤島への到着予定時間を教えてくれる。
俺達は会話はなかった。
各々、過去の回想を胸にしめ決意を確固たるものにしているのだろう。
その各々の決意をのせ、ヘリは孤独に一直線にふわふわと浮きながら進んだ。約一時間半くらいたった頃だ。ヘリはゆっくり下降し、地面にゆっくりと離陸した。扇風機のような回転をみせていたプロペラも徐々に弱まり、完全に止まった。
「着いたわ。」
モーセレ柿沼はぼそりと言った。
俺達は孤島に降り立った。
孤独な孤島に。
砂浜から見える遺跡のような建物。あれこそサクラの武器製造工場。
柿沼は砂浜に着陸したヘリを人目のつかない岩の影に隠すように運転手に命じ、俺達は孤島の中心に位置する遺跡のような建物を目指してあるきだした。
建物が俺の視界に広がるにつれ、またここに舞い戻った俺がすることは、今までのサクラとの関係に終止符をうつ。その為には牧草総理、牧草ともみ、工藤アキラの死しかない。一筋縄ではいかないのは、わかっている。俺の命を投げ捨てても 成し遂げて見せる。
俺は悪の根源を見上げていた。
横には豊島、モーセレ柿沼が建物を見上げ、それぞれの何重もの思いを張り巡らせているようだ。
「とうとう来たわ。」
「そうですね。」
そして豊島は振り返り、建物を背後にし、地面に座り込み煙草に火をつけた。
「来たぞ。」
豊島の声で俺と柿沼が振り返った。
眩しい太陽が一番高い位置から照らしていた。
目の眩んだ俺は手を目の上につけた。
太陽の中から三人の人がゆっくりとこちらに歩いてくる。
それは忘れもしない顔の三人だった。